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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第211話 魔女スタダム、悩む配信(1)

 ----保釈請求。


 それは一部の大罪人を除いて認められている、正当な権利である。

 罪の重さに応じて決められた金額を支払う事で、その罪人を一時的に牢獄から解放させる制度。そのお金は罪人が戻って来た時に保釈金を払った人に払い戻されるが、要はその罪人が戻って来る事を前提として行われる取引なのである。


 しかし、ただお金を払えば、それですぐに出られる訳ではない。

 そもそもこの権利は、罪人が保釈を受け入れるという事で、初めて成立する取引なのである。


 そして今宵、タノタノ王国の王都であるセントール。その牢獄にて、1人の罪人の保釈が行われようとしていた。




「魔女スタダムさん、あなたを保釈したいと考えております! この保釈、是非とも受け入れて貰えないでしょうか!」


 そうやって保釈をしたいと願う女商人に、魔女スタダムは「どう断ろうか」と頭を悩ませていた。


 保釈を願い出ている女商人の名前は、【ディゼル・ハンドラ】。ハンドラ商会の、若き女番頭である。

 ハンドラ商会とは、シュンカトウ共和国に名を響かせる大商会ドラスト商会に果敢に挑み続ける商会であり、誠実な取引を心がける表の一面、そして他の商会が贔屓(ひいき)にしている商会子飼いの企業に手をかけるというダーティーな裏の一面。その2つの一面を持つ商会である。


 クマの獣人であるディゼルは、ハンドラ商会の使用人の長である番頭を勤める17歳。

 そんな彼女は、こうして日々、魔女スタダムの保釈を願い、足しげく通っているのだ。


「あなたには、素晴らしい才能があります! その才能とは、魔術! そしてその美貌! 間違いなく、我がハンドラ商会の企業として、素晴らしい女性であると確信しております! 是非とも、保釈を受け入れていただき、我がハンドラ商会の顧問になっていただけないでしょうか!」


 「お願いしますっ!」と熱意がこもった対応を見せる、ディゼル。

 それに対して、魔女スタダムは、このハンドラ商会からの登用(スカウト)を素直に受け入れらなかった。


 それはディゼルの恰好が、クマの着ぐるみを着た愛らしい少女のように見えるからという外見的特徴からではない。

 ハンドラ商会の評判が----あまり良くないからである。




 かつて魔女スタダムは、有名になるべく行動に移した。

 その際に、有名になるための手段の1つとして、商人として成功してビッグになるという方法を考えていた時期があり、ハンドラ商会の事はその時に知った。


 ハンドラ商会は、良くも悪くも純粋すぎる。

 彼らはお客様とより良い関係を、より良い商売をしたいという純粋な目標があり、しかしながらその目標のせいでドラスト商会に大きく出遅れている商会である。


 このハンドラ商会は、他の商会の子飼いの企業に手を出す事が多々ある。

 それは本来、他人が優先的に取引をしている間柄に、無理やり分け入って取引しようと持ち掛けるのだから、評判はあまり良くない。

 そんな行為をなんでハンドラ商会はしているのかというと、その子飼いにされている企業を救い出すためだ。


 商会の子飼いになっている企業というのは、その商会から優先的に発注を受けられるというメリットもあるが、同時に取引額が通常よりも大幅に抑えられてしまっているというデメリットもある。

 企業にとって、常に大口の取引先が確保され、さらにはその取引先から発注を大量に受けられる状況にあるという状況を、良い物として受け入れる所もある。今後ともより良い関係を続けていくために、利益を少なくして商品を安く売ろうという企業もある。


 しかし、そんな子飼い状況に是正をしようというのが、ハンドラ商会だ。


 


 ----『良い物を、良い値段で』。



 彼らの一番の目的はそれであり、ハンドラ商会は子飼いだからという理由で、技術に見合った金額が支払われていない事に腹を立てている商会なのである。


 無論、ハンドラ商会は、決して悪い商会ではない。その商会方針により、救われた企業もたくさんあり、ハンドラ商会に感謝している企業も多い。

 同時に、せっかく子飼いにしていた企業を脱退させるというやり方に文句を言う他の商会、そして自分達に声をかけない状況に腹を立てる"自称"優良企業さん達。それらからの妬みが多い。


 好かれるところからは、物凄く好かれる。しかし、嫌われるところからは、物凄く嫌われる。

 それが、ハンドラ商会という商会なのである。



 その商会の番頭ディゼルが、魔女スタダムという自分を、保釈金を支払ってまで欲しいと言ってくださる。それは魔女スタダムという価値を認められたのと同時に、ハンドラ商会という清濁併せ呑む商会に入る事を意味する。


 魔女スタダムが人気者になりたかったのは、彼女をこの魔女の身体に押し込めた本物を探すため。

 であるのと同時に、せっかくの異世界なのだから、チヤホヤされたいという欲求もあったのだ。


「(ハンドラ商会は良いところだけど、良い所もあるけど、悪い所もあるのよね……。それに、もう少し我慢したら、保釈金を貰わずとも出られる)」


 彼女の罪は決して重いモノではなかったが、数々の減刑行動により、彼女の懲役はあと1年足らずにまで縮んでいた。外に出たいという気持ちはあるが、かといってこのハンドラ商会にお世話になるべきかと言われると、少し微妙な気もする魔女スタダムなのであった。

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