第247話 トカリ&ザザードの配信?!
「ベータさん! あなたに料理勝負を挑みます!」
「えぇ、今度こそ勝利を掴み取って見せましょう!」
どうも、錬金術師ススリアです。
極北支部から来た聖職者クロブに対して、新たに陸地で生息する昆布型の植物ランドクンプを勧めて、丁重に帰ってもらってからしばらく。
我が家に、少し変わった2人組が現れた。
アザラシ族の魚人族、トカリ・ブロッサム。そして『シュンカトウ騎士団第三の槍』ザザード。
「あまり見ない2人組ですね、マスター」
「えぇ、私もあまり見ない組み合わせですね」
トカリ・ブロッサムは、ウミヅリ王国から来たサビキ・ウミヅリと一緒に来たアザラシ族の魚人族である。サビキを倒すための合宿に参加したメンバーである貴族のごくつぶしであった彼女は、【闘争のカイデン】を倒すために【刀剣拳法】を学んでいた少女である。
ザザードは、『ススリアの弟子の中で一番強いのは誰か』選手権にて戦った槍使いであり、なおかつ糸を使って操る操糸術なども使える、意外と多彩な兵士である。
あまり絡みのないメンバーだと思っていたのだが、なんでこの2人で、家にやって来てベータちゃんに絡みに来たのか、全くの謎である。
「というか、料理勝負ってどういう事?」
「それは私の方から説明させていただきます」
どういう事なのだろうかと思っていると、トカリさんが説明してくれるようなので、とりあえず聞いてから判断する事にした。
いまから2週間後、コ・ラホ領にて料理大会が開かれるそうだ。出場者は、用意された食材と持ち込める食材1つで、大会主催者を黙らせるほど美味しい料理を作るのを競う大会だそうだ。
単純な料理の腕だけではなく、持ち込む食材をどう活かすかも審査対象だったりそう。
「私ことトカリ・ブロッサムは、実は料理の腕はかなりの腕だと自負しております。皆が帝王学を学ぶ中、料理学を学び続けた成果をここで見せたいと思います」
なんと、トカリが貴族のごくつぶしだった所以が、料理好きだったからとは……。サビキを倒す際はそんな事情なんて全く考慮せずに選考したから、私も知らなかったよ。
話を聞くとサビキ、そして【闘争のカイデン】を足止めしてやられてしまったクラゲの魚人族であるジュレと共にこの辺境イスウッドに向かう際、旅の料理当番は彼女が担当していたらしい。
「私もです! 槍、そして糸だけではないという事を、この大会にてご披露させていただきたく!」
ザザードに関しては、槍や糸など多彩な彼の趣味の1つが、料理という事らしい。
糸を使った操糸術の腕もかなりの物だったし、どうやら彼は意外と何でもできる万能タイプみたい。そんな彼は、もちろん料理の腕もかなりの物なんだそうだ。
「マスター、ガンマちゃんより報告が上がって来ました。どうやら2人とも、口だけはないようです」
「なるほどねぇ~」
ベータちゃんは、ガンマちゃんに依頼を出して、2人がただの口だけかを調べてもらったようである。
どうやら2人ともベータちゃんに挑むくらいにはそれなりの料理の腕があると、ちゃんとした証拠が出て来たらしい。
コ・ラホ領と言えば、あのハーフアマゾネスであるサクラアさんが居た領地だ。その領地で1年ごとに定期的に開催される、あくまでも地方の小さな料理大会という感じだそう。
今回はその大会にて、うちの家の料理当番であるベータちゃんと、2人は勝負したいという訳らしい。
「(優勝賞品は……ゼニスキー商会長によって、名誉トロフィーの贈呈か)」
正直、全く魅力と思えない優勝賞品である。
普通の人だったら、ゼニスキー商会長という相手と繋がり、コネクションが出来る事を喜ぶべきところなんでしょうけれども、私、普通にゼニスキー商会長とは頻繁に交流させてもらってるからなぁ。しかも、相手側からのお誘いにて。
「私は魅力をまるで感じてないんだけれども、今回参加するのはベータちゃんだから。ベータちゃんが参加したいと思うのなら、参加して良いよ」
そう、今回対戦相手として指定されたのは、あくまでもベータちゃんである。
ベータちゃんが参加したいと思っているのならば参加すれば良いし、逆に参加したくないと思っているのならばそれでも良いと思っている。
別にこの2人だって、出来たら参加してくれると嬉しいなぁ~レベルだろう。
「……マスター。正直な話、この大会に優勝した所で、マスターのお役には立てないと思います」
「うん、普通にゼニスキー商会長くらいなら、こちらから連絡できるからね」
「ですが、私は----」
そこまで言われたら、こちらとしても彼女の気持ちは分かるというモノだ。
私はベータちゃんの代わりに、この料理大会の参加登録をしておいた。
トカリ、それにザザードの2人は「これで骨のありそうな勝負が出来そうで満足!」とやる気十分だ。
……まぁ、問題があるとすれば、1つだけ持ち込めるという食材だよね。
いったい、ベータちゃんは何を選ぶのか、そしてそれがどこまで大会として通用するのか、普通に楽しみである。
時折、こういう風にして脇役キャラと言うか、
あまりスポットが当たっていないキャラに光を当てるの、
私大好きなんです




