第267話 灰色コボルトが愛らしすぎた故の事故配信
「----という訳で、こちらを生け捕りにしてきたわけです」
『わんっ! いけどりの、コボルトです』
----うちのデルタちゃんが、愛らしいコボルトを持ち帰って来たんだけれども。
あれ……? 私、ちゃんと事情をデルタちゃんに説明しといたよね?
これから生け捕りにしてきた魔物を使って、新しいゴーレムのダヴィンチを作ろうと話していたよね?
「ここで、私が当初考えていたダヴィンチちゃん製作の過程を語ろう」
(※)『なんか始まった』『挨拶なし?!』『間違って配信開始ボタンでも押したか?』『焦ってるなこれ』『放送事故じゃない?』『完全に分かってなくてやってるなこれ』
「まず、用意する材料は生け捕りにしてきた魔物の素材、そしてその魔物を取り込む【無機物ジェル】です」
(※)『無機物ジェル?!』『なんかヌメヌメしたのが、後ろで蠢いているぞ?!』『生きてないの?! 』『生きてるの?!』『どっちなんだい!』『※上に同意』『おいっ、今のはどっちだよ!』
「まず生け捕りにしてきた魔物を、私の錬金術の力によって【多能性コア】へと変換します。この多能性コアは、生け捕りにしてきた魔物の身体を、3つの重要部位を担う万能なコアへと変えた物です」
(※)ガンマ『生き物の重要部位である"心臓"、"脳"、そして魔力を蓄える"魔臓"の性質を持つ万能な核です』『ガンマちゃん来たぁああ!!』『解説役THX.』『ちなみにこれ、事故?』『それともこういう配信?』ガンマ『事故ですね、巨匠も混乱してます』『ガンマちゃんからのお墨付きだぁ!!』『事故だったかぁ~』
「そして、多能性コア----魔物の性質を宿した万能物質を、この無機物ジェルで覆う。この無機物ジェルは皮膚や脂肪、血管などの代替物になります」
(※)『つまり多能性コアに重要な役割を担わせて』『無機物ジェルがそれ以外を担う』『2つ合わせて生命を誕生させようってか!』『破廉恥なっ!』『いや、どっちかというと禁忌系だろこれ』ガンマ『暴露なきゃ問題はありません』『配信しとるがなww』『バレとるがなww』『通報しといたがなww』
「まぁ、生命体というか、どちらかと言えば粘土人形という感じかな。ゴーレムは本来、硬い金属などの硬度に長けた素材を使っているけれども、これは柔らかい素材というか」
(※)『すいません、ただの人形作りでした』騎士団『まったく、もっとちゃんと気を付けたまえ』『誰だよ、騎士団ww』『ガンマちゃん以外の初ネーム! その名も騎士団ww』騎士団『すいません、自作自演でした』『あんたかww』
(※)『というか、教えて欲しいんだけど』『3サイズ?』『性的な薬?』『そうじゃなくて、なんでゴーレムは硬い金属を主に使ってるの? 柔らかくても良いじゃん別に』『あっ、そっち』『そっち以外ってどっちよww』『みなさーん、こちらでーす!』
(※)ガンマ『ご質問に答えますと、硬い素材を使うのは安定するためです。地面は平面なように見えて、実は細かい小石や埃などによって、小さな段差がある場合があります。柔らかい素材だとその段差に足を引っかける危険性がありますが、ある程度硬い素材だと無視して進めます』『なるほど、柔らかい素材は難易度が高いのか』『だからゴーレムは基本的には、簡単な荷運びとかが多いんだよなぁ~』『この配信を見ると、忘れちゃうけど』
その後の記憶は、私にはない。
あとで(うっかり始めてしまった)配信を確認にして分かった事だが、私はデルタちゃんに、今回のゴーレムの仕様について延々と語っていたみたいだ。
今回作るダヴィンチは、遠方の地を旅して来る探査と調査に秀でたゴーレムである、とか。
そのために【アイテムボックス】の中身をこちらへと転送する最新式の魔道具を取り込む、とか。
武器は銃にしようと考えている、とか。
色々と語っていたらしい。
どうも、生け捕りにして持って来たコボルトが、あまりにも愛らしかったため、それをどうにかして使わない言い訳を考えているうちに、頭がおかしくなったみたいだ。
だって、そうでしょ!?
デルタちゃんが連れて来た灰色コボルト、ほぼ柴犬だよ?! 灰色の柴犬だよ?!
あんなつぶらな瞳で見つめられたら、少し戸惑ってしまう私の気持ちを考えて!
この世界の魔物、基本的に『カッコいい』か、『美しい』かの2択なんだよねぇ~。それ以外は、ちょっと言葉を選べば、『醜い』という感じで。
そんな中、急に現れた『可愛い』の権化たる灰色コボルト! もうこりゃ魔性だね、なにかしらの魅了にかかっていると言っても間違いない!
こんな愛らしい灰色コボルトを、あんな無機質ジェルに突っ込むなんて考えられない!
しかも、あの無機質ジェルは仕様上、私が開始の合図を出したら、取り込んだ相手の皮膚や脂肪などをゴミとして処理する機能があるんだよ!? 灰色コボルトを突っ込んだら、灰色コボルトの愛らしい毛皮以前に、皮膚が剝がれたグロテスク画像になるとか耐えられない!
そんな事には絶対しないんだから!
「本気かぁ~」
その後、正気に戻った私は、配信を見ながら自分の状態を見て愕然とした。
----【魅了】。
そう、私は灰色コボルトから、魅了の状態異常をかけられていたのであった。
柴犬って、めちゃくそ可愛いと思うんです
特にドラゴンだの、ゴブリンだのと、異世界の生き物達の様子から比べると特に




