四十四話 魔物専属調教員 1
「あっ、そうだ」
「唐突にどうしたんだ?」
「俺、ちょっと森に行ってくるわ」
「急にどうしたの? 修行でもしてくるの?」
「お前らみたいな戦鬪狂と一緒にしないでくれ。街に野菜を運ぶ手段の事なんだが、ハク1匹にずっと引かせるのは限界が来るだろ。だから新しい魔物を探しに行くわ」
「そう言えば気にした事無かったけど、ハクも元々魔物なのよね? どうして言う事を聞いてくれてるの?」
そう言えば説明してなかったな。
よくもまぁ疑問に思わず順応したもんだ。まぁそれ以上に非常識な事が多いしそんなもんか。
「俺は『調教員』ってスキルを持ってる。それを使えば魔物を従える事が出来るんだよ」
「なんか嫌な響きだな」
3人に微妙な顔をされた。そりゃあそうでしょう。俺だってこんなスキル名嫌です。
「だからちょっと調教してくるから、適当にしててくれ」
「じゃあ常識的な範囲で運搬用の馬車みたいなの作っておこうか?」
ん?
「ソフィ? そんな事が出来るのかい?」
「植物魔法で作っておくよ? あんまり精密な作りは難しいだろうけど、運搬用くらいだったら大丈夫だよ!」
なんで?
ソフィって火と闇、それから土を授かっただけだろ?
水魔法が無いから植物は無理なんじゃないのか?
「教官から水と風魔法も貰ったから使えるよ?」
また教官か、壊れるなぁ……(パワーバランス)
と言うか、余ってるのって土魔法だけじゃ無かったのかよ!完全に騙されたじゃなイカ!
《 土以外が余ってないとは言ってません 》
なんだよ、後出しばかりじゃないか……。
どうやら、3人とも火、風、水、土は使えるようになっているらしく、みんなもう複合魔法を使えるようだ。
この間ナナがもう少しで氷魔法が完璧になるとか言ってたけど、自分の中で納得していないだけで普通に使えていた。
ホントもう俺の存在価値グングン低下中だな。
これからはこいつらが持ってないスキルだけで生きていこう。
3人に留守を預けて俺は森の中へ入っていく。
◆
久しぶりに単独行動だな。
アイツらが来てからそんなに経ってないんだが
一緒にいるのが当たり前みたいに感じてる
《 私は存在に含まない…と? 》
いや、だってアナタ守護霊じゃん。
いるとかいないとかのレベルじゃないじゃん!
全く、知らん間に地雷を踏み抜いたりするから大変だな、うちの守護霊は。
しかしどうしようかな。
行った事がある範囲だと緑狼か緑猪くらいしかいないしな……
狼と猪を運搬用に使うのもなぁ……。
猪はアリかもしれんけど、肉が旨いから調教すると愛着が湧いて食べられなくなるかもしれん。
俺は愛の専属調教員だからな。
ちょっと行った事のない方へ行こうかな……。
自分の力がどの程度通用するかもイマイチ分かってないし、折角の機会だから行ってみるか。
そして森の奥深くへと進行していったのだ。