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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第143話 そのペンギンは、一大決心をする【決意表明配信】

 私の名前は【アデリィ】。ウミヅリ王国に住むペンギン族の娘だ。


 ペンギン族というのは、鳥のような姿をした魚人族の一種である。鳥を思わせる翼や羽、同じく鳥を思わせる脚など、どちらかと言えば獣人族の一種である鳥族のように思われるかもしれないけど、私達は魚人族。

 鳥族のように空を飛べないし、どちらかと言えば海などで泳ぐことが得意な、ただの魚人族である。

 

 とは言え、そのような魚に見えない見た目から、他の種族とのコミュニティーを気付くのに、苦労する場面も多いのだけど。


 私の一族は代々、水産加工業で、このウミヅリ王国を支えて来た。

 漁をしてきて持って帰って来た魚などの海産物を、工場に移動させて、美味しい干物にしたり、風の魔法を用いて真空にして長持ちにしたり、あるいは缶詰にしたりなど、食べやすいように加工し直すというのが私達ペンギン族の仕事である。

 

 ……というか、これしか出来なかったというのが正しい評価だろう。


 新鮮な魚や、高級そうな魚なんかは、私達よりも多く運べる種族が居るから、無理。

 それなら大量の魚を捕って来るというのも、私達のような種族は、ウミヅリ王国では少数派であるため、どうしても他の種族よりも多く捕って来るというのが出来ない。

 だからこその、加工品業----他の種族がやらない事業をやるのが精いっぱいであった。


 その事に、今まで特に不満などはなかった。

 人には人の戦い方があり、これがペンギン族としての戦い方であると思っていたから。


 私も来年、成人である15歳を迎える。

 親の仕事を手伝おうと、今日も張り切って頑張ろうとした矢先の事だ。




「私が、ススリアという方の武術訓練の選抜メンバーに選ばれた?」


 なんと、外国から来られた武術に長けた方が、私をご指名との事である。

 いままで、加工業のやり方とか、経営学とかを学ぶだけの、武術とはまるで縁遠い生活をしてきた私が、なんで武術訓練を受ける選抜メンバーになっているのだろうか?


「さぁ、私にも分からん。というか、他のメンバーも、お前と同じような方が多いらしい」


 その話を持って来た父の話によれば、そのススリアなる人物は、私と同じような、武術なんかしたことがない人を集めまくっているのだそう。


 ----アザラシ族の、ごく潰し。

 ----アンモナイト族の、考古学マニア。

 ----イルカ族の、サーカス団員。

 ----クラゲ族の、研究者。

 ----クリオネ族の、マッサージ店員。

 ----ドジョウ族の、清掃員。

 ----トンボ族の、配達員。

 ----ハゼ族の、サーカス団員。

 ----ワニ族の、同業者。 


 流石に全員の顔と名前を憶えている訳ではないが、私を含めた全員、体力にはあまり自信のない者ばかりであった。


「しかも、そのススリアという方は、サビキ王女様を倒す人員をこの中から選び出そうとしているらしい」

「あのサビキ王女を、ですか?!」


 父の言葉に、私はさらに驚いた。


 サビキ王女は、私達リイル王女陣営が倒すべき王女様だ。

 ズワイ騎士団長との模擬戦は何度も観戦しているが、全く倒される気配がない絶対的な強者であり、弱肉強食の我が国においては、いま最も国王に近い人物とされている。

 同年代として、彼女の活躍は否が応でも耳に入って来る。


「私、多分瞬殺だと思いますよ?! それなのに、なんで?!」

「分からないが、リイル王女様からのご命令だ。行かないというのは、流石にマズいという事は、聡明なお前なら分かっているはずだ」

「うぐっ……」


 そう、分かっている。


 サビキ王女様が、この国の王様になりたくないって事も。

 出来たら、倒されて、のんびり冒険者になりたいって事も。

 そして、そういう未来が訪れない限り、我が家はこの国では破滅する道しかないというのも、良く分かっている。


 サビキ王女の陣営は、サビキ王女が本当は冒険者になりたいなんて事が分かっていない、ただ彼女の強さに心酔しているだけの狂信者たち。

 国王になったサビキ王女と共に、他国に戦争をバンバン仕掛けたいと思っている、そういう好戦的な魚人族たちである。

 サビキ王女はともかく、支持者であるその狂信者たちが「サビキ王女をずっと支えてきたのは、私達! 故に、これからも大臣などで支えます!」といった時点で、この国は亡びる。


 他国に、無計画に侵略しようとする国が辿る未来は、どんな歴史書を見ても滅亡しかない。

 そういった事が分かっている人達は、政治力に長けているリイル王女の味方をしている。

 サビキ王女の、支持者の面々はそれが分かっていない。彼らは、強すぎるサビキ王女の強さに、酔いしれているだけだ。


 ----誰かが、そうならないように、サビキ王女を止めなければならない。


 そう思っていたのは事実だが、まさかその候補に私の名前が挙がるとは思ってもみなかったのだ。


「大丈夫だ、アデリィ。恐らくススリアという方は、お前以外の誰かを候補にあげたいんだ。そのカモフラージュとして、囮役としてお前たちを呼び寄せたいと思っているのだろう」

「なるほど……それなら、確かにあり得るかも……」


 サビキ王女をこのまま国王にしたい連中は、リイル王女の陣営、私達が強くなろうというのを監視しているはずだ。

 大々的に、候補者を選び出して訓練しようものなら、その者にちょっかいを出して、戦闘が出来ないくらい痛めつける可能性が高い。

 私達はそう思わせないための、ただの囮。「あのススリアという人は、どうやら期待外れだったらしい」と報告させるための、演技をしているのだろう。


「分かりました、父さん。私、一度受けたいと思います」

「うむっ。リイル王女のため、しっかりと行って来るのだぞ」

「はいっ!」


 それなら、立派にお勤めを、囮役を全うしようではないか。

 私はそう思って、次の日、指定されたグラウンドに向かった。




「初めに言っておくと、そこのペンギン族の娘が、後々サビキ王女を倒します。他の方は、それを悟られないよう、訓練に付き合ってください」


 ……あれぇ??

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