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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第311話 イプシロンちゃんの養殖対象配信(2)

『お願いしますっ! 私を、上級妖精にしてください!』


 赤髪妖精ヴァーミリオンは、土下座をして自らの想いを告げていた。それはプライドの高い彼女なりの、精一杯の敬意を込めた挨拶であり、その挨拶を見て----


「よしっ! それなら、私の船に乗りたまえ!」


 イプシロンちゃんは、堂々とその挨拶を受け入れたのであった。


『----! あっ、ありがとうございます! では、早速!』

「えぇ、早速"どういう(・・・・)妖精(・・)"になりたいか、話してくれますよね!」


 早速、上級妖精になりたいと話す赤髪妖精ヴァーミリオンに対して、イプシロンちゃんはそう問うた。「どういう上級妖精になりたいのか」、ただそれだけの質問だったのだが、赤髪妖精ヴァーミリオンは答えられずにいた。


「----? そんなに難しい事を聞いたつもりはありませんが? 海だって、目指すべき宝島の場所を考えずに航海に出れば、沈没するのは必須。目的地は共有しておきませんと」

『えっと、実は私は何を司る妖精なのかは分かっていないため、まずはそこを見つけ出して欲しくて……』


 赤髪妖精ヴァーミリオンは、そう返事をした。


 ----"上級妖精になる事"。それは『死の森』に住まう赤髪妖精ヴァーミリオンのような下級妖精全員が共通して描く目標であり、使命である。

 しかしながら、自分達が何の妖精かが分からない。だからこそ、まずは自分が何かを司っているかを調べて欲しかったのだと伝えると、イプシロンちゃんはもう一度、赤髪妖精ヴァーミリオンに問う。


「もう一度聞きますね。"どういう妖精になりたいのか"----考えてくれましたか?」

『でっ、ですから、まずは何を司る妖精なのかの調査が先で!』


 赤髪妖精ヴァーミリオンの回答に、イプシロンちゃんは溜め息を吐く。


「良いですか? 私は養殖担当のゴーレムであって、保育士ではありませんよ」

『ほっ、保育士? 保育士って言ったわね! ……保育士って何よ?』


 赤髪妖精ヴァーミリオンが私にそう聞くので、「幼い幼児を育てる人達」と軽く答えておく。まぁ、本当はもっと色々と保育士さんにも仕事はあるんだろうけれども、イプシロンちゃんが言いたいのは多分この事だろうし、そう伝えておいた。


「はい、船長の言う通りです。保育士さんは幼児を、まだ幼くて右も左も分かっていない子供達を慈しみ育てるのが仕事です。しかぁし、あなたはちゃんと右も左も分かっており、荒波を駆け抜ける根性がある!」

『そんな根性、見せてないんだけど……』

「言うなれば、あなたがどういう妖精になりたいのかを教えて貰わなければ、私も養殖(サポート)出来ないと言っております」

『なっ! なんですってぇぇぇぇ?!』


 『どういう事よっ!』と、イプシロンちゃんの頭をぽんぽん叩き続ける赤髪妖精ヴァーミリオン。そんなヴァーミリオンを動けないように、ひょいっと羽を摘まんで拘束するイプシロンちゃん。


『はっ、放せぇぇぇぇ!!』

「赤髪妖精ヴァーミリオン、あの2人をごらんなさい」


 と、足を蹴り出して今にも逃げ出そうとする赤髪妖精ヴァーミリオンに、イプシロンちゃんは少年トムと少女オリーブの2人を見るように告げる。逃げられないと悟ったヴァーミリオンは、じっと2人を見つめる。


「あの2人は、私の養殖の成果です。男であるトム少年ががっしりとした筋肉質な身体、女であるオリーブ少女が胸や尻がついた艶めかしい身体である事は、海の青さと同じくらい明らかでしょう?」

『むっ、確かにそうだが……それと私の依頼を受けない事に、どういう関係があるの?』

「知れたこと。私が本気を出せば、あれの逆が(・・・・・)出来る(・・・)


 イプシロンちゃんは、そうヴァーミリオンに告げる。


「男が筋肉質なカッコいい身体。女が艶めかしい色っぽい身体。そんな常識は古い! 今の常識は海の天気と同じくらい、変わりやすいのです」

『どっ、どういう事よ? 『死の森』では(オス)は狩りに適したがっしりとした身体、(メス)は子供を産むための大きい身体の生物がほとんどよ。そりゃあ、(オス)でもずんぐりむっくりとした大きい身体の生物も居たけど、あれは(メス)もそういう身体で----』

「違いますっ!」


 バンっと、ヴァーミリオンに突きつけるように、


「女の子だって、カッコよくなって良い! 男の子だって、色っぽくなっても良い!

 ----私が言いたいのは、そういう事です」


 と、イプシロンちゃんはそう答えた。


(メス)でも、カッコよくなって良い?』

「そう、養殖とはその生物のポテンシャルを引き出し、そのポテンシャルを活かして目指す海へと繋げるために育てる行為。どういう能力があるのかは別として、どういう者になりたいのかは決めておかなければならない」

『どういう者になりたいのか……』


 ヴァーミリオンが考えようとする中、イプシロンちゃんはさらに話を続ける。



「たとえばあなたの能力が、なにか武術に関するモノだったとします。しかしながら、"その武術を育てて、武器を持たせれば世界最強の妖精"とするのか、"魔法も鍛えて、武術と魔術の二刀流が出来る妖精"では、同じスタートでもゴールは違う。当然ながら、育て方も変わって来る。


 カッコいい妖精になりたい? だったら、カッコいい妖精になるために、話し方などを考えよう。

 あらゆる敵を倒せる妖精になりたい? だったら、敵の情報を知るための知識の勉強を行おう。

 他の妖精を魅了する妖精になりたい? だったら、相手を魅了する術を授けよう。


 なにを司っているかが重要なんじゃない。あなたが、どういう妖精になりたいのか?

 能力なんて、それを補佐するサポート器具でしかない。あなたが、なりたい姿が思い描けてない以上、私はあなたを、航海へ共に行く仲間として信頼できません」

「上級妖精になりたい」

それは妖精たちが生まれつき与えられた使命である

そこに、どんな上級妖精になりたいという

思いは今までありませんでした

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