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二十九話 正しい供養のしかた

 ……もう朝か。ん?まだ日の出じゃないか。いや、そう言えばこの世界に生まれてから日の出と共に目覚めてたんだったな……。


 深夜まで起きててもやる事ないし、灯りの確保が面倒だからな。


 俺が起きると同時にハクも目を覚ましたようだ。


 「お〜よしよし、おはようハク」


 「ワン」


 ちょっと不機嫌だな。寝起きだから多少はね?


 とりあえず朝食でも頂こう。今日から塩味デビューだからな、滾るぜ。


 水魔法で顔を洗い、朝食の準備にかかる。


 ちなみに風呂は無いが、下水処理の設備はちゃんと作っている。


 村に引いている水路に流して川へ送ってやろうとしたのだが、教官にクッソ怒られた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《 前の世界と同じ過ちを犯すつもりですか? 土魔法で作れるのか浄化槽を教えるので作りなさい 》


 えっ?あっ、はい!ごめんなさい! 命令口調だしめちゃくちゃ怒っていらっしゃる……。


 昨日帰ってきてから直ぐに造らされたのだ。


 構造はよくわからん。映像を見せられてひたすら指示(命令)されて言われるがまま作ったので仕組みはわからないです。


 村にある家全てに繋がるように造らされたけど必要かなぁ? 俺しか住んで無いんだし、必要ないと思うんだが……。


《 私の霊力で作っているのですから、黙って従いなさい 》


 すみません……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 こんな事がありました。


 教官、すっげぇ怖かったゾ。


 なので下水排水処理はパーペキである。


 まぁ綺麗に処理できた方が気持ちいいから、納得した、事にしている。


 風呂もそのうち作るかな。



 朝食は昨日とほぼ同じ。


 考えるのが面倒だったので同じ物をまた作った。炒め物に岩塩を入れただけである。


 まぁ、社畜時代は一日一食か二食、三日間同じ物を食べ続けた時期も多分にあるしあまり気にならない。


 しかし今日の食事は味がついている。

 もうなんかそれだけで嬉しいよね。


 …………うん、おいしい!!


 やっぱり味がついてると美味しいね!


 いや、まぁ当たり前の事なんだが。



 さて、とりあえずスキルの試し打ちである。


 1番気になってる『飛行』から試してみよう。


 空を落ちた事はあるけど飛んだ事はないからな。


 スキルを発動すると……。


 身体が浮き上がってきた。


 どれくらい魔力を込めれば飛べるか直感的にわかるぞ、何故かは知らんけど。


 そのままグングン空へ上がっていく。


 スピードはあまり無いが、文句無しの性能だ。


 そしてある程度進むと俺は空中で止まる。


 飛ぶって言うより浮く感じだな。


 周囲を見渡す、すると村から遠く離れた場所に何か違和感を感じる。


 なんか、草原にあるな……。!? 村か!?いや、よく見えないな……。


《 『覗き』を使えば見えるかと 》


 そんな事にも使えるの?対象って生物だけじゃ無いのかよ……。


《 生物とは言ってません。生物以外を対象にした場合は気づかれる事がないので、スキルが発動しないこともあり得ないです 》


 何だよ、便利だな。じゃあ覗いてみよう。


 んー……。村だな、だけどこの村よりボロボロだな。


《 アレも放棄された村かと。この村と違って、何かに襲撃されたのでしょう。死体が沢山残っている可能性が高いです。向かうことを推奨します 》


 死体漁りみたいだな……、勿論行くけど。


 下に降りてハクに跨り、その村へ向かう。



 「はぇ〜。すっごい……おおきい……」


 その村はなかなか発展していたようだった。


 家屋はボロボロになっていたが、俺がいる村に比べると三倍近い規模の村だった。


《 『墓荒らし』が使用可能です 》


 良かった、良かった。これが無いと来た意味がないからね。


《 同系統のスキルは経験値として吸収されます。新しいスキルを獲得しました 》


 やっぱり増えるのね。把握し切れてないのにまた増えるとか、宝の持ち腐れもいいとこだな。


 ステータスを確認する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前  レイダー・ラグーン

種族  人

守護霊 存在値(小)

調教済 白鹿

魔法  火、水、土、風、聖

スキル 墓荒らし(中級)

    剣鬼(初級)

    拳鬼(中級)

    弓術王(初級)

    視野拡大(上級)

    命中精度向上(上級)

    硬質化(初級)

    身体強化(中級)

    植物干渉(初級)

    土壌干渉(初級)

    天候干渉(初級)

    石工師(初級)

    木工師(初級)

    鍛治師(初級)

    調理(中級)

    調合(中級)

    メイド

    男は度胸(上級)

    魔力操作(上級)

    魔力譲渡(中級)

    魔力使用量増加(中級)

    騎乗術(中級)

    観察眼(上級)

    泥棒(上級)

    解体Lv1

    調教員(初級)

    飛行(初級)

    消音

    腐敗(初級)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おい、使ってないスキルとか試す前に変わってしまったぞ。


 理解系のスキルが『干渉』になってるけどどう言うことだ?


《 文字通り干渉できます。植物なら成長速度の調整や、軽い遺伝子の組み替え。土壌ですと、操作して別物に変える事が出来ますが大きく変える事は出来ません。天候に関しては少し操作できます 》


 ちょっと色々ヤバすぎますねぇ……。植物と土壌は操作と改造が出来るのはまだ、良いとしよう。天候操作出来るってヤバくない?


《 あくまでも少しです。曇りを晴れにしたり、雨を小雨にしたりのそんな少しです 》


 あっ、そうなんだ? まぁ使う事ないだろうし放っておこう。天候操作し過ぎて世界のバランスとか崩れたら面倒だし。


 あとは、うん。加工系は単純にランクアップっぽいな。乗馬も騎乗術になってるし、小音は使わずして消音になっちゃったな……。ランクが消えてるぞ?


《 進化の先が無くなったスキルはランクがありません。つまり完成された能力という事です 》


 確かに『消音』以上にどうしろという感じだから納得です。


 あ、お兄様の『剣鬼』がある。進化しちゃったのか。

 なんだ、簡単に手に入ったじゃないか。


 後は……?、おい『メイド』って何だよ!


《 家政婦の究極系です 》


 何この世界。そんなわけないだろ!!


 あれ?覗きが無くなってるんだが


《 観察眼に進化しました。対象に気づかれていようが覗き以上の観察能力の行使が可能です 》


 なんか必要なのかもわからんな。


 遠くの偵察に使えそうだから良いんだけど。


 そして案の定、俺は悪霊も回収していた。


 森の死体からは回収されなかったのになんでだったんだろう。


《 恐らくハクに取り憑いていたのかと 》


 あっ、そういうことね。納得です。


 そして初めて取り憑かれたときとは比べものにならない程の悪霊に取り憑かれて、容赦なく聖魔法で浄化する


 「「「「グギャアアアアアアアア!!!!!!」」」」


 ちょっと多過ぎやしませんかね?20体くらい居たんですけど??


《 この村は何かの襲撃を受けて全滅したのかと思われます。85体分のスキル回収でしたので 》


 思ってたよりめちゃくちゃ多いな!?


 まぁそこから残った悪霊が20体ならまだ良い方なのかな?


 急に襲われて全滅したのに、65人はそれをしっかりと受け入れたということだ。俺には出来そうもない。


《 存在値が上昇し(中)になりました 》


 うわっ、マジかよ。もっと感情的になるじゃん教官殿。こいつ絶対前世は嫌な女上司だって。それか五月蝿い学級委員長。



 襲撃を受けただけあって、どの家も大破してるし施設としての機能は全くないな。


 調味料の類とか布製品を少し期待したんだが、収穫は無かった。


 しかし、アレだな。この村には無かったな、お墓。


 ……作っておこうかな。流石に85人も眠ってるとなると申し訳ない気持ちがしてくる。


 スキルも貰っちゃってるしな。


 うん、作るか。大きいのを一つだけ


 土壌干渉を使い、村中に埋まっている死体を一箇所に集めた。


 しかし、よく埋まってたもんだ。襲撃にあってそのまま野晒しになってなかったのは不思議だな。


《 複数の死体から強い魔力と土魔法を感じました。恐らく、最後に皆の体を地面に隠したのかと 》


 襲撃者に好き勝手されるのが見てられなかったのかな……。その人も死んでるって事は最後の足掻きなんだろう。


 俺はそんな道徳心みたいなもの持ち合わせてないから、気持ちはあまりわからない。


 一箇所に集めてその上に墓石を作る。


 前世で見た事のある中で1番立派な墓石をかなり大きく作った。


 85人分の墓がこれで足りるのかとか、決まり事とかわかんないけど、無いよりはマシか。


 ……たまに、しようかな。お墓参り。




 村へ戻ってくると教官殿が


《 そろそろ『位牌』を作ってはどうでしょうか? 》


 そう言えば女神様に言われてたな。


 この村の人達も前の村の人達も子孫が何処かで生き残ってるかもしれないからな。ちゃんとしておくべきか。


 でも、この村の人達の分は良いけど、森の中とか向こうの村の人達はどうしたら良いんだ?


 現地に行って作らねばならんのでは?


《 場所はどこでも問題ありません。私が誘導致しますので、位牌と仏壇を作っていただければ後は処理致します 》


 なるほど。じゃあ教官殿に従っておくかな。


 教官殿に言われるがまま、俺は位牌と仏壇を用意していく。


 使っている家では入りきらないので

 供養の為の施設を建てることにした。


 二階建ての大きな家だ。


 一階は何も置かないのだが、二階は全て仏壇のスペース。


 そこに教官殿の指示に従い、次々と仏壇を用意していく。


 50個くらい作ったんだが、全て並べると圧巻の光景だった。


 それぞれの仏壇に位牌を作っておいていく。


 どうやら黒塗りの本体に金色の文字でなければいけないらしい。


 木工師と土魔法で生み出した黒い塗料と金を使って仕上げていく。


 金を生み出せたのはビビったが、気にしないでおく。


 文字は教官にイメージを直接送ってもらい描いていった。


 よくわからない文字で書かれていたが

 共通していたのは全ての位牌が最後は『先祖代々』で終わっていた事だ。


 そして完成した後、祈りを捧げるーー。


 「長らく供養を怠ってしまい誠に申し訳ございませんでした。皆様方の位牌を、ご用意させていただきましたので、どうかこちらをお使い下さい。私共、罪深い子孫ではございますが、何卒、御守護お導き頂きたく、謹んでお願い申し上げます」


 教官殿に教わった通りにこなしていった。


 正座をして手を合わせ、頭を下げて言い終わると

 それぞれの位牌が光り輝きーー、そして収まっていった。


 これで終わったのかな。


 気持ちがスッキリしている。


 今後、スキルを回収したらちゃんと供養して行こうと心に誓ったのだった。


《 存在値が上昇して(特大)になりました 》


 


 なんで??

 

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