第238話 巨大マージ・マンジ討伐大作戦配信(1)
狩猟のドン・デーロによって召喚された、巨大マージ・マンジ。
30mという超大型魔物クラスとなって、盟主パファー達が暮らす居城へと、のっしのっしと、歩き出していた。
「まずいです、ニャア! このままだと、パファー様達のお城が被害にあっちゃう、ニャア!」
「えぇ! いったい、いくらの経済的損失になるのか、考えるだけでも恐ろしいです!」
「いま、考える所そこッスか?! 絶対違うッスよね?!」
アレイスターの言う通り、シガラキ代表が言っている事はなんか違う気がする。
ともかく、いまこのシュンカトウ共和国は、あの巨大マージ・マンジのせいで、とんでもない国家転覆未遂という事態に陥っているという事だ。
既に、狩猟のドン・デーロが召喚した大量のマージ・マンジ達は全員倒して消したが、あの巨大なマージ・マンジには同じ攻撃を当ててもビクともしなかった。
巨大だからこそ攻撃が効かないとも考えられるが、それよりも私が注目したのは、攻撃した箇所が修復しているという点だ。
私が魔法を使って、ヤツの足元の一部を魔法で消し飛ばした。
しかし、その消し飛ばした一部に、周囲から光のようなモノが集まって、あっという間に元通りになってしまっていた。
「(そもそもあの巨大マージ・マンジは生物でも、物体でもない、ただの記憶から生まれた代物。"生物を殺す"のだったり、"物体を壊す"のだったりと、同じ風な対処方法は出来ないか……)」
恐らく、マージ・マンジ達を倒せたのは、私達の攻撃によって姿形を維持できなくなったから。記憶した姿を保つ事こそが、あの記憶達を倒す方法なのでしょう。
----とすれば、あの巨大マージ・マンジを倒すには、あの巨体を維持できなくなるほどの、強大な攻撃を当てないといけない訳で。
「(巨大な攻撃って、それだけでもかなりエネルギー使うのに)」
早くしないと巨大マージ・マンジは、シュンカトウ共和国の盟主がいるお城を滅ぼしてしまう。しかも、一撃で決めないと、さっき試した時のように、周囲から光のようなモノが集まって修復するという事になってしまう。
----そんな重要事態な訳なんだが……。
「さぁ、選ばれしハンドラ商会の面々達よ! シベリア会長の汚名を雪ぐため、行動に移せ!」
「「「「イエス! イプシロンちゃん!」」」」
「イプシロンちゃんではない! イプシロン船長と呼ぶようにっ!」
「「「「イエス! イプシロン船長!」」」」
なにをしているんだろう、うちのイプシロンちゃんは……。
イプシロンちゃんはというと、ハンドラ商会の面々に、船長として指揮を執っていた。
ハンドラ商会の面々と言うのは----エアクラフ開発担当本部長、ディゼル人材担当監査役、ハイブリ開発担当本部長、そしてソラ副会長の4人。さらには、どこかに隠れていたハンドラ商会の従業員達である。
彼ら彼女らは、イプシロンちゃんの号令に合わせて、それぞれキビキビ働いていた。
「……何してるの、イプシロンちゃん?」
「おぉっ、これはススリア船長! いやー、実はハンドラ商会の面々が、腑抜けていたため、ここは船長としてバシッと言ってやらないと! そう思っていただけの事ですよ!」
あー、そうか。ハンドラ商会の面々にしてみれば、自分達を率いていた長である、シベリア・ハンドラ会長が偽物だったという訳だ。
少なくとも偽物として入れ替わっていたという事は、もう既に本物のシベリア会長がやられた可能性を考えなくちゃあいけないって訳か。
「私は、そんな彼ら彼女らの闘争心を煽って、煽って、煽りまくって! 現在に至るという訳です!
どうですか、この完璧な操舵術は! 素晴らしいでしょう、ススリア船長!」
「……うん、確かに凄いね」
こんな似非船長姿のイプシロンちゃんの号令に、キビキビと働いている彼ら彼女らが凄いと思うよ。
「軽い洗脳状態にあったのかなぁ……」
考えて見れば、記憶の中から存在を召喚できるような、すっごい能力を持っていた狩猟のドン・デーロである。
軽い洗脳状態----多少、違和感があってもそれを感じさせないような、そういう洗脳がかけられていても不思議ではない。
そうでなければ、イプシロンちゃんの号令に、あんなに素直に従うはずがないって。絶対。
「むむむっ……! なんだかススリア船長から、酷い扱いを受けているような気がするのですが……」
「気のせい。気のせい」
「ならば良しっ! 船長たるもの、軽い波風程度で動じる事なんてありませんので! ハーハッハハハハ!」
……単純な奴である。私が作ったゴーレムにこう言っちゃうのもなんだが、イプシロンちゃんはなにかとんでもない事を引き起こすトラブルメーカー的な側面がありそう。
「しかし、船長。あの巨体を倒すには、こちらも巨体を出さなければならないのでは? "目には目を"でしたっけ?」
「"目には目を歯には歯を"って奴ですね」
相手に目を潰されたから、こちらも相手の目を潰す。同じようにあちら側が歯を折って来たから、こちらもあちら側の歯を折って返す。
相手がしてきたことに対して、こちらも同程度の事でお返しをするという、前世で知り得た情報の1つである。
「そうだね……確かにそれが一番手っ取り早いかもです」
あちらが、巨体マージ・マンジで来るのなら、こちらも巨体で対応しようではないですか。
「という訳で、アレイスター! 巨大人型兵器モード、起動準備!」
「マスター・ススリアは、今から私をどうするつもりッス?!」
作者「便利な、武器に変化するゴーレム」
アレイスター「扱いが雑すぎるッス!!」




