四十二話 教官の力
いやぁ、ホント。なんなのこいつら?
スキルをしっかり使えてたら絶対三人でも生きていけたじゃないか(困惑)
……まぁ、才能があっても産まれた環境で人生が決まる。
結局この世界も同じなんだな。
人は産まれた瞬間にその人生が決まってしまう。
両親や、産まれた国や地域、学校の同級生達
結局、外的要因がその人の人生を全て決定してしまう。
もしかしたら、この3人も女神様が引き合わせてくれたのかもな……
《 女神様の影響はありません 》
ほんとなんなの?この守護霊……
◆
「じゃあ、もう訓練はおしまいだ」
絶対もう大丈夫だろ。
周辺の森にいる魔物は最早敵ではない。
多分一人で壊滅出来るほどだ。
なんか魔力量も俺と変わらないし、才能って怖いね。オラが回収してやっと辿り着いた領域に踏み込むなんて理不尽なんだゾ。
「もうやめるのか? まだ数日しかやってないじゃないか」
「そうよ、もう少しで氷魔法も完璧になるのに」
「わたしも……そろそろ『竜化』を試したいと思って……」
「いや、もう絶対大丈夫だから……。とりあえず整地していこうゾ。これじゃあいつまで経っても完成しないだろ」
いやホントなんなのこいつら?強くなるのが嬉しいのは分かるけど、本来の目的は取れすぎた野菜を出荷することだろ!いい加減にしろ!(憤慨)
「じゃあとりあえず役割分担しようか。ここからしばらくは森が続いているから、森林伐採して、木を村に運びだしてくれ。道は俺が土魔法で作るから」
「わかった。じゃあ俺は風魔法で伐採していこう」
「じゃあ私とソフィで木を運んで行ったらいいの?」
「そうだな。ソフィは『身体強化』と『飛行』を使えば問題なく運べるだろ? ナナはハクと一緒に運んでもらえるか? ハクの運搬用にデカイ馬車みたいなの作ってあるからそれで頼む」
「水魔法で運んでいいかしら?」
えっ?そんなこと出来るの?
「水の中に入れて水ごと浮かせて運ぶから」
「別に構わないけど、それだと木が水を含みすぎないか?」
「後で水分だけ抜き取るから。それでもいい?」
えっ?? 水魔法ってそんな使い方できるの!?
《 以前、液体系の操作が可能と説明したはずですが? 》
誰が植物の中まで干渉できると思うんだよ!
思いつくわけないだろ!!
《 ナナは一人で理解していましたが? 》
すいません。調子乗ってました。
ちょっと待て、それって生物にも出来るのか??
それって生きたまま血を抜き出したり、逆流させられるって事に……
《 流石にそれは不可能です。生命活動を停止しているか、植物であれば土から摂食を断たなければ出来ません 》
流石にそうだよな……。じゃないと水魔法を極めるだけで即死ゲーじゃないか。
《 魔力量に膨大な差があれば可能になりますが 》
……訓練辞めといてよかった。
ナナには後で生物には使わないようにきつく言っておかなければ(使命感)
《 既に伝えてあります 》
この3人にだけ優しすぎやしませんかね。
◆
それからはあっという間だった。
ジャックの風魔法は一振りで数十本の木々を切り倒し
ナナの水魔法も一度に何十本も運んでいたし
ソフィは木を担いだまま恐ろしいスピードで往復していた。
そしてハクの馬力も恐ろしかった。
その小さな身体のどこにそんな力があるかわからないが、10トントラックを思わせる大きさの馬車を引いて運んでいる。どういう事なの……
最初はもっともっと小さかったのに
ハクがもっともっとと大きいのを望んだから
どんどん大きくして行ったんだけどドン引きだよ。
さりげなく風魔法で加速してるし、なんでお前も使えるんだよ。
その日は森がエリアの7割くらいまで作業を進めて
次の日に残りを進んで行ったのだが
「うーん。ここからは土魔法でやらないとダメだな」
ここから先はほぼ岩と土しかない。
相当な距離があるのだが、しょうがないね。
「ここから先は俺がやるから、みんなは村に戻って休んでていいゾ、ここを抜けたらまた呼びに行くから」
ここからは俺のワンサイドゲーム。
土魔法はこのメンバーでは俺だけのアイデンティティ。
優越感に浸れる。やったねたえちゃん!
「いや、俺たちも手伝うぞ?」
「そうよ、いくらレイダーでもこの距離は大変でしょ?」
「わたしたちも手伝うよ?」
くぅっ! そんな優しい事言ってくれるのか……
産まれてこの方、人に優しくされた事なんて無いからな……。
「ありがとうみんな!でもここからは『土魔法』じゃないとどうしようもないし、俺に任せて!(得意げ」
「いや、だから俺たちも手伝うって」
「? いや、『土魔法』じゃないと無理なんだぞ?」
「だから『土魔法』で手伝うよ」
ん?
「え?使えるの?? 3人とも適性なかっただろ?」
「いや使えるようになったぞ?」
いや、ちょっと待て。
いくら天才でもやり過ぎだろ。
「私も使えるわよ」
「わたしも大丈夫だよ?」
「ちょっと待て! 魔法って生まれた時の適性魔法しか使えないんだぞ!? なんで使えるんだよ!?」
「「「教官に頂いたから」」」
なんで教官そんな事出来るんすか?……