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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第131話 【海の王国】ようこそ、ウミヅリ王国【観光案内配信】

 ----ウミヅリ王国。そこは三方を海に囲まれた、漁業と水産の国。

 その歴史は古く、一説によれば、とある夫婦が海の守護獣である海竜リヴァイアサンと契約を交わした事によって出来た王国とされている。


 男は、海に出て海産物を捕り。女は、そんな男の冷えた体を温めるべく暖炉に薪をくべる。

 老人は、海の風を読み。子供達は、そんな風に負けずに元気に遊んでいる。

 そうやって生きて来たこの国はいま、絶好のお祭り日和であった。


 ウミヅリ王国の名産品の一つ、『シロウナギ』。

 真っ白な身体を持つ、少しぬめりを帯びた身体を持つこのシロウナギが、いま大漁の時期であったからだ。


 煮て良し、焼いて良し、炙りも最高。

 そんなシロウナギが大量に捕れるこの時期は、街全体が活気に満ちていた。

 シロウナギが、この街で伝説として語られる海竜リヴァイアサンの好物として伝わっているのもあり、この国ではいま、海竜リヴァイアサンを称えるお祭りが開かれていた。


 しかし、いくら大量に捕れるからといって、毎日海に出るような事はない。

 「シロウナギの捕りすぎは良くない」と、「あまり捕りすぎると絶滅する可能性がある」という、数代前の王様からの警告(めいれい)もあり、シロウナギの量は厳しく制限されているから。

 それに、海は気まま。女の気持ちよりも変わりやすく、荒れた日が何日も続く時もある。


 そんな時、海の男達はどうするか?


「いけいけっ!」「そこだ、そこだ!」「やっちまえぇええ!」「お前に賭けてるんだ! まだ負けるんじゃねえぞ!」「そうだ、やるからには思いっきりやれ!」


 ----答えは一つ、酒場に集まるだ。


 真昼間から、堂々と、彼らは海に出れない憂鬱(ストレス)を、酒場で発散する。

 家に居ても奥さんから「鬱陶(うっとう)しい」と文句を言われるだけなら、酒場で気の合う友人達と馬鹿騒ぎするのが、男として正しい判断だと言えよう。




 海の男達は、その多くが屈強な肉体を持つ武人である。

 その身一つで、船を操り、大海原を駆け巡り、魚を捕って来るのだから、相当な体力自慢が多くなるのは当然の事。むしろ、健康的で体力自慢な身体こそ、海の男である証とも言えよう。

 そして、そんな体力自慢達が、朝から酒を掻っ込むくらいで、日々のストレスを全て発散できるはずもなく。


 結果として、街公認で、喧嘩が行われる事になった。

 喧嘩といっても、しっかりとしたルールがある喧嘩だ。


 ----相手を殴る際に、魔法や武器を使用してはならない。

 ----相手が倒れたら、カウントを取り、勝敗を決する。

 ----戦いが終われば、握手。


 そう、それは喧嘩ではない。『プロレス』という、総合格闘技(スポーツ)


「では、選手入場です!」


 コップをマイク代わりにして、酒場店主(レフェリー)の掛け声と共に、選手入場。

 現れたのは、赤い鉢巻を巻いた屈強な若者。普段は海で網を仕掛けて、獲物を捕って来る漁師さん。

 一方、もう1人別の方向から現れたのは、青い鉢巻を巻いた屈強な老紳士。普段は海に向かって餌を投げ込み、一本釣りで魚を捕る釣り人さん。


 普段は海相手に仕事をしている2人は、海が荒れているこの日。

 この酒場で、ぶつかり合う。お互いの拳と、拳をぶつけて。


「おっさん、今日こそ勝たせてもらうぜ!」

「ホッホホホ! そう簡単に行くかのう?」


 自分こそは勝者だと言わんばかりの挑発に、互いにイラっとしたところで、酒場店主が試合の鐘を鳴らした。




 ----試合開始である。




「おらっ!」


 赤い鉢巻を巻いた屈強な若者が、相手の頭に椅子を叩きつける。

 ----椅子は武器ではない、だから問題なし(セーフ)


「なんのっ!」


 青い鉢巻を巻いた屈強な老紳士が、相手の首に腕を巻き付けてそのまま地面へと叩きつける。

 ----相手から倒れた訳ではない、だから試合続行(セーフ)


「やれぇ!」「これ、使え!」「避けろよ、当たったら気絶するぞ」「ギャハハハっ!」


 周囲の観客たちが、「これを使え」とばかりに、2人に物を投げ込む。


 ある者は、痛みを忘れるような強い酒を。

 ある者は、殴ったら相手に強力な一撃を与えられる角材を。

 ある者は、触ったらかぶれてしまうような、漆がたっぷり塗られたチェーンを。

 ある者は、笑いながらパーティー用のクラッカーを引っ張る。


 それぞれが、思い思いに物を投げ込む。

 これを使えよとばかりに、2人の間に物を投げ込み、それを当然のように2人の闘士は使っていた。

 完全な横やり行為であり、角材やチェーンも武器と言えなくもないが、誰もが認めているのだから----戦いは続く。


 互いに互いの誇りをかけた、死なない限りはなんでもアリの、総合格闘技。

 道具で叩きつけても、締め技を使っても、仲間から支援を受けようとも、それで盛り上がればそれで良い。


 それが『プロレス』。それがこのウミヅリ王国の伝統的なスポーツ。

 近くで、数分以内なら死者さえも蘇らすほどの強力な神聖術を使える聖職者を控えさせての、それでもやる、闘争というプロレス。


 ここはウミヅリ王国。

 漁業と海産で発展した、海の王国。


 そして、情熱的なプロレスで盛り上がる、海の王国。

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