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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第191話 決勝戦、ヒトと武器【武闘大会生中継配信】(2)

 ~~ピエーム~~


「さぁ、負けを認めてください姫様! 武器化できるようになったこの姿こそが、ヒトが歩むべき進化の形! 進化していない姫様に勝ち目はないですよ!」


 自分の全身から、小さな刃がたくさんついたベルトを出して、(ピエーム)はそのベルトを高速回転させる。高速回転する刃のベルトが斬撃を生み、あらゆる物を切り刻む力が私の身を包む。

 さしずめ今の私は、触れたあらゆる物を斬る鎧を身に纏っているようなモノだ。


「随分と言うじゃないですか。まだ勝負はついてないですよ」


 対戦相手の姫様がそう言うが、そんな事はない。もう勝敗は決した。私の勝ちだ。

 あの武器化する力を受け取って以来、私は負ける気がしないのだから。




 1回戦を勝利したあの日、私はあの人(・・・)と出会った。

 他のブロックの勝者が順調に決まる中、私はここまでだろうなと感じていた。


 1回戦----私が勝利できたのは、乱戦(・・)だったから(・・・・・)

 2人が戦っていたからこそ、その2人との戦いに割り込む形で勝利できた。私の価値は乱戦でこそ発揮される。相手が隙だらけの時こそ、私は最強の戦闘能力を発揮出来る。

 準決勝以降は、1対1の対決となる。1対1の対決では、私は他のブロックの出場者と相手にならないと思っていた。


 ベスト4まで行けたら、それで十分。


『本当にそう思っているのかい?』


 そんな時に話しかけてきたのが、仮面をつけた少女である。彼女は1本の注射器を取り出し、これを使えば望みが叶うかもしれないよ、とそう語った。


『この注射器を刺せば、君は無敵の力を手に入れられる。どういう力なのかはこの私自身も分からないけれども、これだけは確実に断言できる。

 ----君は、絶対に負けない。何故なら、君は最強の能力を手に入れ、相手はその能力を打ち破れないのだから』


 そうして手に入れたのが、この武器になる力である。この武器の力を使えば、私は1対1の対決であろうとも、勝利することが出来る。実際、ダンパン部隊長をも勝利できた。

 戦う最中も、いや戦う前から感じていた。私を倒す方法はどこにもない! だから私は無敵なのである!

 私は強くなった! 乱戦だけではなく、1対1の対人戦であろうとも私は勝利できる、最強の武人となれたのである!


 だからこそ、私は同盟を破棄した。

 デルタの指導を受ければ、さらに強くなれると言われ、受けた同盟であったが、私はこれ以上の力を望んでいない。というか、これ以上強くなれるだなんて思っていない。

 私こそ最強! パームエルフにして最強の武人、ピエームなのである!




「だったら、まだまだ攻めさせていただきましょう!」


 私はそう言うと、手の平から円状の刃を取り出す。これは私の身体の中で生成された、『回転鋸剣(チェンソーブレード)』の一部である。

 私の身体は、小さな高速で移動する刃がついた剣に変身する能力。それに付随するあらゆる物を、身体の中から作り出すことが出来る。この円状の刃もまた、それで作り出したモノだ。


 この円状の刃は、私の意思で、自動で高速で回転する刃である。私が投げると、円状の刃----【チェンソーサークル】は、対戦相手である姫様に向かって行く。

 これで勝利したと思っていたのに、姫様は剣を床に突き刺して、その軌道を逸らす。一発でダメなら、何発でもと思い、私が大量に放つも、姫様は同じように床に突き刺して、軌道を逸らして対応して来る。


 この技では、どうやら姫様を倒す事は無理そうだ。しかし、焦る事はない。

 私には、この【チェンソーサークル】以外にも多くの技を用いて姫様に攻撃して倒すことが出来る。しかし逆に、姫様にこの私を倒す手段は存在しない。


「そう! 姫様、私を倒す手段は存在(・・)しない(・・・)。あったとしても、今の姫様にはないという事は、姫様自身が良くご存じのはず」


 私の言葉に、姫様は肯定も否定もしない。しかしその顔は「その通りである」と、雄弁に語っていた。

 優れた武人ほど、相手の力量差というモノが良く分かる。そして、どうやっても勝てないという事が分かるモノだ。


 今の姫様からは、それが強く出ていた。そう、私の良く知った顔だったから。



 ----乱戦でないと勝てない。

 ----対人戦では私に勝ち目はない。

 ----ここまでが、私の限界。



 彼女の顔は、武器化する能力を得る前の私の顔に、よく似ていた。

 相手の力量差に打ちひしがれ、戦う前から敗北を認めていたあの頃の自分に、よく似ていた。


「えぇ、そうね。確かにいまの私が、どれだけ全力で戦おうとも、あなたを倒す事は無理でしょう」


 だからこそ、分からない(・・・・・)。 

 自分と同じ、戦う前から敗北が分かっている顔をしていたのに、なんでまだ、立ち向かえる(・・・・・・)のだろうと(・・・・・)


「次、行きますよっ!」


 姫様はそう言って、斬撃をこちらへと飛ばしてくる。それらは私の身体を覆う斬撃の鎧により、切り刻まれ、私にぶつかる事はない。

 ダメージを与えていないと、これほど分かりやすく主張(アピール)しているのにも関わらず、姫様は攻撃を止めない。



 斬撃を飛ばす。

 ----無駄。


 剣で斬りかかる。

 ----無駄。それどころか、剣が折れた。


 鉄砲魚拳という、サビキさんの攻撃方法をモチーフにした攻撃をしてくる。

 ----無駄。水に濡れて、ちょっと冷たかっただけだ。



 無駄、無駄、無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄----



 彼女自身が、姫様自身が一番良く分かっているはずだ。

 私を倒す手段は存在しない。敗北を認めた方が速いという事が。


 しかし姫様は、諦めない。

 諦めずに、立ち向かって来る。


「いい加減、負けを認めてください! 姫様! その方が楽ですよ!」


 私の言葉に、姫様はこう答えた。



「私は、絶対に負けない! 何故なら、私には絶対に勝負から逃げないという誇りと、私はその能力を絶対に打ち破るという意思があるのだから!」



 それは、私が仮面の少女に言われた言葉に良く似た、絶対に逃げ出さないという彼女の矜持(プライド)が込められた言葉であった。

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