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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第220話 騙し合いの2人【障害物競走対決配信】(2)

 ~~エアクラフ・ハンドラ~~


「くそっ……!」


 私は痛む頭を押さえながら、立ち上がって走り出す。実際、頭はまだ痛いが、それでも私は先を行くイプシロンちゃんに追いつこうと、必死に走り出す。

 まさか、ボーナスゾーンとして設置しておいた【遊泳用水球】を石化して対応していたとは恐れ入ったぞ。


「(しかも、コース内にいる自分自身を設置場所として選ぶとは……)」


 確かに、コース内のどこに設置しても良いという所から、コース内に居る自分自身に障害物----というか、魔道具を設置して使って来るとは思っても見なかった。

 ルール違反だとして問い詰めたい所であるが、それだと意図的にこちらのレーンに入って来たこちらの対応を攻められるだろうし、何も言い返せなかった。


 それよりも、今はイプシロンちゃんに追いつくことが大切だ。


「(ボーナスゾーンを使えなくなったのは痛いが、それでも素の走りはこちらの方が上で……っ!?)」


 そう言って、追いつくために走り出そうとしたら、ガクッとその場に転げてしまった。どういう事だと思い、私は右足を見ると、そこには大きな石の鎖が右足に巻き付いていた。


「ナーハッハハハ! それは私の身体に設置していた魔道具! 脚に絡みつき動きを鈍らせるようにしたのだ!」


 はるか遠くの方から、イプシロンちゃんが高らかにそう言って来る。

 そうか、絡みつけさせた後、石化させて右足だけを重くしてバランスを崩そうという戦略か。



「……面白いっ!」



 私はそう言って、駆け出した。

 右足が重い、それがどうした! いつもと明らかにパフォーマンスは落ちるが、それでも敗北を認めるつもりは一切ない!


 力を込めた右足から、石の重さ分、いつもより無理して力を込めているからか、右足から悲鳴の音が聞こえてくるが関係ない!

 もう片方の左足も、右足と釣り合いを取るために力を込めた分、左足からも悲鳴の音が聞こえてくるが関係ない!


 正直、なんでシベリア会長が魔女スタダムを顧問錬金術師として雇ったのかも分からない。

 どうして、今になってドラスト商会を追い出そうとしているのかも分からない。これじゃあ何かいけないことをしているのだと、認めるようなモノじゃないか。


 しかし、シベリア会長が「やってくれ」と頼むのなら、シベリア会長に救っていただき、さらには同じ家族として苗字をいただいた身としては、会長の頼みを全うしなければならない!



 ----全ては、シベリア会長のために!

 ----シベリア会長が足止めをしろと仰ったのなら、それを全うするのがこのエアクラフ・ハンドラの役目だ!



 両脚からだけではなく、全身から悲鳴の音が聞こえてくる。もう以前と同じような速度で走る事は出来ないだろう。

 それでも、私は歩みを止める事はなかった。


 私はどんどん加速し、遂に前を走っていたイプシロンちゃんを捕えた。

 

「(残りはおよそ2000m! このスピードなら、イプシロンちゃんに勝てる!)」


 そう思いつつ、私は元のレーン、つまりは本来私が走るべきレーンへと移動する。

 彼女の、イプシロンちゃんの戦法はシンプル。自分自身に魔道具を置き、こちらが追い抜こうとしたタイミングでその魔道具を発動して妨害するという戦法だ。

 それなら、同じレーンで走って妨害しようという当初の計画を捨て、元のレーンで純粋に走りで決着をつけてやろうではないか!


「(ゴールが見えて来た!)」


 10000m地点に設置しておいた、ゴールテープが見えて来た。そして、いま完全に、イプシロンちゃんを追い抜いた!

 

「(そして、彼女の身体を確認! 蛇型ゴーレムが3体いる事を確認した!)」


 1体は、この右足に巻き付いていると考えると、あの3体が残りの障害物! 1体が石化させる能力のある【石蛇女の眼(メドゥーサ・アイ)】だとすると、残りの2体がなんの障害物用なのかは分からないが、あちらの手札は全てこの視界内にあると言える。

 あとはあの3体の蛇型ゴーレムの動きにさえ気を付けておけば、敗北する事はない!


 ゴールが目の前まで迫る。

 右足に巻き付いている蛇型ゴーレムが足を圧迫しているからか、なんだか血が足りなくて、若干ふらつくが、それでもこの距離くらいなら大丈夫だ。


「(勝つ! 勝って見せるんだ! このエアクラフ・ハンドラが!)」


 そうして、遂に----


「取っ----!?」


 勝利を掴んだと思った瞬間、私は視界内に捉えていたはずのイプシロンちゃんの姿に、違和感を覚えた。


 少し後ろくらいを走っていたはずのイプシロンちゃんが、遥か前方で(・・・・・)ゴールテープを(・・・・・・・)切って(・・・)いたのだ(・・・・)


「嘘っ----?!」


 私はいま、ゴールテープを切ったと思っていた。

 しかし、それなら、私のはるか前で、ゴールテープを切っているイプシロンちゃんは、一体なんなんだ……?



「どうだ、これこそが私の蛇型魔道具【共感する蛇(スネーク・シンパシー)】! まるで自分が先にゴールしたかのように感じられたでしょう! 私の(・・)経験なのに(・・・・・)



 クスクスっと笑いながら、イプシロンちゃんは私の右足から、石化した蛇型ゴーレムを取る。


 いや、違った。あれは石化してるんじゃない! 最初から、石で出来ていたのだ!


「この【共感する蛇】を取り付けると、私の経験を、まるで自分の経験のように錯覚させることが出来る! 敢えて石のような見た目だったから、石化していると勘違いしたのではないでしょうか?

 どうだ、この私の完璧な采配! 相手にこの【共感する蛇】をつけて、自らが勝利したと錯覚させるという、大海賊に相応しきあくどい戦法なんですよ!」


 高らかにそういうイプシロンちゃんに、私は思わずその通りだと言いつつ、完敗だなと、彼女の勝利を賞賛するのであった。




 ===== ===== ===== ===== ===== =====

 【競争会場(バトルフィールド)】第1回戦 種目;10000m障害物競走

 勝者;ドラスト商会選手 イプシロン

 敗者;ハンドラ商会選手 エアクラフ・ハンドラ


 この対戦結果により エアクラフ・ハンドラは これ以降の勝負には 参加できなくなります

 また 敗北したペナルティーにより エアクラフ・ハンドラにとって一番大事なモノ 【健脚】が イプシロンの所有物として 与えられます

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