第136話 燃えろ! プロレス配信!
「ガンマちゃん、コメントこれからよろしく~。私、今から試合に集中するんで」
(※)ガンマ『りょ~』『ってか、割かしコメントが拾われてる感薄いけど』『試合中に、逐一見てくれる方がどうかと思う』『それな!』『というか、あの赤い膜はいったい……』
ガンマちゃんにコメントをお願いして、私は試合に集中する。
「なっ、なんなんだよ! その赤い膜は! 魔法は使えないんじゃないのかよ!」
「使えてるから、魔法ではないんだよなぁ~。これは」
魔法に関しては、魔法を使ったら反応する神聖術【罰則協定】が反応していない所から見ても、魔法でないことは明らかだろうに。
「あんたのような小さな身体で、私を持ちあげられる訳がないだろう! 魔法なしに!」
「持ち上げられてるんだから、仕方がないでしょ? 単に身体の使い方が上手いだけだよ。どこに力を込めれば、少ない力でもあんたを持ちあげられるか知っている」
(※)『いや、そういうのではないだろww』『限度があるって』『それで防げる限界を超えてるって』『明らかにそれ以上を感じる』『赤い膜の力だろうな』
まぁ、実際、この赤い膜の力である事は言うまでもない。
これは私が使える力の1つで、【オーラ】と呼ばれる魔力の一種だ。肉体などを強化する力に優れており、このオーラを纏う事で、力を高めることが出来る。
魔法使い達は、魔力を使って魔法を使う。逆に言えば、魔法を使うためには"魔力を感知できなければならない"。
オーラもまた、魔力と一緒だ。オーラはこの世界のどこにでもある、そして知覚する事で初めて使えるようになる。
このオーラの力で、私は自分が本来使える力の10倍以上の力を使えるようになっているのだ。
ズルいと言われればそうかもしれんが、魔法を使っている訳ではないから良いだろ?
「ほら、かかって来い。ただ突進したりする事しか、出来ぬわけではないだろう?」
「言ったな、この野郎っ!」
メガロは、分かりやすく顔を真っ赤にして、怒りを露わにする。
彼は自分の口に手を突っ込むと、自身の歯を取り出す。その歯は一本一本ギザギザとした形になっており、メガロはその歯を鱗で研いで武器とした。
「(確かサメは、人間と違って何度でも生え変わる"多生歯性"という特徴があるから、自分の歯を出すという選択をしたのか。まぁ、イカれてるとは思うけど)」
イカれてるというか、サメの魚人族しか出来ぬ芸当だ。
鱗で歯を研ぎ、あっという間に飛び道具を完成させるメガロ。
「鍛冶屋にでもなったら、どうだ? 10歳で、そんなことが出来るのなら、引く手あまただと思うけど?」
---ぴゅーっ!
私の言葉は怒りを買ったのか、メガロは私に向かって出来たばかりの武器を投げつける。
「馬鹿なっ!?」
しかし、その武器は、私の肌に、傷一つ付けることは出来なかった。
オーラは全身を強化するのと同時に、鎧でもある。メガロの放った歯など、今の私にとっては砂粒みたいなモノだ。
「私の歯は、サメの魚人族に伝わる一発逆転の技なのにっ!?」
「こんなのが一発逆転なら、私のは何なのよ。百発逆転てか?」
(※)『100回も?!』『まぁ、100倍っていう意味ではないか?』ガンマ『巨匠は、凄いのです~。1000回やっても、巨匠が勝つでしょう!』『それじゃあ、千発逆転とか?』『そこまで来たら、もう逆転じゃない気がww』『でしょうねぇ~』
まぁ、10歳の子なら、この程度が限界だろう。
今までは子供とは思えない恵まれた体格で、勝つことが多かっただろうし、他に勝つ手段を知っているとは思えない。
「女なのに、こんな強いはずが……まさか、男?」
「おーい、胸は小さいが、私だって女だぞぉ~」
(※)『そうか、『あるけみぃ』は女だった!』『強すぎて男かと』『錬金術で、性別を変えたんじゃなかったっけ?』『あ、それだ!』ガンマ『巨匠は最初から女ですよ!』
まぁ、これで私の勝利は確定しただろう。
さっきの歯が、苦し紛れで撃つ一手、だと思われるし。
「くそぉ……打つ手がない……」
「あぁ、もう手段がないってのは、抵抗する気力なしという感じで良いよね?」
よし、それじゃあさっさと倒しちゃおう。
「それでなんだっけ? 倒して、カウントを唱えさせれば良いんだっけ?」
(※)『早っ』『まぁ、確かにそれしかないわなぁ』『場外に出て、10秒数えたらいいとも聞いたぞ』『あー、そういうルールもあったか』『面白くないから、あんまり決着には使われないけどね』
なるほど、それは良い事を聞いた。
あの大きな少年を倒すのには、かなり手間がかかる。リングの外に出すだけなら、その手間も省けるというモノだ。
「さぁて、少年よ。他に戦う術がないなら、リングの外に出そう」
「おいおい、それは……」「臆病者のする負け方だ」「せめて、倒してやってくれ」「その方が面白い」「その方が恥にならずに済む」
「えー……」
オーラで身を纏っているとはいえ、ザラザラとした鱗だし、触りたくはないんだけれども。
(※)『観客の意見を聞く方が良いよ?』『そうだ、そうだ!』『リングアウトはあまり良くないみたいだしな』『提案しといてなんだが、すまん』『倒すだけ! 倒すだけ!』
----結局、観客と視聴者の意見を採用し、私はメガロを倒して、10カウントを数えて勝利したのであった。
「なんだ、この赤いの……」
そんな中、倒している最中、ずっとメガロが私の赤いオーラを触っていたのであった。




