第300話 ダヴィンチ2製作するよ配信
どうも、ダヴィンチ2を作ろうとしている錬金術師のススリアです。
アレイスターに次ぐ魔物由来の身体を使った魔物ゴーレム第2弾、それがダヴィンチ。
本当は色々な事が出来る万能型のゴーレムとして開発しようとしたのが、ダヴィンチである。しかしながら、デルタちゃんが持ち帰って来たライプラス・ハウンドの幼体が入った事により、元々想定していたモノよりも遥かに未熟で、未完成なモノが出来上がってしまった。
こう言っては何だが、はっきり言って失敗作だ。完成した性能面に関しては、ダヴィンチ曰く、「普通に戦闘面において問題はない」との事だが、本来は戦闘も、それからダンジョン探索も出来る万能型のゴーレムを作りたかったため、そういう意味で言えば仕様書通りのモノが出来上がらなかったので、失敗と言える。
今回は、そんなダヴィンチの2号機----本来の、万能型のゴーレムを作成しようとしていたのだった。
アレイスターと同じく、魔物由来の身体を利用した魔物ゴーレムというコンセプトはいったん白紙として、純粋に性能面での採用をしようと頑張っている。
そして、ダヴィンチの教訓とでもいうか、私は新たな開発方法を発見した。それが、ライプラス・ハウンドの幼体、それを使ったダヴィンチが得意とする【スピリッツ】という新たな力である。
この【スピリッツ】という力は、あらゆる物を引き寄せたり、あるいは反発して遠ざけたりする力。この力を応用する事で、今までにはない戦法をするゴーレムが誕生しそうなのだ。
今回のメインはこの力であり、この力を戦術だけではなく、探索などに活かすという、そういうコンセプトにて作ろうとしているゴーレムだ。
今回は、魔物由来の身体を使わないから、ベータちゃんやデルタちゃんなどと作り方は一緒。つまり、すっごく楽である。
魔物由来ゴーレムはまだアレイスターとダヴィンチの2人分しかやったことがないから、未だに作るのはどうなるか分からないんですよね。ダヴィンチに至っては、ほぼライプラス・ハウンドの幼体が暴走してややこしい状況になったので。
「とりあえず、素体となる身体は完成! あとは、【スピリッツ】を扱えるようにする事と、その【スピリッツ】を使った技術を身体に----」
と、意気揚々とダヴィンチ2を作っていた、その時である。
「マスター、すいません。なんか洗脳されたゴミがやって来たんですけど」
「ベータちゃん、ちゃんとノワルーナ姫って名前で呼んであげてね」
良い感じにノリに乗って作っていたら、来客らしい。
来客相手は、ベータちゃん曰く『洗脳されたゴミ』であるノワルーナ姫。面会の約束とかは特にないので、この間みたいに唐突に私に頼みたい事がある的な感じでしょうか?
「うーん……」
そう言えば、ダヴィンチちゃんの失敗は、ゴーレム製作中に私がきちんと見ていなかったからとも言える。私が【スピリッツ】の力を使って訓練していた間に、ライプラス・ハウンドの幼体が用意していたジェルの中に入り込み、それをカンロ神様が加護を与えた結果、生み出されたのがダヴィンチである。
同じことが二度あるとは思わないけれども、それで失敗したダヴィンチの2号機を作っている最中に、同じように席を離れるのはあまり良いとは思わない。二の舞はごめんだね。
「(いま、本当に良い調子なんだよなぁ~)」
ゾーンという言葉がある。
高い集中力と研ぎ澄まされた感覚、そしてまるで時間が止まったかのような錯覚を味わう状態の事なんだけれども、今の私は完全にそう言ったゾーン状態に入っている。
今ここでその状態が解けると、もう二度と同じ状態にはなれないんじゃないかってくらい、深い深い、とても集中したゾーン状態だ。
ダヴィンチ2は、そのゾーン状態に入ってから作り始めている。この状態を切らしてしまうと、完璧なダヴィンチ2は出来ないかもしれない。
「……悪いけど、ベータちゃん。ノワルーナ姫さんにはお断りを入れておいて欲しい」
「かしこまりました、マスター。ついでに用件を聞いておいて、次のアポイントメントの予約も1週間以上間を空けて付けさせていただきます」
「よろしくね」
そう、元はと言えば悪いのは、こっちに面会の約束すら用意せずにやって来たノワルーナ姫である。
こちとら暇な一日を過ごそうとするスローライフしている錬金術師だぞ! もはやスローライフって何か分からなくなってるけれども、その免罪符を売りにしている錬金術師ススリアさんですよ!
こっちは、自分の事で精一杯なんであって、そちらが急に来られても対応できなくて当然!
ちゃんと対応して欲しかったら、今度からはこちらの予定を聞くか、あるいはそちらがちゃんと面会の約束を取り付けて貰わないと!
そう言う訳で、ベータちゃんにノワルーナ姫を追い返してもらう。このイスウッドの領主様という権力者なんだけれども、こちとらその権力が嫌で辺境へと来た身なんで、その手には乗らないぞ!
私は、このダヴィンチ2を完成させる使命があるんだ!
「では、ガンマちゃんを呼んで、このような事を二度と犯さないように、きちんと洗脳しておきますね」
「洗脳は、なしでお願いします」
ダヴィンチの2号機、ちゃんと作りますねぇ!




