五話
俺がこの世に誕生してから
俺は前世の知識と、生まれながら獲得している、成人男性並に使える脳味噌を使って可能な限りやれることを尽くした。
この世界の言語だが
発音は日本語と同じで胎内にいる時からも周りの言葉はすぐに理解出来たので非常に助かった。なのに文字だけはよくわからない形をしていた。
カタカナ……かな?まぁそのうち覚えるやろ、知らんけど。
赤子の状態で出来ることなど、たかが知れているし
何か出来ることは無いかと母の乳にしゃぶり付きながら胎内にいた時に使っていた外の様子を確認出来るスキルを発動させてみた。
どうやらこれは自分を軸にして、一定の高さから周囲を覗き見れるスキルらしく、見ている範囲内の一部に意識を集中させるとその部分をズームアップしてみる事ができ、音も拾う事ができる便利スキルだった。
建物の壁を越えたところも確認する事ができ、外で魔法の訓練をしている兄達の様子を覗き見する事が出来たのでここで魔法の発動方法を盗聴する。
どうやら呪文などによる発動ではなく
大事なのはイメージを具現化して、そのイメージに見合った魔力を消費して発現するらしい。
この時発動出来るのは適性がある属性魔法のみ
魔法の属性は、火、風、水、土の四元素と
レア属性として光と闇がある。
次男の兄は火、風、水と光に適性があったらしく
普通は多くても2属性。そこは更にレア属性の光まで持っているもんだから随分と珍しい存在らしい。
ついでにスキルに関して言うと
同じスキルでもランクが存在して、初級や中級など
本人の熟練度?のような物でスキル自体も成長をする。
長男が獲得した『剣鬼』のスキルは文字通り
剣術に対する能力が抜群に上がるスキルっぽくて
熟練度の上昇も、とりあえず剣持って戦っていればそのうち上がるみたいだし、長男は8歳にして父の部下の大人の兵との打ち合いは既に負けなしらしい。
スキルも中級まで上がっているっぽいし
兄さん達強すぎん?俺、これいらない子になるんじゃ無いの?
とは言え泣き言も言ってられん。
今の俺に出来ることを積み上げておかねば、神様の約束も果たせないしな……
そう言えば聞き忘れてたけど、この人生失敗したらどうなんの俺?
今度こそ消滅になんのかね…
……それだけはご勘弁だな。
既に生まれてこなければ良かった子扱いはされているが
何とか鍛え上げて、優秀な子認定されて、この家を相続する存在にならねば話にならんな。
とりあえずこの『なんか視界の範囲が広がるスキル』を成長させて、後は魔力を鍛えまくるか。
魔力は魔力切れまで使い切ると
その後完全回復した時に全体量が増えるらしい(盗み聞き)
とりあえず魔力切れを起こすために
俺が使える魔法の属性を探さねば。
とりあえず火魔法からかな?
部屋から人がいなくなってから俺は火の玉イメージして自分の目の前に出現するように念じてみる。
……何も起こらん。
果たしてこれが正しい魔法の発動のさせ方かもわからんし、適性がないから発動しないのかもわかんねぇな。
と言うか、いくら俺に興味無いからって
1日の大半をゆりかごみたいな奴に入れて部屋に放置は酷くない?
我、生後3日よ?
母上は母乳タイムの時しか来ないし、って言うかそれ以外の時は別なところで監視されてるっぽいのよなぁ…
瞳孔開いたまま表情もなんか壊れてるし。
俺の顔見るたび
「この子が良いスキル持ちだったら、あの人もまた…」
って小さい声で呟いてるし
母からすれば
俺は父と繋がりを持てる最後の手段って訳だもんなぁ
自分の子でさえ愛した男との繋がりとしてしか価値が無いんだろうよ。
まぁおかげで魔法の練習を早いうちからバレずに出来るから良いんだけどさ、なんか生まれて来たのに愛されてないって早々に理解しちゃうのは思いの外辛い…
ってか辛すぎ
あ、やばい、涙出てきた。
っ!いかん!泣き声まで出てきてしまった
あ、使用人が来ちゃった。
一応あやしてくれるのね、ありがとう使用人のお姉さん!
俺を大切に扱ってくれるのは貴女だけだ!
え、何その哀れむような顔。
母親の愛情を貰えなくてかわいそうにとか言わないで。
涙止まんないから