第207話 師匠のためにも、頑張るぞいっ配信
~~タラタ~~
「よしっ、頑張るぞいっ!」
私の名前は、タラタ! 錬金術師ススリアの弟子である、15歳のエルフ!
今日、私は尊敬すべき師匠と共同研究のお誘いを受けました!
研究内容は、眠り続けるピエームちゃんを救うための"バッテリー"という魔道具の開発です。
ピエームというのは、バンブーエルフの、シュンカトウ共和国の兵士さんです。
彼女は武闘大会にて、回転鋸剣になるという武器になる力を披露していたのですが、大会を終えてから彼女はずーっと眠り続けている。
師匠の調べで、彼女が眠り続けている理由は、その身体の中に魔力がないからだという事が分かった。回転鋸剣の力を得た代わりに、彼女は生物なら誰しもが持っているはずの魔力を生成する器官が消失し、その代わりに魔力を蓄積する器官へと変換されているみたいです。
彼女をなんとかするためには、魔力をその蓄積機関に充電する必要があるのですが、その状態をどうにかする魔道具を今から作ろうとしているらしい。
詳しい説明をされた結果、要するに魔力を送り込むポンプのようなモノみたい。
雷神石を2つ使って、ピエームの身体を包み込むことで、魔力を送り届け合う事で、結果としてその間にあるピエーム自身にも魔力が送り込まれることで、ピエームを復活させちゃおうという。
なるほど、だったら確かに私の研究が重要になってきますね。
私が、師匠から託された研究は、『魔力を流す性質はそのままに、雷属性というのを無くす』という研究。
浮き輪を膨らますのに必要なのは純粋な空気。その空気中に、浮き輪を割る危険性のあるモノは排除しておこうというのは、確かに道理が通っている。
「(しかし、これはなかなか難しい研究なのだ)」
私は試作品を作って見て、この研究がどれだけ難しいかを実感していた。
この雷神石が雷属性の魔力を放出するのは、この石の中にほぼ無限と言って良い魔力が凝縮されているから。その溢れんばかりの魔力が、雷属性の魔力という形となって石の中から溢れているということ。
この石の中にある無限に近い魔力に手を出すと、下手すると使える魔力が大幅に減ってしまう可能性がある。具体的には1/100くらいにまで。
だから、溢れた魔力を無属性----雷属性ではない、純粋な魔力に変換しようとしているのですけど、これがなかなかに難しいのだ。
「(魔力を無属性に無理矢理変換しようとすると、向こう側の雷神石に魔力が届かないという事態が出てしまう。かといって、順番に魔力を無属性に変換しようとすると、人体に貼り付けるにはあまりにも大きすぎてしまう)」
最終目的地は、人体に貼り付けたまま、戦闘を行っても外れないシールタイプ。
貼り付けて落ちないというのは師匠の担当だとしても、あまりにも大きすぎたり、重すぎたりしてしまうと移動に大きな影響が出てしまう。理論を完成させて後から小型化や軽量化を目指そうとしても、現時点での大きさは、人体の半分程度。かなりデカい。
ここから小型化や軽量化を目指すより、もう少し良いのを開発した方が良いと判断して、私は考え直そうとしているのだ。
……うーん、難しい!
「でも、楽しそうなのだ!」
と、悩んでいると、師匠の作ったゴーレムの1体、ガンマちゃんが私の部屋へと入って来た。
「ガンマちゃんさん……?」
「"さん"は要らないのだ。巨匠の命により、タラタを手伝いに来たのだ」
ガンマちゃんの話によれば、既に師匠は研究の最終段階に入っているのだそうだ。
なんでもスイッチを搭載する事により、そのスイッチを切り替える事で身体に貼り付けたり、簡単に剥がすことが出来るように作ったのだそう。その貼り付ける機能も、スイッチの切り替え機能も、雷神石の魔力をほんの少し掠めて使っているので、かなりの小型化に成功しているそうだ。
あとは私の研究が出来次第、ピエームちゃんを救うための魔道具バッテリーを作れるそうだ。
「責任重大ですね……」
「おや、めちゃくちゃ沈んでいるのだ。そこまで深刻な問題なのだ?」
「そりゃあもう」
私は、ざっくりとガンマちゃんに状況を説明する。
「なるほどなのだ……思った以上に、大型になってしまって困っている、と」
「そうです。このままだと完全に無害な無属性には出来なくて……」
私がそう言うと、ガンマちゃんは頭に疑問符を浮かべて、こちらを見ていた。
「……それのなにが問題なのだ?」
「えっ……?」
ガンマちゃんはこちらを見て、そう尋ねて来た。
「人間の身体はそこまで軟弱じゃないと、記憶しているのだ。全てを無属性に変えなくても、人体に影響のある部分だけを直せば良いのでは?」
そのガンマちゃんの提案はまさしく、私にとっては革命的な提案だった。
「----そうだ! 要は人体に使って、問題がないようにすれば良いだけ!」
全てを無効化するのは難しくても、人体に影響が出ない程度にまで抑える程度なら、そこまで難しくはないのかもしれない!
「ありがとう、ガンマちゃん! おかげで、なんとかなりそうだと、師匠に伝えてください!」
「それは良かったのだ」
勢いよく作り始める私。それを見て、ガンマちゃんは満足したように部屋を出ていくのでした。




