第154話 ワッフル作ろうよ配信
養殖は、金も期間も非常にかかる。
ホワイトサモーンの増肉係数は『1.2』と非常に良いのだが、そもそも養殖というのは時間がかかる。
普通の魚型魔物は淡水と海水のどちらかに住んでいるのだが、このホワイトサモーンという魔物は淡水と海水のどちらも住むことが出来る魚型魔物である。
川で生まれ、海で産卵に必要なエネルギーを蓄え、栄養をたっぷりと蓄えた状態で再び川で卵を海に戻って来る。ホワイトサモーンはそういう魚型魔物なのである。
当然ながら、養殖においても、この流れに沿って養殖をしていく必要がある。
ホワイトサモーンも、まずは淡水である程度大きくした後、海水で大きく、出荷サイズにまで育てるという計画で行くつもりである。
イプシロンちゃんとも話し合った結果、ホワイトサモーンが出荷サイズになるまで、だいたい4か月くらいで出荷できるようになるという。
「(イプシロンちゃんにはゴーレムを作り出すことが出来る魔道具【焔のカンテラ】を渡してあるし、養殖はこのままイプシロンちゃんに任せて----っと)」
私は別の事に、力を注ごうかなーっと。
イプシロンちゃん作成に対して、私は新しい拳法を作ったりと、錬金術師らしからぬ行動が多かった。
イプシロンちゃんを作るためとは言え、ちょっと錬金術師っぽい行動をした方が、やっぱり良いんではないだろうか?
「という訳で、今回作るのはこちらになります!」
どんっと、私は特殊なフライパンを取り出していた。この特殊なフライパンは、2つの特殊な構造のフライパンを合体させた特殊なフライパンである。
独特な網目状の凸凹のある、このフライパンの名前は"ワッフルメーカー"。ワッフルと呼ばれるお菓子を作るのに、便利なフライパンである。
このワッフルメーカーを作った目的としては、お菓子のワッフルが食べたくなったからだ。
ワッフルはあの独特な形であるからこそ美味しいお菓子だと思っており、だからこそわざわざワッフルメーカーを作っているという訳だ。
「液を流し込めば、自然と魔道具がワッフルを作ってくれるという仕様だ。まぁ、肝心の液を作ってくれるのは、ベータちゃんだからベータちゃんが使いやすいように作っておかないとね」
ワッフルといえば、私はやっぱり、リエージュワッフルが好きだなぁ~。
リエージュワッフルというのは、別名「砂糖ワッフル」と呼ばれているワッフルで、楕円の形をしているのが特徴のワッフル。このワッフルは、生地そのものに砂糖などで味付けしてあり、そのままでも十分に美味しいワッフルである。
ワッフルの種類には他にも、「柔らかいワッフル」と呼ばれるブリュッセルワッフル 、果物を載せるフルーツワッフルなどもあるけど、私としてはリエージュワッフルが好きだなぁ~。
ワッフルそのものを美味しく楽しんでいるという感じがしてねぇ、まぁ、他のワッフルも嫌いという訳ではないんだけども。
「さて、とりあずまずはテスト代わりに試してみましょうか」
この後、ベータちゃんにもやってもらうつもりではいるけれども、まずは自分でやって見ないとだよねぇ~。
まずは、ボウルに卵を割って入れる。ボウルに入れた卵を混ぜつつ、砂糖、塩、バターを加えて混ぜる。牛乳も加えるのだが、こちらは少しずつ加えてその都度、混ぜる。
「そうやって出来た液に、特殊な粉をふるいながら加えて、混ぜる、っと!」
言っときますけど、決して怪しい粉ではありませんよ?
前世では、薄力粉やベーキングパウダーと呼ばれていた代物だ。薄力粉はともかくとして、ベーキングパウダーはこの世界にはないモノだからね。特殊な粉、という言い方にしてしまった。
この特殊な粉は、魔道具を使って作った膨らます性質を持った粉で、ほぼベーキングパウダーと同じ性質の粉である。
材料を全て入れたボウルを良くかき混ぜて、っと。
「あとは、このワッフルメーカーに入れて、っと……」
『魔道具【ワッフルメーカー】、起動開始します。美味しいワッフル、作りましょう♪』
「よろしく頼むねぇ~、ワッフルメーカーくん♪」
魔道具【ワッフルメーカー】に作って貰っている間、私はゆーっくり休憩させていただきましょう。
あー、美味しいワッフル、楽しみだなぁ~。
「……マスター、私だってワッフル作れますよ? こんな魔道具がなくても、大丈夫ですよ?」
「ベータちゃん、魔道具に嫉妬しないでくれない?」
ワッフルは美味しかったんだけど、こういうようなやりとりがあったり、なかったりしたとか。
(※)膨らませ粉
魔道具を使って生み出した、パンやお菓子などを膨らませるために使う粉。ススリア曰く、ベーキングパウダーの代用品
パンやお菓子にとっては、「ふんわり」と、そして「さっくり」などの食感は製品価値を高めるのに必要不可欠なモノであり、ベーキングパウダーはガスの力で生地を膨張させる事で膨らませるのだが、「膨脹剤」「膨張剤」「ふくらし粉」とも呼ばれている
低温でガス発生が強い"速効性バルーン・イースト"。低温から高温にかけてなだらかに反応する"持続性バルーン・イースト"。低温でガス発生が弱く、高温にかけて強くガスが発生する"遅効性バルーン・イースト"の3種類が存在する




