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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第133話 ガンマちゃん、少年に絡まれた配信

 ガンマちゃんは、映像編集用を軸に作られたゴーレム。

 いつも使っているのは巨匠(ススリア)が撮った映像の加工を専門としているが、それだけではない。

 視界内に映る様々な情報を整理し、見やすい情報になるように管理する事----つまり、外に出てのフィールドワークもまた、彼女の管轄だったのであった。


「まぁ、フィールドワークなんて初体験なのだが」


 海の実地調査をやりつつ、もう家に帰りたいと思うガンマちゃん。

 なにせ面白みの欠片もないからだ。編集作業の方が、やりがいがあると、ガンマちゃんはそう思う。


「(ただ単に、海の水温、海に溶けている塩の量、水深、水深毎の魚の分布----あぁ、なんてつまらない作業。こんな記録なんて、他にゴーレムを作ってやらせれば良いのに)」


 溜め息を吐きつつも、巨匠からの命令は絶対だというゴーレムの性質を守り。

 ガンマちゃんはその場に座り込み、ただの作業と割り切って、黙々と記録を続けていく。


「あぁ、せめて----作業中に映像編集もやらせていただけたらよかったのに……。こんな海の記録なんて、片手間で終わって退屈ですよ」


 早く巨匠が戻ってこないかなと、そんな事を思いながら、ガンマちゃんが作業を続ける。



「おい、そこの女」



 作業を続けて、30分。

 ガンマちゃんに、1人の男が話しかけて来た。


 作業を一旦、中止(ストップ)して、呼びかけて来た男の方を向く。


 男は、巨匠と共に観光しに行ったギジエさんよりも、一回りくらい大きい魚人族の男であった。

 真っ黒な肌、エメラルドグリーンの目、鬼を思わせる相貌----そう、声をかけてきたのは、麦わら帽子を被り、こちらを睨みつける鮫の魚人族であった。


「てめぇ、女だろ? ここは男の、ひいてはこの魚人族一の怪力の持ち主、【メガロ】様の縄張りだ。女は大人しく、家で薪でも入れながら、料理でもしとけ」


 分かりやすいほどの喧嘩口調を、ガンマちゃんは座ったまま「そうはいかないのです」と返す。


「私は女でないのだ」

「はぁ? どう見ても女だろ? その大きなむっ、むむ……」

「……むむっ?」


 顔を真っ赤にしながら、ガンマちゃんの特徴でもある大きな胸を恐る恐る指差そうとしているメガロ。

 その様子を見つつ、「あれ、こいつはもしかして女慣れしてないのだ?」と、ガンマちゃんはそう結論付ける。


 魚人族は獣人族と同じく、大きい者は大きく、小さい者は小さい。

 身体の大きさで、大人なのか子供なのかが判別が難しい種族なのだが、ガンマちゃんはこの顔を真っ赤にしている様子を見て、メガロは子供なのではないかと結論付ける。


 2mを越す、子供----つまりは、ガキ大将かなにかだと。


「あなた、歳はいくつ?」

「聞いて驚くなよ! 今年で、10歳だ!」


 「どうだ、参ったか!」と言わんばかりの態度を取る、メガロ。


「とっ、とにかくだ! ここは男の縄張りだ! 女は帰れ、帰れ!」

「ですから、私は女ではないのだ」

「だーっ、お前は女だって言ってんだろ! 今からここはこのメガロ様と、愉快な子分達が遊ぶの! 邪魔だから引っ込んでろ!」


 言いたい事は言ったとばかりに、頬を膨らませ、鼻から荒く息を吐く鮫の魚人族の少年----メガロ。

 どうやら、この後、この少年は子分達----いや、お友達と一緒に遊ぶみたいである。そして、その遊びには、ここでガンマちゃんが居ると邪魔だから、追い出そうとしているようだ。


 しかしながら、ガンマちゃんだって、海を調査せよと命令を受けている以上、どく訳にはいかなかった。調査には、ここが一番良いポイントだったからだ。

 ガンマちゃんは、自分の首からかけられているプラカードを持って、メガロに説得を試みる。


「私は女ではないのだ。ゴーレム、動く人形なのだ」

「ごーれむ、ってなんだ?」

「簡単に言えば、魔力と呼ばれるモノで動く人形、と思っていただければいいのだ。私は、巨匠から魔力を受け取り、その命令を実行しているだけなのだ」


 「文句があるなら、巨匠に言え」と、メガロに言う。

 そうすると、メガロは「むきーっ!」と、頭から煙を出し、怒りを露わにする。


「訳が分からん! 分かんない事を言うな! ここは海! 海は男のモノ! だから、女は入ってはいけないのだぞ!」

「----そう言われているのだ?」


 これ以上は、調査が出来ないなと感じたガンマちゃんは、よっこいしょと立ち上がる。

 その際に、ガンマちゃんの大きな胸を見て「うおっ」と、分かりやすく声を出したメガロに、少しながら軽蔑の視線をぶつける。胸を見るなら、もう少し上手くやれ、と。


「分かりました。でしたら、私と勝負しましょう」

「勝負だと? そんな、ひょろっこい腕で、俺に、このメガロ様を倒せるとでも?」


 ガンマちゃんはそう言われて、メガロの身体をサッと眺めて計測する。


 身長は、およそ2m20cm。体重は身長にしてはやや軽め、しかしそれでも100kg越え。

 鮫の魚人族だけあって、筋肉はしっかりとついており、歯も鋭そう。

 素手同士という条件であれば、ガンマちゃんの旧式状態とそれなりに良い勝負が出来そうな体格に、ガンマちゃんは結論を出す。


「----倒せないのだ。負けが決定してるのだ」

「おいっ、馬鹿にしてるのか? 勝負を吹っ掛けたのは、お前なんだぞ?」


 確かに、「私と勝負しましょう」と言ったのは、ガンマちゃん当人である。


「馬鹿にはしてないのだ。私は、ただ私は(・・)勝てない(・・・・)と言っただけ」


 そう、初めから、ガンマちゃんは、このメガロという魚人族の少年と戦うつもりはない。



「私をどかしたいのなら、私の巨匠と勝負して勝ったらどいてあげるのだ。

 そう、いま私がここに来るように呼んでいる、女である、私の巨匠に」

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