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スローライフ配信をしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです  作者: アッキ@瓶の蓋。


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第112話 彼女の名はメキス。王都に遊びに来てと誘う、ただの錬金術師配信

「私の名はメキス。王都で始まる宝石展覧会に誘う、ただの錬金術師」

「あぁ、メキスさんさんじゃん」


 その日、私は配信でメキスさんに王都へ誘われた。

 メキスさんとは、以前『錬金術師大会』で戦った、セイサ工房で働く錬金術師である。


 兎獣人でありながら、ドラゴンの瞳を持つというちょっと変わった見た目をしているのだが、その実力は確かである。

 決勝戦で戦ったきりだが、彼女の錬金術はめちゃくちゃ熟練されている優秀な錬金術師であったため、『錬金術師大会』の後も交流を続けている。ちなみに、同じく大会に出ていた弟子であるタラタちゃんもまた一緒に交流している。


「こんにちは、ススリアさん。実は宝石展覧会があるんですが、タラタちゃんも一緒にいかがと誘いに来ました」

「うん、さっき自己紹介ついでに言ってたやつだね」


 宝石展覧会かぁ~。この世界の宝石は、あまり知らないんだよね。


 私の錬金術は前世の知識----前世で見たことのある道具を、錬金術を用いて再現している。

 だからこそ、この世界独自のモノについての知識は、知らないことが多い。

 魔物や魔術などは個人的に調べているからけっこう調べているんだけれども、それ以外となるとあやうい部分もある。


 その1つが、宝石である。

 前世においては、ただ綺麗な石というくらいの価値しかなかった宝石は、この世界では、特別な力を持つ鉱石として扱われている。


 ルビーは、火属性。

 サファイアは、水属性。

 エメラルドは、自然属性。

 ダイヤモンドは、光属性。


 ----てな感じに、この世界では魔力属性を含んだ重要なる鉱石として扱われており、錬金術にも多く使われている。


「(色々と見て回るのもアリかもしれないな)」


 気ままな田舎暮らしなはずなのに、何故か私はかなり仕事を頼まれることが多い。

 錬金術師としての仕事だけではなく、何故か道場主なども兼任させられているため、こうして何もない休日というのが珍しいんだよね。


 ……定職につかない、のんびり気ままな生活を送っているはずなのに、なんでなんだろう?


 ともあれ、今は差し迫った納期なんかもないし、王都で宝石展覧会を見に行くのは簡単である。


「よし、それじゃあタラタちゃんと一緒に、その展覧会とやらに行かせてもらう事にするよ」

「分かりました。でしたら、手配はこちらでお任せあれ。私の名はメキス。誘った側の責任として運送業者に連絡する、ただの錬金術師」


 親切に、イスウッドから王都までの運送ルートを確保しようとしてくれるメキスさん。

 うん、実にありがたい。ありがたい事ではあるのだが----


「いや、それはこちらで準備しておくよ」


 私はそう言い、王都には3日後に着くとだけ告げて、メキスさんとの配信を切るのであった。







 配信を切った私は、ベータちゃんにお願いしてタラタちゃん、それとアレイスターを呼ぶことをお願いしておいた。

 その間私は、イスウッドの村まで行って、酒蔵にやって来た。


 酒蔵に入ると、初老に近い馴染みの店主が、私の顔を見て話しかけて来た。


「おや、ススリアさんでねえか? どうした、また樽を置いて行くんか?」

「いや、今日は樽の中身を回収しに来たんです」


 私が訪れた酒蔵は、新興宗教【憧憬の会】関連でお世話になっている酒蔵である。

 私は以前、クラフトビールを作る魔道具【クラフトビール・クラフター】を開発したのだが、前世も、この世界でも、"お酒を用いての製造及び販売の場合、特定の免許を持っていないといけない"という法律が存在する。

 そのため、免許を取るのが面倒という理由で、私はこの酒蔵に許可を得てこの魔道具を置いている訳である。


「いやぁ~、いきなり持ち込まれた時はびっくりしただよ。『管理はこちらでしておくから、管理のために置かせてくれ』なんて、意味が分からんもんなぁ~」

「その節は、どうも失礼を……」


 うん、難しいよね。言い方が悪かった。


 ----この魔道具、勝手にお酒を作ってくれるように作ってあるから、人の手は必要ない。

 ----だけれども、製造免許を持ってないから、場所だけ貸してくれ。


 そういう文言を理解してもらうのに、どれだけかかったものか……。


「まぁ、うちとしてはただ置いておくだけでお金を貰えるから良いんだけども」

「ありがとう、それでは貰って行きますね」


 私はそう言って、番号を押して蛇口を捻り、自分の分のクラフトビールを取り出して、瓶に詰める。


「そのビール、ススリアさんが作ったモノですか?」

「えぇ、配合とかが分からないんで、まぁ、素人ながら頑張って作ったクラフトビール第1号、て感じですかね」


 上手く行っているかどうか、それすらも分からない我がクラフトビール第1号。

 王都でメキスさんと一緒に、話のタネになればいいやと思って持って行くつもりである。


「へぇ~、ちなみに何の果物を入れたんですか?」

「【焦がし桃】を少々」


 私がそう言うと、店主は「またヤバい代物に手を出したなぁ」という。


 焦がし桃は、食べるのが難しいフルーツだ。

 見た目はただのかなり赤っぽい桃なのだが、この焦がし桃は潰すと高温を発するという性質があり、食用よりも主に湯沸かしの一種に使われる。

 味もほとんどないし、食べる人はあまりいないだろう。


「まぁ、ちょっとした実験程度ですよ。ほら、素人なら色々と試さないと」

「あんたが良いなら、良いけどもなぁ~」


 店主はそう言って怪しんでいるが、実は私は大成功だと思っている。



 この焦がし桃、私が入れた理由は麦をロースト、つまり焙煎するためだ。

 焙煎とは、ビールの素となる麦芽に風味をつける行為であり、この焦がし桃を入れれば短時間で、しかも簡単に大量の麦芽に風味をつけることが出来る。

 この焦がし桃、実はなんと、一緒に入れた食材を全て焙煎してくれるという、そんな謎性質を持つフルーツなのだ。異世界すごい。


 焦がし桃1つで、およそ50度上昇。今回はそれを4つ入れて、200度焙煎させた。

 本来なら、焙煎するとアルコールに必要な酵素力が失われてしまうために別の麦芽を入れる必要があるのだが、この焦がし桃の場合、焙煎してもその酵素を一切傷つけないという性質がある事が判明した。

 これで純度100%の焙煎した麦芽による、ビールが誕生した、という訳だ。


 そうして作り上げた私のクラフトビール第1号、その名もシュヴァルツ。

 別名、黒ビールとも呼ばれ、普通のビールよりも甘みのあるさっぱりとした味わいで、のど越しも良いので、飲みやすいことが特徴の美味しいビールである。


「(まぁ、どこまで美味しくなったかは後で試そうっと)」


 私は無事、そのクラフトビール第1号が入った瓶を【アイテムボックス】に入れ、続いてアレイスターの所に向かうのであった。

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