四十三話 参りました!教官殿
《 以前、スキルを回収した際に、土魔法だけが大量に余りましたので、彼らに譲渡しました 》
本当に、なんでこの霊は俺に何も言ってくれないの?
魔法が余るってなんだよ! 聞いた事ないぞ!
《 今初めて言いましたので 》
そういう事言ってるんじゃないんだが。
《 魔法適性を回収した際にどうしても被る属性分が余りましたので。廃棄するくらいならと 》
廃棄できる事にも驚きなんだが、どうしてそんな簡単に譲渡出来るんだよ!
《 私ですから 》
論破されました。
ついに説明すらしてくれなくなりました。
長く連れ添った夫婦ってこうなるんだろうね、結婚は地獄だな。
《 ……っ///。 守護霊間の繋がりが出来ていましたから、多少の譲渡は可能です。進化しすぎたスキル以外は彼等にも譲渡出来ます 》
……? なんか今までに無い反応だったな??
どうしたんだ教官?
……まぁ、説明してくれたから良しとしよう。
その説明だとスキルも渡せるんだよな?
じゃあ経験値で吸収されたスキルも、実は経験値分を抜き出して渡せたりするのか?
《 可能です。そこに関しては貴方も関わってくる話でしたから手を出してはいませんが。思考に応用が効くようになりましたね。流石です 》
???
なんだ急に褒めだして?
教官殿にしては珍しい、と言うか逆に怖いんだが。
気にしてもしょうがないか、どうせ手玉に取られるんだ。こいつには一生逆らえない、いいね?
◆
「秒で終わったな」
「んー?何言ってるの? 3時間はかかったよ?」
「いや、そう言う事じゃなくて本来かかる時間よりも圧倒的に早く終わった時とかに使う例えのようなものでだな……」
「知ってるよー?」
「なんでソフィまで俺を翻弄するの? 誰に教えてもらった、おじさん悲しいよ」
絶対教官じゃん。悪影響ばかりじゃないか!
だが四人がかりでやった整地は、実際、早い。
もう街が見えているのだ。
俺のアイデンティティなんて無かったね。
完全に教官のワンサイドゲームでしたね。
なんかもう俺無しでも大丈夫な気がしてきたな。
ナナは複合魔法覚えちゃったみたいだし
これはもうジャックもソフィもさっさと使えるようになるだろ(投げやり)
そうなると俺のアイデンティティって
大量に持ってるスキルだけになるんだが……
ん?待てよ、みんなに分配出来るって事は
今の俺ってスキル保管庫じゃないか、あのさぁ…。
《 貴方には聖魔法も私もいます。自分の『価値』を忘れて、役割を放棄しないように 》
慰められてるのかよく分からん言葉を投げられました。最後のは命令だし。
「みんな、ここまで来たら後は一瞬だ。今日は一旦村に帰って、明日から慎重に街へ乗り出す。ここまでありがとう」
「いや、気にするな。これは俺たちにとっても必要になる事だろ? 流石に村で自給自足するだけじゃ限界もありそうだからな。それに何かあった時に「貨幣」以上に役立つものは無い」
「そうね。今なら私達が交渉のテーブルについてもいいかもしれないわね。過去の私達には何も無かったけれど、今の私達は存在と価値を証明する『手段』を手に入れたもの」
「そうだね。お兄ちゃんとお姉ちゃんの言う通りだよ。金は命より重い。運命に翻弄されてきた私達だけど今は抗うことが出来る。だから私たちも一緒に街に入るからね? レイダーばかりに頼ってはいられないもの」
…………なんか精神年齢変わってない?
こんな難しい事言う子じゃなかったじゃない!
歳不相応にも程があるぞ! いや頼もしいからいいけど!
《 私が『調教』しました 》
やっぱり教官には敵いません
教官殿の元の魂の事情もあるので
たまにそれを匂わせる反応が出てきますのでご了承を。
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