第104話 デルタちゃんの新たなる姿お披露目配信
----数週間後。
道場に設置された簡易式ゴーレム、そのモード1.0に慣れて来た頃。
遂に新たなデルタちゃんが完成したと、道場にススリアがやって来た。
「という訳で、こちらが新しい武闘派ゴーレム! 『武芸特化型アルファ・ゴーレムサポートシステム搭載型ゴーレム・ナンバー大火Δ』、通称【蠍座のデルタちゃん】です!」
----じゃじゃーん!
と、ススリアが掛け声をかけると、彼の背後から、新たな姿へと魔改造されたデルタちゃんが現れる。
「皆様、デルタです。過去の私の身体を活用していただき、ありがとう存じます」
ペコリと頭を下げながら現れたのは、新たな姿となったデルタちゃんであった。
2mを超える長身と、身体の大きさと比べても異様に長い手足。
詰襟タイプの制服----いわゆる、学ランを着た美女である彼女のお尻からは黄金の蠍の尻尾のようなモノが出ており、額には【大火】という文字が刻み込まれていた。
「こちらのデルタちゃんは、私が現在出来る武力の最先端! 額にある【大火】とは、蠍座に属する一等星アンタレスから名付けました!
いやぁ~、【牡牛座】や【射手座】も捨てがたかったけど、今回は蠍で行かせていただきましたよ! アーハハッハハハッ!!」
「ボス、寝てください。徹夜明けのおかしなテンションになってます」
冷静にそう進言するデルタちゃんであったが、ススリアはおかしなテンションでさらに笑い続ける。
「大丈夫! 大丈夫っ! 私が作ったハッスルポーションは、一度飲めば24時間戦える超ハイパーポーションだからね! ガーハハハハッ!」
「あのポーションはその後、力尽きて20時間ほど倒れてしまう代物だったはずです。寝てください。ここは私が対応しますので」
パチンっと、デルタちゃんが指を鳴らすと共に、スッと現れたベータちゃんがススリアを回収して行った。
「----ボスが失礼しました。お詫びします」
ペコリと、デルタちゃんは頭を下げる。
そして、学ランのポケットから、剣を2本取り出していた。どうやらあのポケットは、【アイテムボックス】になっているようである。
「こちら、我らがボスが本日訪れた用向き----風属性の付与を施した剣と、火属性の付与を施した剣になります」
デルタちゃんはそう言うと、サッと、この場で一番偉い人物として入力されているダンパン部隊長の前に移動。
移動するや否や、その2本の剣をそっと差し出して来た。
「この2本、私の前の身体----失礼、簡易式ゴーレムに装着することにより、2つのモードが実装されます。
1本目の風属性の剣を装着した際は、新モード【ダンス】が可能となります。このモードでは、まさしくダンスを踊るかのように、相手に攻撃するモードです。このモード中では、多くの兵士と戦う事を想定しております。
2本目の火属性の剣を装着した際は、新モード【ブレイク】が可能となります。このモードでは、1人ずつ倒すことを想定した、各個撃破を基準とするモードです。このモード中では、少人数の兵士と戦う事を想定しております」
それは、今までこの簡易式ゴーレムになかったものだ。
簡易式ゴーレムは今まで、剣を使うか使わないかで強さが変わっていた。
もっといえば、それくらいしか強さの調整が出来なかったのである。
しかし、今後は「集団戦での戦い方」、もしくは「少人数チーム、あるいは個人での戦い方」という実戦が出来るようになったのだ。
たかが2つモードが追加されただけと侮るなかれ、これは訓練の幅が大いに広がったと言わざるを得ない。
「我がボスが、徹夜のテンションで作り上げた贈り物でございます。戦闘訓練に役立てて欲しいとのことで、お代は必要としていない形です」
「それは、それは……ありがとうございます」
「いえ、私はボスの代わりを務めただけですので。詳しい説明は、こちらの紙に説明書として載っていますので。それでは」
用事は済ませた、そう言わんばかりにデルタちゃんが帰ろうとする。
「----失礼、そちらの方はどうすればよろしいのでしょうか?」
そんな帰ろうとするデルタちゃんの前に、4人の兵士が立ち塞がる。
全員、歴戦の兵士らしく、鎧や剣から確かな傷跡がつけられており、デルタちゃんは素直にどうすればどいてくれるかと聞いていた。
「我らシュンカトウ共和国騎士団四天王」
「いざ、デルタ殿と勝負願いたい」
「どうか、頼む。ちゃんと報酬として、素材回収も手伝おう」
「自分達の実力を試したいのだ」
その4人は、自称シュンカトウ共和国騎士団の四天王。
ただアホがそう名乗っているという訳ではなく、確かにあの4人はそう名乗るだけの実力があり、実際4人がかりではあるが、簡易式ゴーレムのモード6.0に勝利できるほどの実力者である。
「……素材回収を手伝ってくれるなら、戦っても構いません」
デルタちゃんはそう言い、4人に移動を提案する。
「----ダンパン部隊長様。この4人、私と戦うために、グラウンドをお借りしたく存じ上げます」
しごく丁寧に頭を下げて頼むデルタちゃんに、ダンパン部隊長はどうなるのかと、ほんの少しだけ楽しみであった。




