第237話 【魔王ユギー】狩猟のドン・デーロ【五本槍の1人配信】
~~狩猟のドン・デーロ~~
「(そろそろ飽きて来たなぁ~)」
私、ドン・デーロは、獲物たちの鈍重さに飽き飽きしていた。
他の五本槍は『平和』だの、『絆』だの、『信頼』だのが大事だと言っておりましたが、私から言わせてもらえればこの世で最も一番大事なのは、勿論あれである。
そう、『獲物』----この世は色々な獲物がいるからこそ、面白い世界なのだ!
素早い獲物、硬い獲物、武器を使って来る獲物……!
この世は、この私、【狩猟】の名を冠するドン・デーロに狩られるためだけに存在するのだ!
あの人に教えて貰ったから、ドラスト商会とハンドラ商会という、シュンカトウ共和国の二大商会を同時に潰すという今回の戦略を行う事を決定しました。
確かに、ハンドラ商会の会長たるシベリア・ハンドラになりすまして、エアクラフを始めとした快調である彼女に心酔する者達を騙すのは楽しかった。自分達が信じて敬愛する会長が、実は悪魔であるこの私にすり替わっている事なんて知らずに信じる彼女達を見ていると、最高にワクワクした。
「(でも、楽しい時間と言うのは、いつだって早く過ぎちゃうものだよね~)」
魔女スタダムの記憶にあったマージ・マンジ達を呼び出して、いい具合に混乱の渦を巻きこめたのは良かった。しかしながら、これ以上は面白くなりはしなさそうだ。
「じゃあ、君達にこの私のとっておきをお見せしましょう!」
おっ! 皆さん、私の方に注目してくれた!
良いね、良いね! その警戒心! こちらが、主導権を握っている"狩人"であるという事を分かって欲しいんだよ!
圧倒的上位者は、この私!
お前らはただ狩られるだけの獲物に過ぎないってね!
「いっきますよぉ~! そ~れ!」
ぴかんっ!!
私の【狩猟】の二文字が光り輝くと共に、空からゴゴゴゴゴゴっと、大きな人影が現れる。
その人影は、30mサイズに、文字通りの巨大なバケモノサイズに巨大化したマージ・マンジであった。
「名付けて、【歪んだ思い出】。過去の記憶と言うのは、時間が経てば経つほど正しく認識できない、も・の・さ。
さぁ、"30mサイズだったかもしれない"巨大マージ・マンジよ! この国、滅ぼしちゃって!」
『了解しましたンゴォォォ~』
どしぃぃぃん! どしいいいいいいんんんっっ!!
大きな足音を響かせて、もはや美少女という要素は欠片も分からなくなってしまった、巨大なマージ・マンジがシュンカトウ共和国を蹂躙して行く!
マージ・マンジ1体ずつならまだしも、あのような巨大サイズだったら、倒すのも一苦労! その間に、今回の獲物であるシュンカトウ共和国は完全に国家滅亡の事態!
私の勝ちは、確定! 確定ぃ~!
「まだ、ですよッス!」
----ぶんっ!
「うわっと……?!」
いきなり目の前を通り過ぎた雷魔法。私はそれを悪魔的直感で避けながら、攻撃してきたアレイスターを見つめる。
「あんたを倒せば、あのデカブツも消えるッスよね! だったら先手必勝ッス!」
「おぉ! 良い判断ではあるよ! だ・け・れ・ど、逃げる私を倒せる、か・な?」
私はそう言って、彼女から逃げるように、マージ・マンジ達をさらに5体ほど呼び出す。
「あんな巨大なのを召喚したのに、まだ余裕があるッスか?!」
「巨大さなんて、どうでも良いんですよね? この能力、単純に記憶を参照しているだけ、な・の・で」
私の能力は、"対象の記憶からそれを現実の姿へと呼び出す"という能力。そこに対象の大きさや数は関係なく、巨大な1体召喚しようと、5体召喚しようとも、私の中では一緒なんですよね~。
「じゃんじゃん、行くよぉ~!」
私はそう言って、それでもなお私を追おうとするアレイスターに、嫌がらせ目的でもう5体、マージ・マンジ達を召喚して、足止めをする。
「それじゃあ、ばいなら♪」
私はそう言って、転移の術式を組み込んで置いた指輪を使い、脱出するのであった。
さーて、さて! この後、どうなるのか、楽しみ! 楽しみ!
(※)【泥沼から出た過去】
魔王ユギーの五本槍の1人、狩猟のドン・デーロが持つ権能。対象となる相手の頭を手で掴むことにより、その相手の記憶から過去の存在を無限に召喚できる能力。呼び出された記憶は、倒されるまでは永遠に残り続ける
今回の場合、魔女スタダムの記憶にあった"マージ・マンジを戦わせていた記憶"から、マージ・マンジ達を召喚している。ちなみにあくまでも記憶から呼び出した存在のため倒しても記憶が霧散するだけでドロップアイテムなどはなく、代わりにその記憶の存在が変質した物についてはそのまま残るという厄介な性質を持つ
1体召喚したらもう1体召喚できなくなるなどの制限もなく、また【歪んだ思い出】のように対象の大きさなどを変化させて召喚する事も可能である
召喚した過去の存在は、呼び出したドン・デーロに従順に従う。また、そいつを喋れるようにして、相手を困惑させる目的にも使っていた
ちなみに、一番多く使っていた使い道としては、対象の記憶の中から、狩猟の獲物として相応しいであろう獲物を呼び出すという事である。ドロップアイテムも手に入らないが、狩猟そのものを楽しむドン・デーロにとって、それが何よりの楽しみらしい
【歪んだ思い出】!!
認識のズレにより、元とは違う形にて登場させるドン・デーロのとっておきです!!




