四十一話 若き才能
三人の潜在能力が高すぎて絶望しているとーー。
「なぁ?何が書いてあるんだ? 俺たち字が読めなくてわからないんだよ……」
え?
みんな読めないの?
《 プレートはこの世界の文字で書かれていますから、教育を受けていなければ読めないかと 》
そういう事か。差別の対象にわざわざ読み書きなんて普通は教えないよな……。
うーん、この……。
正直に伝えるべきか?
ジャックとナナは良いけど、ソフィは……危険かもしれないな。
「うわっ!?なんだ!? 目の前になんか写って……」
「誰!?誰の声なの!?」
「えっ!? ……レイダーの…。ッ!はい!わかりました!」
「え?ちょっとみんなどうした? わけがわからないよ……」
三人が驚き慌てたと思ったら、直ぐに落ち着きを取り戻し、ぶつぶつと独り言を始めた。
《 私が説明しておきました 》
ナンデ!?
教官殿は俺の守護霊だろ!?
なんでそんな事できんの!?
《 彼等は私たちが供養した霊体の子孫です。守護霊同士の繋がりができていますので干渉する事ができました 》
じゃあ、あの街の住人があの村を作ったってことか?
こんな所で繋がりが生まれるとは思ってもいなかった。
《 スキルの説明も、魔法の使用方法、魔力操作なども私からしておきます 》
……あっ、はい。お願いします。
《 貴方の『魔力譲渡』を用いて魔力の回復だけしてください。実を食べさせるよりは効率が良いので 》
そういえばありましたね、そんなスキル。
《 足りない魔力は霊力で補いますのでその都度私から譲渡します 》
アッ、ハイ。俺にはハクとの戦い以外では全然霊力くれなかったのに、子供には甘いんですね……。
《 必要ないでしょう? ご自分の魔力量のデタラメさをもう少し自覚しては? 彼等の魔力量増加もご自身で言い出したことなのですから、私が協力して感謝はされても文句を言われる筋合いは無いのですが? 》
えっ、めちゃくちゃ怒られてんじゃん……。
そうして俺は気絶して倒れるまで魔力を使った三人に魔力を譲渡して起こしてあげるだけの簡単なお仕事を強いられました。
かなしいなぁ……。
◆
そして今に至るのだが……。
ちなみに現在は森の中で魔物と戦いながら魔力操作、魔法の訓練も兼ねている。
まぁ俺はほぼ何もしていないんだが……。
おかしい、本来なら俺が教えて教官となる筈だったのに。
教官が教官になっていらっしゃる。
一体彼等は何を教えてもらっているのか、俺には聞こえないからわからないけど、既に化け物じみている。
「三速!!」
掛け声と共にジャックの速度が上昇し、瞬く間に緑狼を四体仕留めた。
的確に急所を射抜いており、普通に見ていたらすれ違ったとしか思えないだろう。
彼の『身体強化』は『鬼人化』へと進化しているらしい。
五段階に分かれた身体強化で、一速、二速と上げていくごとに強化のレベルも上がるが、体への負担も増えていく。
それを三速までノーリスクで出来る様になったんだ。数日とは思えない。
風魔法もしっかり使いこなしており、風を体に纏って、格行動の加速にも用いているし、風の刃を飛ばしたり、ちょっとした竜巻も生み出せている。
正直超カッコいいんだが……。教官、一体どんな魔法を使ったんだ?
「ハアァッッ!!!」
今度はナナが自分の周囲に水滴を展開させて
それを風魔法で加速させ複数の緑狼を一度に打ち抜いた。
完全に貫通してる……、地面あなまみれじゃん。
一発も外して無いね、乱れ打ちに見えるけど全て正確に打ち抜いてる。
一応、打ち出す際に手を振っていたのだが、あれで『投げた』事になるの?スキルの発動条件ガバガバじゃなイカ。
「あはははは!!」
ソフィが笑いながら空中を飛び回り
緑狼を一体ずつ急降下して炎を纏った拳で潰していった。
ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォォォンンンン!!!
もうやだこの子、完全に別人じゃん。
『硬質化』のお陰で、相当な速度で突っ込んで行っているのに無傷である。
あの豹変ぶりは『闘争本能』のせいだろう。そうだよね?
目がやばいんだよね、ナタ持って振り回したら似合いそう。
教官曰く、『竜化』は使用可能だがまだ制御が出来ないらしいので使っていないがもう無しでいいんじゃないかな。
もうなんか嫌だ。我こんなバーサーカー共と生活したいんじゃないの。
こんな奴ら他の街に連れていけないじゃん。
「「「教官!!本日もありがとうございました!!!」」」
あ、終わったみたいだ。
彼等の場合俺みたいに頭で話しかけたりとかは出来ないそうだ。出来るのは教官から一方的に伝えることだけ。
だから訓練が終わると決まって挨拶を声に出している。
……もう、訓練とか終わりでいいかな。