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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第271話 ミリオンとシガラキ、商会長同士のひみつのお話配信

 ディゼル・ハンドラと話をした後、ミリオン商会長はベテランスタッフ達と共に6本の配信を行った。




 ----取付工事付きの、室温調整魔道具『ホット&コールド』。


 ----軽くて場所を取らない、革新的な清掃用魔道具『ルームクリーナー』。


 ----すぐさま安眠するための、リラックスをする枕型魔道具『おやす枕』。


 ----鮮度抜群にして、新たな味を演出するための香辛料『ルールッコラ』。


 ----氷室にて熟成保存した『スカーレットオークの肉』。


 ----世界樹とほぼ同様の力強さを持つ世界樹花(ユグドラフラワー)の蜜を集めた、『世界樹花はちみつ』。




 6本の通信販売を撮り終えたミリオン商会長は、商会長室へと帰って来た。


「やぁ! 『最も忙しい商会長』であるミリオン商会長くん」

「その言葉そっくりそのままお返し致します。ドラスト商会の商会長、シガラキ頭取」


 商会長室にて待っていたのは、ドラスト商会のシガラキ・マホウサマ代表取締役であった。ライバル商会の会長であるはずの彼女は、ミリオン商会長の顔を見ると「お疲れ」と声をかけた。


「えぇ、疲れていますよ。いくらゴーレムである私としても、空が見えないくらい疲れるのは勘弁したいです。妹のイプシロンにも会いたいです」

「しかし、そう言う訳にはいかないでしょう。この新生ハンドラ商会の業務形態では」

「えぇ、改善したい所ではありますね」


 新生ハンドラ商会の業務は、一部店舗販売を除き、ほとんどが通信を利用した通販業務。そして、その通販業務において、商品を紹介して購買意欲を掻き立て、商品を購入させる役は、ミリオン商会長一人が行っているのだ。

 いくら、アーカイブ配信を残していても、常に優秀な新生ハンドラ商会の商人達が良い品を見つけ出すため、毎日数本以上の紹介配信をしなくてはならない。


「改革は常に、なにか問題が起きるモノです。いま現在、私しか商品を紹介できる役が居ない以上、ゴーレムにして疲れ辛い私がするのが筋ってものでしょう。この改革を提案したのは、この私ですし」

「そうですね。我々商人は、常に相手の顔色を考えて商売を行ってきた。それに対して、この通販業務という商売は全く別である」


 通販業務は、通信を見てくれている視聴者のうち、魅力的だと思った者が購入する。

 購入者であるお客様がするのは、買いたいと思って連絡する時。そして、ごく稀に商品に対して何か意見を出したいお客様がするレビュー評価だけであり、直接的なやりとりをする機会はほとんどない。

 お客様がその商品をどう思うのかは分からず、ただ商品の魅力を伝えるのは、今まで商売人として"お客様の顔を伺って行う商売"に慣れきっている彼らにとっては、難しい事であった。


「教えてあげたらいいのに。通販業務の仕方のノウハウを」

「教えても良いですが、それだと私を真似ただけの劣化した人員が誕生するだけです。商品を伝えるノウハウは確かにある彼らには、"演説のノウハウ"を学べばいいだけの事」

「要は、配信者としてのやり方を学べば解決すると。敵商会の代表にそんなに語っても良いのかな?」


 「大丈夫?」と煽るように言うシガラキに対して、「これくらいそちらもご存じのはず」と返すミリオン商会長。


「配信者としてのやり方といっても、色々ございます。ただ淡々と読み上げているだけで人気が出るモノもいれば、ほんの少し失敗というアクセントを加える事で人気を獲得する者もいる。要するに、その人が視聴者にとって魅力的か否かというだけの話です」

「……そういう意味で言えば、既に100万人越えの会員相手に無双する君は、トップ配信者という訳か。なるほどなるほど」


 ふむふむと、納得した様子のシガラキ代表。




「そんなトップ配信者が、どうして私を呼んだのかな?」




 と、迫力ある顔で、先程までのおちゃらけた様子とは違う顔にて、シガラキ代表はそう尋ねる。それはドラスト商会という大商会の代表を勤めていた彼だからこそ出来る顔であり、それを見てミリオン商会長は安心した顔を見せる。


「無論、私と同じく時間単位あたりの収入額が高いあなたをお呼びしたからには、それなりのお話をしなくてはなりませんので。勿論、商売(ビジネス)の話ですよ」

「ほう、商売(ビジネス)の話と来たか。いったい、どのような?」

「この新生ハンドラ商会を買い取って欲しい、そう言うお話です」


 その言葉に、シガラキ代表は面食らった。いまや、シガラキ代表が会長を勤めるドラスト商会を、追い越そうとする勢いの新生ハンドラ商会を、このミリオン商会長は売ろうとしているのだ。


「本気で、提案しているんですかそれは……」


 商会長として、シガラキ代表はそう尋ねた。

 自身を慕う商会を、他人の手に委ねるだなんて、シガラキ代表からして見たらありえない行為だったからだ。


「えぇ、嘘は言っていません。勿論、それなりの金額で買い取ってもらいますが、悪い話ではないはず。新生ハンドラ商会の興した、通販業務のノウハウを活用できれば、ドラスト商会のさらなる発展が望めると。私も、その場合ドラスト商会の一商売人として扱っていただければ」

「新生ハンドラ商会の商売は、順調そのものだ。わざわざ商会を売らなくても良いかと思うのですが」

「しかしながら、私の代わりとなるべき通販業務を担う人材が出て来ませんので、これ以上の発展は見込めないと判断しました。でしたら、一番良い時に、一番皆が幸せになる人に買ってもらうのが一番かと」


 ミリオン商会長は、そう判断していた。

 当初の予定では、自分と同じく通販業務の司会役を任せられる人材がぞくぞく出てくるのを想定していたが、見込みと比べて全然出てこない。このままでは自分が何かしらの原因で通販業務を行えなくなった場合、商会の運営が出来なくなる。

 だからこそ、ここいらで売り払うという選択に出た訳だ。



「……もう少し、同じ商会のメンバーを信じなさい。それが商会を長続きさせるコツだよ」

「えぇ、一応の案として聞いておいて欲しかったんです。いきなり言っても、門前払いされるのがオチかと」



 冗談にしては笑えない冗談を聞きつつ、シガラキ代表は笑って帰って行った。

 そして、一人になった商会長室にて、ミリオン商会長は小さく呟いた。


「さて、この発言でこの商会がどうなるか。発展するのか、衰退するのか、どちらに転ぶかは空のみぞ知る、と」

部下が「マズい!!」と思っているなら、

当然、上司も「マズい!!」と思っているはずだぁ!!

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