第126話 怪盗騒ぎが終わったので、うちへ帰ろう配信
----魔女スタダムは、兵士達によって連行されていった。
怪盗めしどろぼう----もとい、魔女スタダムが生み出した、2つの事件。
1つ目、『食欲がなくなる食べ物』。これに関しては魔女が作り出した飲み薬を飲ませることで解決した。
あの食べ物は、実際には『食欲を無くす』という効果ではなく、『一食で100日分のエネルギーを与える』という食べ物だったらしい。
だから実際には100日も過ぎたら自然と食欲が湧いて来る仕様だったらしいのだが、魔女の特製飲み薬によって強制的に金属として放出する飲み薬らしく、それでこの事件はなんとかなった。
2つ目、宝石や石材などを牛に変えて、襲い掛からせた事件。
あれは魔女スタダムが生み出した人造人形マージ・マンジに搭載してあった機能の1つで、正式名称は『石物質牛変換機能』。その名の通り、石を牛に変えるという機能にのみ制限した機能。
アレイスターに倒してもらった結果、その該当機能装置を発見できたため、機能停止した結果、元に戻ったという感じだろう。
魔女スタダムは2つの事件を起こした、犯人として捕まった。
しかしながら、それほど長い期間、拘束される事はないだろうと思う。
彼女の話にどれほど信憑性があるかは、私には分からない。しかしながら、詳しい調査と裏どりがあれば、彼女の話がどれだけ本当なのかは分かるだろう。
魔女ならば、それだけやってもおかしくはないというのが、私達の認識である。
それこそ、自分の代わりをしてもらうという理由だけで、異世界から人間を転移させるというのも、普通にあり得る話として、みんなそれほど問題視はしなかった。
詳しい取り調べなどは、本職の兵士さんに任せて、私はメキスさんと共に、この王都にやって来た理由である宝石展覧会の方に向かうのであった。
いやぁ~、メキスさんとタラタちゃんの入れ込みっぷりも凄かったが、アレイスターの入れ込みようが物凄くて……引いたね。正直。
ドラゴンが宝石好きなのは有名だったが、その認識が間違っていなかったと再認識したよ。うん。
『マスター・ススリアは、あんまり乗り気ではなかったようですが』
「はい、師匠はそれどころじゃないという印象でした」
「えっ、そう見える?」
と、宝石展覧会を楽しんだ私達は、行きと同じくアレイスターをアースドラゴンに変えて、家へと帰る。
その最中、2人からは私にそう突っ込まれてしまった。しまった、そこまで露骨に見えたか。
「宝石展覧会は凄いと思ったけど、やっぱり魔女スタダムが作った人造人形が気になってしまったんだよ」
人造人形マージ・マンジ。
この人造人形は、アレイスターが破壊したため、実物はほとんど残ってはなかったのだが、それでも残っていた残りと、アレイスターの説明により、その凄さが分かった、
アレイスターは、悪魔の性質を宿した人造人形だと言っていた。
しかし、私の見立ては違う。
-----これは、液体をゴーレム化した代物だ。
金属や土をゴーレムにするのは良くある。そして、水などの液体をゴーレムにしたものもある。
しかし、このマージ・マンジの凄い所は、液体そのものに、私がベータちゃんやアレイスターに行ったのと同じような魔術を付与して、自我を与えている事だ。
「(私は【アルファ・ゴーレムサポートシステム】を使って、受信のみにする事で、ゴーレムの処理速度を向上させている。しかし、このマージ・マンジは液体という不安定な流動体に、システムを書いている)」
例えるなら、液体に文字を書くようなモノ。
当然、字は滲むし、些細な揺れなどで文字は崩れてしまうのが一般的だ。
しかしながら、マージ・マンジはこれで作用している。
アレイスターと戦って、めちゃくちゃ動き回っていたのに、しかも話によれば分裂までして、分裂も普通に動いていたというではないか。
「いったい、どういう文字を書けばそうなるのか、興味があると言えなくもないね」
「師匠、それって凄い事なんでしょうか?」
タラタちゃんは、いまいちピンとは来てないようだ。
そしてアレイスターは、聞くだけ聞いて興味がなかったからか、運転ならぬ移動に集中しているようだ。聞くだけ聞いといて、その態度はないんじゃないだろうか。
「タラタちゃんに分かりやすいように言えば、そうだなぁ……」
「----?」
「刀1本の魔術付与で、1回の魔術付与で切り替え機能付きの全属性付与、修復、身体強化などが出来たって感じかな?」
私の回答でようやく分かってくれたようで、「それは凄すぎじゃないですかっ!」とタラタちゃんは嬉しそうに反応してくれた。
そう、私達が1つの魔術を付与するのに対して、同じスペースで魔女スタダムは100、いや1000近くの魔術を付与することが出来る。これは革命的と言って良い。
問題はそれが、魔術独自の技術なのかどうか。
魔女しか使えない特殊な錬金術でしか再現できないのならば、私が考えても意味がない事だし、出来るのならなにかとっかかりが欲しいとマージ・マンジの残骸を貰って来たという訳だ。
さーて、研究が楽しみだなぁ~。




