三十二話 異変の訪れ
教官のおかげで氷魔法が使えるようになったので、食料保管庫の壁の内部に水を張り巡らせてそれを凍らせていく。
まぁちょくちょく凍らせなければ行けないのは面倒だけど、以前よりは格段に良いはずだから問題ない。
いずれ現代知識を使って冷蔵庫とかの電化製品も生み出してみせるさ。
《 構造も理解していない、知識も無い状態で作れるとでも? 》
やっぱ無理ですよね。電気屋さんで働いとけば良かった。
◆
それから半年ほど、村の安定と利便性向上に努めた。
……うん、努めた。人によってはダラダラしていただけに見えるかもしれんがそれはアナタの感想ですよね?
ため池の方は上手く行っていた。
数日で水草の大発生を引き起こし、水路が詰まって気づいたら村が浸水していたのも良い思い出だ。
その後はしっかり水草を改造してちょうどいい塩梅で安定させたし、問題ない。
驚いたのは、コイもニジマスもあの水草を食べるだけで事足りたという所か。
生命力の強すぎる水草を食べたせいか、めちゃくちゃ大きくなっていたし、気づいたら数もビビるくらい増えていた。いやもう釣り堀だよねってレベル。
畑はそのまま順調に拡張を続けた。
植物干渉のお陰で、畑で育ち大量に収穫できる米も作ってしまった。
米がないと生きていけないからね。しょうがない。
それから驚いたのは『腐敗』のスキルを使って《発酵』させられた事だ。盲点だった。
まぁ原理は一緒だからね。教官には馬鹿にされたけど。
大豆も作れたので醤油と味噌の確保に成功したのである。
聖魔法のおかげで浄化された土で育った野菜達は、それはもうビビるくらい旨かったので、調味料も出来たらそりゃあ…ね? 一生村から出ないで食べ続けるじゃん?
ハクが自分から魔物を狩ってきてくれるし
俺が外に出る必要が無いんだよなぁ。
ちなみにハクは雑食でした。肉も魚も美味しそうに食べます。 ますます犬じゃないか。
そうやってダラダラと半年ほど村で過ごしていたのだが……。
異変は突然にやってきた。
◆
「ワン!ワン!ワン!」
「ん?どうしたハク?」
家でゴロゴロ果実ジュースを飲んでいると
何やらハクの様子がおかしい。
「ついて来いって言うのか?何があった」
「ワン!」
ハクに跨り森へと連れて行かれる。
そして以前、ハクと戦った滝壺まで降りていくとーー。
そこには子供が。いや『獣人』の子供が3人いたのだったーー。