三十九話 少年少女専属調教師
「あはははははは!!今ならば天をも掌握出来るッ!!!」
「ちょっとソフィさんうるさいです動かないでちょ!お前!落ちるって!!いやマジで!!!」
キャラ変わってんよソフィちゃん。
あの後俺は絶望し、諦めかけたのだが
一応、どれくらいの距離があるか確かめようと街へ行くことを決意した。
ジャック達に最初猛反対されたので、飛んで行ける範囲までしか行かないと言うことで納得してもらった。
まぁ飛べるって最初は信じてもらえなかったけどね。実際に飛んで見せたら唖然としてたよ。プークスクス
次の日、朝イチで行こうとしたらソフィちゃんが
「方向も途中がどんな所かわからないでしょ?私を連れて行って」
正直人を抱えて飛ぶのはちょっと抵抗があったのだが「……ダメなの?」涙目上目遣いに負けた。幼女最高。
ジャックとナナに留守番を頼みソフィと空中デートをしている。
のだが、ソフィったら初めは怖がってたのに段々と慣れてきたらキャラ変わっちゃったね。おじさん怖い。
飛行スキルに風魔法で加速を重ねているので、相当なスピードで飛んでいる。
魔力でソフィごと防壁を作っているので風圧なんかも大丈夫だ。
途中、やばそうな魔物と何度もすれ違ったがどうやら俺の方が早いらしい。
安心、安全をモットーにしていますので死ぬこともないです。
「ソフィ!!なんか街っぽいのが見えるんだけどアレか!?」
「クフフフフ。そうアレこそが我を生み出した魔境…って、ええ!?!?もうついたの!?!?」
やっと戻ってきてくれた……おじさんうれしい。
「お前達が3週間もかかってたのは、単純に進み難い地形だったからみたいだな!」
そう。ここまでの間にずっと森が続いたかと思えば、幾つもの川が合流に合流を重ねた謎の地形。
岩盤地帯や沼の湿地帯など、人が歩いて通るには厳しい環境だったのだ。
「昔の人もそうだけど、お前達もよくあんな所通ってきたな……」
「生きるのに必死だったから……でも、帰ってきちゃったね、ここに」
「いや、ここには訪ねて来たんだよ。お前の帰る場所はあの村だ」
「…うんっ!」
◆
「と、言うわけでこれから整地をします」
「整地?どう言うことだよ?」
あの後すぐに村へ帰って来た。
俺たちがこんなに早く戻ると思わなかったんだろうな、ジャックとナナがため池の辺りで手を握って座っていた、クソが!シネッ!
「街までの道を作ろうと思います」
「ちょっと待ってよ!?あの距離を私たちで作るって言うの!?」
「はい、リア充は黙ってくださいねー。殴りますよー」
「何よリア充って!?あの街まで道を作るのなんて無理よ!」
「出来ない、そんなの無理だ、そう言うことを聞きたいんじゃないんですよ、おじさんはね?」
「はい!どうやって作っていくんですか??」
「良い質問だねぇソフィちゃん! おじさんはそう言うのが欲しかったんだよ、後で豆パンあげるからね!」
「だからなんでソフィにだけ甘いのよアンタは!? で、どうやって作るのよ?」
「今更掌返しの術を使ったって遅いんですよ。君には豆パンあげないからね」
「豆パンはいいけどよ。実際どうするんだ? 流石に子供の俺たちの体じゃ限界があるだろ」
実際そうである。
何もコツコツ地道に作るわけではない。
「そこで君たちには『魔法』の訓練を受けてもらいます」
「なんで魔法なんだ?」
「俺が魔法でこの村の色んな物を作ったのは知ってるだろ? だからそれをみんなでやろうと思ってね」
「おいおい! こんな人外めいた規模の魔法なんて無理だろ!」
「人を人外みたいに言うな! 大丈夫、魔力量さえどうにかなれば、後は想像力の問題だからな」
「いや魔力量だって私たちは特別高いわけじゃないのよ?」
そんな事は知っている。
だから始めようじゃないかーー。
「そこで君たちには魔力量を増やす特訓をしてもらいます。ここに僕が『植物干渉』で改造した実があります。これを食べると魔力を一定量回復します」
「ちょっと待て!なんだよその実!?そんなもん聞いた事ないぞ!?」
そりゃあそうだ。この世界に魔力を回復させる手段が自然回復しかなく、魔力回復薬みたいなものも存在してないのは教官殿に確認済みだ。
「なので、君たちはこれから魔力を使い切ってもらいます。魔力を使い切ったら気絶するけど安心して、聖魔法で直ぐに起こした後にこれを無理矢理食べさせるから。それを繰り返したら魔力量が簡単に増えるよ。ね?簡単でしょ?」
こうして少年、少女達の地獄の特訓が始まったのだ。