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プリンセスは殺し屋  作者: じゃがマヨ
殺し屋稼業
75/100

第75話



 音が、——凹む。



 不意にそう感じてしまった。


 鼓膜が押し上げられるような。


 腹の底を、強く押さえられるような



 ドッ



 物体が表出する。


 色が弾ける。


 夥しいほどの空気の変遷が目の前を泳いだ後、土埃が宙に舞った。


 空気は重く、脆い。


 振動する「揺れ」が、直に皮膚に触れていった。


 それは爆発音にも似た振動だった。


 床に寝そべっていたはずのヤンキー野郎の体から、得体の知れない“物質“が隆起したんだ。


 腕や足は変形し、不自然な挙動がバタバタと全身に及んでいく。


 人間の動きじゃないことは確かだった。


 外側から力を加えなければできないような動きが、短い間隔の中で次々と起こった。


 髪は抜け落ちていった。


 皮膚は爛れ、みるみるうちに萎れていく。


 まるで、生気を吸い取られていくような“変化”だった。


 遠目からでもわかるほどの“蠢き”が、体の内部で暴れ回っているような…



 「あれは、悪魔本来の姿です。この場所では常時その「力」を解放できる。気を抜くと死にますよ?」



 ヤンキー野郎の肉体は消失し、服もろとも空間に融けていく。


 殻を破るように出てきた“怪物”は、黒い鎧のようなゴツゴツした皮膚を全身に浮き上がらせながら、巨大な二の腕を露わにさせた。


 見るからに肥沃な筋肉と、膨張する血管。


 手や足の先からは爪が生え、背中からは「翼」が。


 …ただ、その見た目は翼と呼ぶにはあまりにも“巨き“かった。


 ”でかい“って言うんじゃない。


 ぶ厚い…?


 羽は生えておらず、「鉱石」っぽいデコボコした物質が、翼の外側に散りばめられていた。


 「鱗」のようにも見えた。


 ただ、だとしても“ゴツ”すぎる。


 まるで背中から何本ものツノが伸びてきているみたいだった。


 「飛ぶ」という動作には適していないように見えた。


 だけど…



 その“怪物”は宙に浮きながら、空間を揺らすほどの咆哮を出してみせた。


 ビリビリと響く重低音。


 青白く光る瞳。


 全身は骨が露出したように所々が尖っている。


 禍々しいオーラが全身から漂い、牙を覗かせる口元からは蒼い煙が。



 なんであんなもんが口から…?



 どっからどう見てもバケモンだ


 何がどうなったら…、こんな…

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