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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第162話 ワットのプレオープン配信(2)

「この、ステーキのしょうゆソースを」

「はい、どうぞどうぞ」


「メンチカツ定食。サラダ大盛りとかも出来るか?」

「はい、どうぞどうぞ」


「魚のムニエル、あとたらこパスタで」

「はい、どうぞどうぞ」


「とりあえず、フードライターとして色々な味を試したいから、ここからここまでをミニセットでいけるか?」

「はい、どうぞどうぞ」


 淡々と、ワットはお客様から注文された料理を配膳して行く。

 イナリ、テン、アナコダ、ヨルラット……4名が注文した料理を、淡々と配膳して行った。

 テンからの大盛りへの対応、ヨルラットのミニセットへの対応など、細かい対応なんかもしっかりと行っていた。


「さて、シガラキ代表さんとスコティッシュさん? ご注文をどうぞ」


 ----なお、この間、ワットは一切、厨房に行くどころか、私達の目の前から離れても居ない。

 完全なるその場待機での状態にて、お客様達の注文を待ち構えていた。


「この状態で、本番(グランドオープン)もやるつもりか、ニャ?」

「そりゃあまぁ、このつもりで挑むというか、このつもりが正常というか?」


 スコティッシュの質問にも、このままで行くと応対するワット。


 つまり、お客様の注文がいつ来ても良いように待機して、お客様の注文が来たら即座に注文された料理を【アイテムボックス】から提供するというスタイルでやっていくみたいである。


「----ふむ。それは効率が悪くないか?」


 シガラキ代表が口にすると、他のお客様達もそうだなと頷いていた。




 ----【アイテムボックス使用に関する飲食店法】。

 それは【アイテムボックス】が便利すぎるからこそ生まれた、飲食店に関する法律。


 【アイテムボックス】は、上等なモノだと、中に入っている間その時間を止めてしまう。具体的な例を挙げるとすれば、1年前に【アイテムボックス】に入れたラーメンが、麺も伸びずに、温かい状態で食べられてしまうのである。

 このような【アイテムボックス】を、飲食店の店舗営業に持ち込んでしまうと、持っている飲食店が有利すぎるという理由によって、【アイテムボックス】の使用に関しては制限がかけられている。


 ----3日間。


 出来立ての料理を入れて、それをお客様に飲食店の営業として出して良いのは、3日間と定められている。3日以上前に作っておいた代物は、お客様に出してはいけないというモノだ。


 厨房に行かないワットのこの営業スタイルは、【アイテムボックス】内にモノを入れておいて、それを出しているだけだと、彼らはそう見ている訳である。



「えっ? 違いますよぉ~」


 と、ワットは笑いながら、その可能性を否定する。


「じゃあ、その証明をしてもらって良いか?」

「勿論。どんとこいですよ」


 言質を取ったシガラキ代表は、メニュー表を畳むと、ワットに注文をする。


「それでは----このメニュー表をもらっておいてなんだが、エビチリを頼みたい」

「エビチリ……ですか?」


 シガラキ代表が頼んだのは、ワットが提示したメニュー表にはないメニュー。

 なにせ、そもそもエビチリは、ススリアが考える定義でいえば、洋食ではなく、中華料理のジャンル。それが故に、メニューには載っていないし、作る予定もないメニューだ。


 シガラキ代表がエビチリを頼んだ理由は、洋食ではないからと言って、メニューに載っていなかったから。


 もし仮に、【アイテムボックス】内に、メニューに載っている商品の完成系を大量に入れているという営業スタイルであれば、メニューに載っていない商品は対応できないはず。

 そう思っての、シガラキ代表からの提案である。


「どうだ? 海老も、それからチリソースの具材も、厨房にあると聞いているが、作れないか?」

「えっと……そもそも、私は洋食店用のゴーレムであって、メニューにない代物を作る事は、予定外なんですが……」

「あぁ、分かってる。本番の営業では断ってくれて構わない。今回だけ、【アイテムボックス】に収納している訳ではないというのを確かめるだけだ。それでも、無理というつもりか……?」


 もし仮に、これで無理と言えば、このワットが営業法に違反をしているとして、ススリアに文句を言うきっかけになると、シガラキ代表はそう考えたのである。



「……出来ないか、出来なくないかでいえば、出来なくはないですけど。本番の営業では、絶対にやりませんので」



 てっきり無理と言い出すかと思っていたのに、シガラキ代表からの解答は、今回だけならば構わないというモノであった。


「----では、どうぞ」

「えっ? 噓っ……?」


 シガラキ代表の前に、ワットはエビチリの皿を差し出される。

 厨房には行かずに、普通にエビチリの皿を、先程と同じように差し出されていたのであった。


「失礼ですが、シガラキ代表。美味しくなくても、エビチリ(これ)に関しては文句を言われる筋合いはありませんので」

「あっ、あぁ。勿論だよ。無理を言っているのは、こちらなんだから」


 差し出されたエビチリを受け取り、シガラキ代表は口にする。

 甘い……そして、その後にどこか"蟹っぽい味"がする。この独特な味は、厨房に置いてあったアマカニエビという、甘さと蟹っぽい味が特徴の海老の味。

 エビチリにはあまり向いていない海老だが、ワットの本領が洋食である以上、マズくないのだから文句を言うべきではないだろう。


 エビチリを頼んだのは、いまシガラキ代表が咄嗟に頼んだモノ。

 メニューにないが、エビチリを頼むだろうと予想して、【アイテムボックス】に入れておくだなんて……そんなのは、果たして可能なのだろうか?


 その後、スコティッシュもシガラキ代表と同じように、メニューにない商品を頼んだ。

 ----頼んだ商品は、スコティッシュが【アイテムボックス】から出したキノコを使った、パスタ料理。色が水色と珍しいキノコで、味とか以前に彩りとして有効として使われるキノコである。

 

 エビチリと同じく、どこか不満気な様子で、ワットは渋々了承して、パスタを作った。

 その中には、ちゃんと火が通った、該当のキノコの姿もあり、多少提供に時間がかかったが、今から実際に作っているとしたらそれくらいかかっているだろうと、誰もが納得したため、誰も気にしなかった。



 こうして、いっさい厨房には行かずに、お目当ての料理を提供するという、ワットのスタイル。

 プレオープンに招待された皆に謎を残しつつも、味も問題なかったため、その日の昼から、ワットの食堂は本格的な営業が始まるのであった。

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