第308話 赤髪妖精の、理想論過ぎるという点を除けば完璧すぎる計画配信
『という訳で、奴隷王にはこの私を上級妖精にする義務があるって訳よ!』
「いや、一切分からなかったんだけど」
どうも、実験で送り込んだ兜の中に妖精が居てめちゃくちゃ絡まれている、錬金術師のススリアです。
この赤髪の妖精、『死の森』にてゼータちゃんに色々とアドバイスをしてくれた親切な現地民|(?)らしいんだけれども、その対価として上級妖精にしろってどういう事なのよ。
「とりあえず、ひとまずあなたの名前を教えてくださいな。いつまでも赤髪妖精では、呼びづらいでしょうに」
『なんでよ? 今の私に名前なんてモノはないわよ? 名付ける事も出来ないし』
名前がない? それに、"名付ける事も出来ない"って、どういう事?
『はぁ……しょうがないわね。まずは妖精とは、なんなのかについて、しっかり指導してあげるわ。感謝なさい!』
「いや、普通に『死の森』に帰って----」
『感・謝・な・さ・いっ!!』
なんかこの妖精、凄くワガママで、協力したくないなぁ……。
『良いかしら? 妖精というのは、『死の森』によって生み出された植物の管理者よ!』
「ふむふむ」
赤髪妖精曰く、『死の森』は生命力が異常に溢れている。そのせいで、管理者が居なければ、植物が溢れすぎて枯れたり腐ったりする植物が出て来る。その管理をするために、『死の森』が生み出す管理システムこそが、妖精なんだとか。
「だったら、その『死の森』に帰ってくれると……」
『嫌よ! だって管理者って言っても、もう既にぜーんぶ出来てるんだから!』
「どゆこと?」
これまた赤髪妖精曰く、『死の森』の草木を"どの範囲に"、"どれくらい"、"どの種類を"など、森林の管理システムは既に魔法によってマニュアル化されており、妖精達はその魔法が毎日正しく運用されているかの管理をするのがお仕事なんだとか。
……めちゃくちゃ暇そうですね、そのお仕事。なんでも1000年以上前に生み出された魔法なんだけれども、今まで3件しかエラーが起きてなかったらしい。そのエラーというのも、森の中で死んだ人間の身体が偶然魔法の上にかかったという、イレギュラー中のイレギュラーばかり。
『そして、その仕事をやっている妖精が、既に1000匹以上居るのよ! 意味ないでしょ、そんないっぱい居たって!』
「まぁ、管理者はそんなに要らないよね……」
システムがちゃんと動いているかどうかを確かめるのに、妖精1000匹も必要ないと、確かに思う。ましてやエラーが出るのも、ほぼ偶然というか、全然ないので、私が思うに妖精5匹も必要ないとは思うけど。
そんなわけで、常に妖精は暇で暇で、仕方がないそうだ。
暇ならば、その暇な時間を潰せる仕事なり趣味なりを見つければ良いじゃんと思うが、そういう訳にもいかないらしい。
妖精は、"ある目的"以外で、『死の森』を離れてはいけないんだそうだ。その"ある目的"と言うのが----
「上級妖精になる事?」
『そう! 私は今、名前なしの下級妖精だけど、上級妖精となればどこで生きても良いそういう存在になれる! そうなれば、あんな退屈な『死の森』からおさらばできるのよ!』
妖精には、階級が存在するんだそうだ。
〇下級妖精……生まれたばかりの、"名前"を名乗る事も許されていない存在。羽の生えた小人のような姿であり、これから上がらなければ永遠に『死の森』から出られない
〇中級妖精……妖精の中でも、"名前"を名乗る事を許され始める存在。妖精としての格が上がり、人間などとほぼ同じ大きさになる
〇上級妖精……妖精の中でも、1つの概念を極めた神様と匹敵する存在。多数の妖精を従え、自らの自由に生きる事が出来る
「そういう風な、厳格なランク分けがある、と。で、その中級妖精ってのはどうすれば良い訳?」
『それが分からないのだ。話によれば、天から名前が与えられるのを待つ、とか』
曖昧な……。そこ、重要なところじゃないんですかね?
ともかく、人間である私がこの生意気な赤髪妖精に名前を付けたところで、名前を名乗る事を許される中級妖精になる事は出来ない。
人間が必死に頑張った結果、スキルを獲得するのと同じように、妖精もまた頑張っていれば、いつか名前が与えられるんだとか。しかしながら、その頑張る方向性がきちんとなっていなければ、永遠に努力は実を結ばず、10年後には強制的に『死の森』へと還され、その後二度と出る事は許されない。
「つまり簡単に言えば、才能を見極め、その才能にあった頑張り方で努力しなければ、永遠にスキルが手に入らない。赤髪妖精で言えば、名前が手に入らないという事か」
『えぇ、そして私は何を司る妖精かも、私には分からないのです!』
打つ手なしじゃん……。その"何"を司る妖精かが分かれば、少なくともその方向に頑張れば良いという助言が出来るけど、何も分からないんじゃなぁ……。
「これ、私が手伝う余地あるの?」
『もちろん、ある!』
そんな言い切られても……。
根拠は何だろうと思っていると、赤髪妖精はビシッと、兜を、【ポータル】を通って大きくなった兜を指差す。
『その【ポータル】を使って、私を人間サイズに大きくしなさい!
中級妖精は人間の大きさって聞いた事があるから、大きくなれば名前が貰える中級妖精になれるはずよ!』
……それ、暴論すぎない?
(※)赤髪妖精の計画
(1)【ポータル】を使って、人間サイズに大きくなる
(2)神様が人間サイズに大きくなった赤髪妖精を見て、中級妖精と見間違う
(3)名前がない事に気付いて、名付け漏れをしたと慌てて名前を授ける
(4)一気に、中級妖精の仲間入り!!
多分と言うか、絶対に暴論だと思いますww




