表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プリンセスは殺し屋  作者: じゃがマヨ
世界最強になるために
56/100

第56話



 「オラァッ!」



 固めた拳を握りしめたまま、上半身をひねる。


 床と足が擦れる。


 膨張する筋肉。


 揺れる靴紐。



 拳はさくらの顔面を目掛けて放たれていた。


 容赦はなかった。


 体全身を使ったフルパワーの一撃だ。


 躍動する肩甲骨が、服の下に浮かび上がっていた。


 左足は前に踏み出されている。


 その支点を中心に体が回転する。


 寸分の躊躇いもない「動作」がそこにはあった。


 “溜“だ。


 それが、動作の内側に連動していた。



 ドンッ



 ヤンキー野郎の拳がぶつかる。


 その衝撃音が耳のそばを掠める。


 風圧が髪を揺らした。



 …さくらッ!



 声よりも先に、視線が動いた。


 無事なわけがないと思った。


 対峙していた俺にはわかってたんだ。


 ヤンキー野郎が何者であれ、ただのチンピラじゃないことは明らかだった。


 だから——



 「どうした?」



 硬直した視線。


 咄嗟に動いた意識の先端で、静止する時間。


 景色の一端は、止まった視線の先に“よろめいていた“。


 実体としての「線」が滲んでいた。


 わからなかったんだ。


 何が起こったのかが。


 認識が追いつかなかったわけじゃない。


 想定外のことが起きた。


 感覚としては、それに近かった。



 「拳」は当たったはずだった。



 にもかかわらず、彼女は何事もなかったかのようにそこに立っていた。


 さくらの体の表面、——その十数センチ手前で、拳は止まっていた。


 奇妙だった。


 ヤンキー野郎の腕は伸びきっていた。


 伸びきり、接触していた。


 それは間違いなかった。


 ただ、“届いていなかった”


 “接触していたにもかかわらず”、だ


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ