第118話 じゃあ、犯人は魔女ってことで配信
----怪盗めしどろぼうの正体は、魔女スタダム。
アレイスターとメキスの2人によってもたらされたその重大情報により、怪盗めしどろぼう対策班に大いなる進歩をもたらした。
なにせ、犯人が分かったのだ。今まで姿形すら分からなかったのに、犯人が特定されたのだから、大いなる進歩をもたらしたと言えよう。
そして、犯人が魔女であるという事も、対策班にとっては朗報であった。
惚れ薬や万能薬など、桁違いの性能を持つ魔道具を作れる魔女。
そんな魔女の有能さに目を付けた人々は、"魔女を探知する魔術"----探査魔術【魔女狩り】を完成させた。
それにより多くの魔女が貴族達の子飼いとなり、探査魔術【魔女狩り】を跳ね返す魔道具を魔女が身につけたりと色々とあったが、それは今はどうでも良い事だろう。
大切なのは、その探査魔術【魔女狩り】を使えば、王都に隠れている魔女スタダムの居場所の見当がある程度つくという事である。
こうして、対策班は2つに分けられた。
1つは、魔女スタダムの狙いがなんなのかを考えるチームで、ススリア達はこのグループに配属された。
もう1つは、探査魔術【魔女狩り】を用いて魔女スタダムを足を使って探すグループ。
こうして、魔女スタダム探しは、物凄い勢いで進んで行ったのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「はぁ~……」
王都の、とある路地裏。
そこで、魔女スタダムは事態の深刻さに頭を悩ませていた。
魔女スタダムを必死に捜索しているのにも関わらず、このような路地裏でのん気に頭を悩ませていられるのは、彼女が魔道具を使って妨害しているからだ。
魔女の発見を遅らせる魔道具、そして空間と空間の間に別の空間を作って隠れる魔道具。
この2つを使う事で、魔女スタダムは発見を遅らせ、このように隠れられていたのである。
しかしながら、この2つの魔道具はあまりにもその効能が強力すぎるからなのか、長時間の使用には向いていない。
連続使用はどちらも1時間程度、そして再び使えるようになるまで半日くらいはかかるだろうと、魔女スタダムはそのように考えていた。
「ううっ、捕まったら許してもらえないだろうな……こういう形で、有名になるつもりじゃなかったのに……」
魔女スタダムは、承認欲求を欲する者である。
他の魔女は静かな生活を望む中、彼女は人々にチヤホヤされて、皆が構ってくれる大スターになる事を望んでいた。
----だからこそ、今回の騒ぎを起こした。
怪盗めしどろぼうという、名前。
一度食べると食欲が消えうせるという、異常性。
宝石展覧会の宝石を牛に変えたのもまた、インパクトという面では非常に役立った。
かくして、怪盗めしどろぼうの名は、王都でも警戒に値する重要人物として危険視された。
あとは、いいタイミングで怪盗めしどろぼうを名乗る実行役を作り出し。
その実行役を倒して、一気に有名人へと駆け上がる。
そういう計画だったのだ。
人はそれを、自作自演とも呼ぶが、それこそが魔女スタダムの完璧なる計画だったのである。
実際の所、もしこの自作自演に近い計画が実行されたとして、魔女スタダムが夢見るような大スターにはならなかっただろう。
いきなり現れた魔女が、怪盗めしどろぼうを捕まえたとしても、あまりにも都合が良すぎて疑うのがヒトという生き物なのだから。
「それなのにぃっ!!」
バンっと、魔女スタダムは壁を叩いて、怒りを表現する。
自分の計画が成功すれば、大スターになれるはずだと思っていた彼女は、それを邪魔されたと本気でそう信じていた。
あの2人のせいで、台無しである。あの2人さえいなければ、自分は大スターになれた。
魔女スタダムは、本気でそう信じていた。
その邪魔したモノこそ、アレイスターとメキスの2人である。
魔女スタダムの計画は、あくまでも有名になるためのモノであり、ヒトを傷つけるつもりのモノではない。
そんな考えを分かってか、まさか民衆を巻き込んでの攻撃を仕掛けてくるとは、思いもしなかった。
あれさえなければ完璧なる計画は、見事に成功したはずなのにと、魔女スタダムは本気で悔しがっていた。
「復讐だ……」
魔女スタダムは、そう口にしていた。
「私の、大スターになるための、完璧なる計画を邪魔してくれた者達! そして、私を犯人として見つけ出そうとしている者達! 全員、まとめてこの私が退治して見せましょう!
そう、ヒトに好かれて大スターになるための計画は諦めます! いまからこの魔女スタダムは、王都を支配下に置いた最強の犯罪者になってみせます! そう、偉大なる犯罪者こそ、このスタダムの道だったのですよ! アーハハハハハッ!」
こうして、魔女スタダムの身勝手な自作自演作戦は、自分勝手な復讐作戦へと移行されるのであった。
-----結論、ただのはた迷惑な魔女の行為だった。
(※)怪盗めしどろぼうによる、魔女スタダム英雄化作戦
魔女スタダムが実行しようとした、ひと際迷惑な作戦。自らが生み出した犯罪者である怪盗めしどろぼうを捕まえ、魔女スタダムを英雄にするための作戦
まず第一段階として、旅人を装って王都近くの村々を巡りつつ、『食欲を無くす食べ物』を広げ、怪盗めしどろぼうの名と犯罪を広げる
そして、ある程度の噂が広まったのを確認し、王都にて怪盗めしどろぼうの名をさらに広める事件として、宝石展覧会にて展示されている宝石を全て牛に変えて、さらに話題性を作る
そうやって話題性が完全に広まり、大罪級の犯罪者として名が広まっていたのを確認して、魔女スタダムが怪盗めしどろぼうを捕まえて、『大罪級犯罪者を捕まえた英雄』として名を上げるという作戦
ちなみに、宝石を牛に変える怪盗めしどろぼうも、『食欲を無くす食べ物』も、全て魔女スタダムが作り出したモノなので、完全なる自作自演である




