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太陽の少女
僕が今、生きているこの世界に異常はない。
でも、どこか変だった。
僕が今、生きているこの世界はどこかぼんやりとしていた。
僕が今、生きているこの世界は生き生きとしていない。
しかし、ひとつだけはっきりしていることがある。
それは記憶の中にとある少女が存在していることだ。
それはデジャヴのようなものではない。
僕はその少女と触れ合ったこと、触れ合ったときに感じた温もりを憶えている。
僕はその少女に会ったことはない。
僕は覚えている、少女の笑顔を。
少女はいつも笑っていた。
僕は覚えている、少女と過ごした日々を。
活発な少女は僕と一緒に元気よく駆け回り、はつらつと健康的な汗をかいていた。
僕はその少女の匂いを憶えている。
太陽の匂いを。