四十五話 今日も、教官は平常運転です
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
ドン!ドン!ドゴォン!!
ぐぬぬ、全然『調教』された事にならない……
現在俺は未踏の地にて魔物相手に素手の戦闘を仕掛けている。
ジャックの真似をして風魔法を体に纏って『身体強化』と『観察眼』を使い、聖魔法を込めた拳をガンガン叩き込んでいる。
おかしいね。ハクの時は切った端から回復させて
それで調教判定されていたはずなのに、何故決まらない。
これで現在五頭目である。
馬型の魔物見つけたからスッゴイテンション上がって調教チャレンジしているのだが……。どいつもこいつも最終的に気絶して、俺に服従しない……。
なんかビビられてるのよね。
だがしかし、鞭の拳と、飴の聖魔法しか知らんからやり続けるしかないか……。
ドゴォン!ドゴォン!
…………うーん、この。
こいつも気絶しちゃったな……
どうしたもんか。
《 緑馬 身体強化と風魔法を操る魔物。生息域はある程度固まっている 》
今回は珍しく、能力まで教えてくれた教官も調教に関してはダンマリだ。
女神様に受けた仕打ちを思い出して、辛い思いをしているのかもしれないな。
しょうがない、一人でなんとか考えるか。
とりあえずこいつらは気絶したまま置いておこう。
逃げられても面倒だし、拘束して、鉄の壁で囲って保護しておくか。
これは立派な保護だから、愛護団体もこれにはニッコリだろ。
……どうすっかな。
今の戦いのせいか、近くにいた魔物の気配がなくなっておる。
そりゃあちっさい人間に馬が一方的にボコボコにされてたら逃げるか(名推理)
もう少し奥に行ってみるか?
『視野拡大』を使って俺は上空から新しい魔物を探しに行った。
◆
……なんか、見たことあるな、あの感じ。
魔境の方向に以前見た光景が広がっている。
禍々しいオーラが立ち上っている。
あれは……ハクの時と同じか?
いや、あの時よりすごいな……。
行ってみるしかないか。
気づかれてて後から追われても困る
出向いてやるか。
そして、禍々しいオーラの発生源へと俺は降り立ったーー。
◆
馬…だよな。
そこに居たのは以前、黒鹿と化していたハクと同じくらいの大きさの黒馬だった。
違うと言えば翼が生えていて角が生えている事くらいか。また角ありか、壊れるなぁ…。
だが、その存在感は黒鹿よりも圧倒的だった。
紅い雷がバチバチと体から漏れている。
こうなった魔物は基本雷を宿すって決まってるのかね。
しかしこれは前回よりヤバいんじゃないか?
《 黒翼馬ですね。馬系の魔物に悪霊が集結したようです。ここまでのモノは記録にもございません 》
記録にもないのかよ。
まぁこんなもんポンポン生まれてたら人類とっくに終わってるか。
《 正直、前回と違って今回は完全に未知数です。翼の生えた馬自体が存在しませんから、警戒して臨んでください。必要とあれば私の霊力も譲渡します 》
教官が霊力を渡す事に躊躇いがない。
今回はそれだけヤバい相手だって事か。
ん?いやちょっと待て
「おい!翼の生えた馬って存在しないのかよ!? あたかもいるかのように黒翼馬って言ったじゃないか!」
つい言葉に出てしまった。
《 存在しません。なので今命名しました 》
なんなのこの守護霊……