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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第159話 ワットが納品されたよ配信(2)

 スコティッシュに連れられて、ジュールが部屋までやって来た。

 シガラキ代表からの話、そしてススリアが書いた【料理業務型アルファ・ゴーレムサポートシステム搭載型ゴーレム・モード"仕事率(ワット)"】についての取扱説明書を見て、ジュールは複雑そうな表情を浮かべていた。


 無理もない。ジュールは、ただ実直に、自分の仕事を全うしていただけに過ぎない。

 その問題を解決すべく、自らを生み出したススリアに迷惑をかけてしまい、挙句の果てには不甲斐ない自身の業務をサポートすべく新たなゴーレムが送られてくる始末。


「(これがもし私の立場なら、自身の商売が不適切だと判断され、新たに後輩が尻拭いをするようなモノだからね。そりゃあ、それだけ複雑そうな顔になりますよ)」


 スコティッシュは同情した。

 なんだか複雑そうな表情を浮かべているジュールに、相手がゴーレムとはいえ、同情していた。


「(これが、ワットなんアルか……一体、どのようなゴーレムなのネ?)」


 ジュールは箱の上から、ワットがどのようなゴーレムなのか恐る恐る覗き込んでいた。

 実は、ジュール自身、ワットがどのような性格で、どのような仕事(さぎょう)をするゴーレムなのか、全く分からなかったのだ。




 【アルファ・ゴーレムサポートシステム】とは、ジュールを始めとしたゴーレム達。彼女達を配信という形で接続し、歩行だったり、物を掴むなどの動作補助を目的としている魔道具システムだ。

 その動作補助の中にはそれぞれのゴーレムの専用の技術、ジュールでいえば【ラーメン業務】という作業(プロセス)を使うためもあるが、それぞれのゴーレムの専用の技術はきちんと決められて管理されている。


 例えば、ジュールは【アルファ・ゴーレムサポートシステム】を通して、ガンマやデルタと通信する事は出来る。

 しかしながら、ガンマの編集作業能力、デルタの戦闘技術能力を再現する事は出来ない。その2つはそれぞれガンマ、そしてデルタの領域であり、同じようにガンマやデルタも、ジュールと同じ事は出来ないのである。


 ススリアはその事を、【個別領域(ブラックボックス)】と命名しており、これはススリア自身も作り上げた後は容易に弄ることが出来ないモノとなっている。

 だからこそススリアは新しい、ワットというゴーレムを作ったのだ。【アルファ・ゴーレムサポートシステム】を通して、シュンカトウ共和国にいるジュールを編集して、ラーメン業務以外もするゴーレムに改変しようとせずに。


 ジュールは、【アルファ・ゴーレムサポートシステム】内に、新しくワットの領域が生まれたことは把握していた。しかし、把握できたのはそれだけ。

 どんな業務を行うのかは【個別領域】の中だから見られず、ワットはお喋りなタイプではないのか、あるいはまだ稼働していないからなのか、【アルファ・ゴーレムサポートシステム】内でどういう作業をするのかを知らされていなかったのである。


 だから、ジュール自身も緊張していた。

 果たして、このワットは、どのようなゴーレムなのか、と。




「では、開封作業に移ってくださいアルよ」

「そうだな。任せたまえ」


 ジュールに言われて、シガラキ代表は早速、開封作業に移る。


 とは言っても、作業自体は簡単なモノだ。

 ダンボールの上に置いてあった取扱説明書を裏返しにして、錬金術の模様が描かれている面を上にして、ダンボールの上に載せる。

 ダンボール近くにジュールを配置し、あとはシガラキ代表が魔力を通すだけだ。


「----行くぞっ」


 シガラキ代表は、そう言って魔力を通す。

 すーっと、魔力が手から紙へと流れ込むのを感じると、魔方陣が発光し始め、ダンボールがカタカタッと、大きく揺れ動き始める。


 どうやら、起動には成功したらしい。

 3人がそう、安堵した時である。


 ----どんっ!!


 ダンボール箱から、腕が、突き破るようにして現れた。

 ----そう、丁度"魔方陣が書かれた紙"を、突き破るように。


「「「あっ……」」」


 ----これは大丈夫なのだろうか?


 3人がそう思ったのは、無理もない。

 あの説明書には、『起動する際、この紙の裏面の魔方陣を上にして、ダンボールの上に載せ、魔力を通してください』とはあったが、"これは大丈夫なのか?"と。


 今は、魔力を通して、起動中。

 この起動中に、ワットの腕が魔方陣が書かれた紙を突き破って、大丈夫なのか、と。


 そんな事を3人が考えている中も、ダンボールの中に収められているワットの起動は進んで行く。



 箱を突き破り、ついでに紙をも突き破った腕は、ふわふわと宙に浮かぶ。その手は胴体と繋がってはおらず、完全に独立して宙に浮かんでいた。

 そして、箱からもう1つ、腕が出てくるのと同じく、胴体と顔も箱の中から出て来た。


 黒い肌の顔に、藍色の髪が顔の左半分を隠している。

 着ている服はセーラー服、その上に白いジャージを羽織るという、おおよそ料理をしそうには見えない恰好をしていた。


 顔と胴体は出てくると共に、箱の外へと移動する。そうすると共に、箱の中にあった非常に太ましい2つの太もも、そして綺麗な革靴を履いた足が出て来る。

 両腕、顔、胴体、太もも、足----全ての部位(パーツ)が出そろったのを確認したのか、それは1つに合体して行く。


 出来上がったのは、顔の左半分を藍色の髪で隠したセーラー服の少女。

 羽織っているジャージのポケットの中から、【W】と印字されたバッジを取り出し、程よい大きさの胸の上辺りに取り付けた彼女は、3人の方に顔だけクルっと向けて挨拶をする。


「【料理業務型アルファ・ゴーレムサポートシステム搭載型ゴーレム・モード"仕事率(ワット)"】、通称ワットちゃんです。どうかよろしくお願いします」


 顔だけ器用に、頭を下げる彼女に、3人は「これで状況が解決されるのだろうか?」と若干の不安を浮かばせるのであった。

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