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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第272話 フクロウと悪魔の取引配信

「たっ、大変な事を聞いてしまいました!」


 そこは、新生ハンドラ商会の倉庫であった。

 倉庫の中には、新生ハンドラ商会の商会長となったミリオンが配信を使って紹介した商品が収められている。ミリオン商会長が紹介した商品は数多くあり、そして配信という放送を使えば軒並み1万個以上売れるため、店舗営業を閉鎖した店を倉庫代わりに使っているという訳だ。

 ここは、そんな商品が積み込まれた第8倉庫。新生ハンドラ商会が所有する倉庫の内の1つであった。


 その倉庫の中で、先程声を出してしまったのは、商会員の【ノルカ・ブックマン】である。

 フクロウの獣人族である彼女は、ハンドラ商会の商会長であったシベリア・ハンドラ会長に憧れてこのハンドラ商会に入会した。シベリア会長は、ノルカが知る限り最も力強い人間であったから。

 そんな商会長は、狩猟のドン・デーロという魔王ユギーの五本槍に殺されてしまい、一時期無職に。そして現在は、他の商会員と同じく新生ハンドラ商会にお世話になっている一介の一商売人であった。


 フクロウの獣人族である彼女は、耳が良い。集中して耳を澄ませれば、新生ハンドラ商会の会長室から遠く離れたこの第8倉庫からでも、ミリオン商会長とシガラキ代表の密会が聞こえたという訳だ。

 ----そう、新生ハンドラ商会を売り払おうとしているという、ノルカにとっては聞きたくなかったことが。


「うぅ……また、商会が潰れるだなんて、聞きたくない……」


 ノルカは一度、勤めていたハンドラ商会が潰れた時の苦しさを知っている。



 皆が働いている中、1人寂しく職業安定所に通う苦痛。

 家族からどう接して良いか分からない存在として、腫物のように扱われる毎日。

 友人から「え? ノルカいま働いていないの? そっかぁ……」と、向けられる悲しい視線。



 あの苦痛をもう一度、味わう事なんて、ノルカには耐えられなかった。


「(せっかく、苦労してハンドラ商会へと入り! 商会長殺害されて解散という、突発的な無職状態から、いまの商人という就職状態になれたのに!)」


 ここで、もし新生ハンドラ商会が、ドラスト商会に吸収されて子会社化----もしくは、ドラスト商会の"通販業務"という形になったらどうなるだろう?

 多くの商人は、ドラスト商会へと入れるかもしれない。しかし、その中にノルカが入れるという保証はないのだ。


「もう嫌だ! また退職なんて形になったら、私悲しすぎますよ……」


 けれども、ミリオン商会長に「退職したくないから、どうにかなりませんか?」と言えるだろうか? そもそも、そんな事を直訴するほどの力があれば、こんな風に悩まなくて済むのに。


「ミリオン商会長が求めているのは、自分と同じように商品を紹介するほどの司会能力の持ち主……でも、そんな事なんて誰にも----」


 出来るはずがない。

 ノルカがそう諦め、絶望に打ちひしがれていると、




「ひひっ……果たしてそう、な・の・か・な?」



 倉庫の奥の方から、そんな声が聞こえて来た。


「----?! だっ、誰?!」


 ノルカは驚く。何故なら、この倉庫には誰も居ないと、彼女はそう思っていたから。

 フクロウの獣人族であるノルカは、遠くの会長室の密会を聞き耳を立てれば話が聞こえるほど、耳が良い。そんな彼女が、同じ倉庫内の生き物の音を、今まで聞いていなかったなんて、あり得ない事だったのだ。


「"誰"とは失礼な言い方ですね。こちらは、あなたの辛辣な胸の内を察して、出て来たとい・う・の・に」


 すーっと、倉庫内に運び込まれていた荷物がひとりでに開いて、その中から1人の少女が現れた。

 その少女は軍服を身に纏った、銀髪の美少女。その姿を、ノルカは誰よりも知っていた。


 だってその姿は、ノルカが憧れていた"あの人(・・・)"の姿だったから。


「魔王ユギーの五本槍が1人、狩猟のドン・デーロ。悪魔マージ・マンジを使って逃げおおせたと思いきや、実は新しく作られたハンドラ商会の荷物に隠れていました・て・き・な?」

「----ドン・デーロ!?」


 顔を覆うかのように付けられた、【狩猟】の二文字が書かれた手形の仮面を睨みつけるノルカ。

 ドン・デーロの事は許せなかった。敬愛すべき会長を殺しただけでは飽き足らず、その姿をまるで自分のようにして扱う彼女の事が。


 思わず、懐に隠し持っていた短刀にノルカが手をかけようとすると、ドン・デーロは「おぉ、怖い怖い」とおどけるようにして笑う。


「やはり、君は極めて優秀だね、ノルカ・ブックマン。フクロウの獣人族である"耳の良さ"と"風きり羽根による静けさ"を極めて、足音もなく相手の懐に入り込むその手腕! 商売人としてではなく、凄腕の武芸者として、私は高く評価し・て・い・る・よ?」

「その評価は、あなたではなく、その身体の記憶の者……私達のシベリア会長の評価でしょう? ドン・デーロ」

「手厳しいね。いまはこの身体は、私の物だというのに」


 その悪魔は、仮面を少しだけ上にして、シベリア会長の顔を見せながらそう言う。

 意地が悪い。本当に悪魔と言うのは意地が悪い。早く倒さないと思っていたはずなのに、ノルカの良すぎる耳はドン・デーロの悪魔の(ささや)きを聞いてしまった。


「もし仮に、私が"記憶を覗ける"だけではなく、"覗いた記憶を経験として別の人に与えられる"としたらどうかな?

 ----ねぇ、新生ハンドラ商会の存続のために、ミリオン商会長の記憶、いや記録を受け継いで、司会能力を欲するノルカ・ブックマンちゃん?」

悪魔ドン・デーロの(ささや)きが、

フクロウの獣人族であるノルカ・ブックマンちゃんに効いてくるぅ~!!

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