第113話 アレイスター「……変身ッス!!」 配信
メキスさんへのお土産もゲットした私は、デルタちゃんと素材回収に出ていたアレイスターを呼び出した。
アレイスターは、私がドラゴンの卵を使って作った魔物ゴーレム。
デルタちゃんと素材回収に出て来たアレイスターを呼び出すと、彼女はぷくーっと大きく息を膨らませて、抗議の意思を示していた。
「まったく! 折角、良い感じに魔物を倒して、このドラゴンゴーレムの力を見せつけていたッスのに、いきなり呼び出されてぷんぷんッス!」
「悪かったって……」
「それでなんの用ッスか?」と、渋々、かなり怒り気味に聞くアレイスターに、用件を告げる。
「実は、今度王都の方に行く用事があって、アレイスターにはその輸送を頼みたいと思っている」
「輸送って、どうすれば……」
「簡単だよ。アレイスター、【モード:アース】起動」
私がそう口にするとともに、アレイスターの身体を真っ白な光が覆う。
「えっ?! なにこれ?!」とアレイスター自身が戸惑っている中、白い光は形を成していき、そして----
『なっ、なんッスか!? これはあああああ!!』
----目の前には、アースドラゴンとなったアレイスターの身体がそこにはあった。
アースドラゴン、それは地面を駆ける大型のドラゴン。
空を飛ばない代わりに、地面を駆けるスピードはドラゴン界随一で、さらに脚力も凄く馬車を10台一気にひきながら1t以上の荷物を運べる、とんでもドラゴンだ。
そんなアースドラゴンの姿に、アレイスターはなっていたのである。
『どうなってるッスか、これ?! うちはカラミティドラゴンの力を持つヒト型ゴーレムであって、地面を駆けるアースドラゴンではなかったはずッスのに……』
「あぁ、そうだよ。君はカラミティドラゴンのままだ」
と、私はそう言って、コンコンっとアースドラゴンの鱗、正確にはゲンエインジウムで投影されて実体化された皮膚を触る。
うん、触っても違和感なし。問題なしっと。
「アレイスター、君はドラゴンでありながら、ゴーレムでもある。そしてゴーレムとは、術者の力によってアップデート可能な魔力生物。
ゲンエインジウムの、幻影を実体化させる能力に目を付けた私は、君に新たな機能を付け加えさせてもらった。その1つがこの、アースドラゴンそっくりの身体を実体化させる、【モード:アース】」
ゲンエインジウムの性質に目を付けた私は、【アルファ・ゴーレムサポートシステム】を通じて、アレイスターの身体にとあるシステムを付けた。
その1つがこの、アースドラゴンそっくりになる【モード:アース】。
幻影を【アルファ・ゴーレムサポートシステム】によって構成、そして維持し続け、それをゲンエインジウムの能力で実体化させることで、疑似的にアースドラゴンそっくりになるという訳だ。
「まぁ、色々と弄って、アースドラゴンそっくりの脚力になるように調整したつもりなんですけどね。一生この姿のままという訳ではないから安心して」
『凄い……本物のドラゴンになったみたいッス……』
本物のドラゴンみたいって……アレイスターは元々ドラゴンでしょうに。
まぁ、言いたい事は分かる。アレイスターが言いたいのはヒト型ではなく、このアースドラゴンのような身体になりたかったという意味で言っているのだろう。
「今後、色々とドラゴンの種類は増やして行くつもり。海に居るシードラゴンとか、天候を操るウェザードラゴンとかね。リクエストがあったらまた聞くよ?」
『お気持ちはありがたいッスけど……』
と、私の言葉に対して、アレイスターは
『もうあの身体に慣れていますし、そんなに増やさなくても良いッス』
と応えてくれた。
「そうですか」
アレイスターをヒト型にしたのは、完全なる私の美学と独断と、自分の技術がどれだけ通じるかという、私個人の意見であった。
アレイスターは最初ドラゴンの姿を望んでいたのに、ヒト型に変えたのは私だったので、ドラゴンの姿になれると知ったらどうなるんだろうという想いもあったのだ。
アレイスターがそう言ってくれるだけでも、私は嬉しい。
『そう言えば、マスター・ススリア? 王都には何しに行く予定ッスか?』
「あぁ、そう言えば話してなかったね。宝石だよ。宝石の展覧会を、タラタちゃんと一緒に見に行く予定」
私がそう言うと、『マジッスか……』とアレイスターが真剣な口調で呟く。
『マジで、宝石を見に行くつもりッスか! 宝石ってアレの事っすよね! あの、綺麗な鉱石の事ッスよね!
クォーツとか、トルマリンとか、ダイヤモンドとか、ベリルとか、コランダムとか、フェルスパーとか、オパールとか、ガーネットとか、トパーズとか、ターコイズとか、ペリドットとかの事ッスよね!
うっひょ! これは楽しみで仕方がないッスよ! 王都の宝石展覧会といえば、ピンクダイヤモンドや、レッドサファイアとか、色々とあるドラゴン大感激のイベントじゃないッスか!』
めちゃくちゃ興奮して、今すぐにでも行きたそうなアレイスターの姿を見て、そう言えばドラゴンは金銀財宝を集めるのが好きな魔物だったなと、私はそう思うのであった。
ともあれ、これで輸送の問題はクリア。
私とタラタちゃんは、アースドラゴンとなったアレイスターと共に、宝石展覧会が開かれている王都に向かうのであった。
----まさか、その王都で、怪盗めしどろぼう対策をしている真っ最中だと、知る由もなく。




