二十四話 終局
だから本当に、なんで最初に言ってくれないのよ!もう既に一発ぶち込めたじゃなイカ!!
助言を頂けるだけ有り難く感じよう。ナムサン
聖魔法って武器に込める事もできんのかよ。……考えてみれば土魔法の塗装を刀身に込められた時点で気づくべきか。
聖魔法を刀身に纏う。
刀身が光り輝き徐々に強さを増していくーー。
纏わせるイメージで付けてみたけど剥がれる気配が無いな。常に魔力を流し込むわけでは無いのか。
《 一定の時間経過で霧散していきます。過信は禁物かと 》
アッ、ハイ。ゴメンナサイ。
再び邪鹿が突進を仕掛けてくるーー。
向上した動体視力のお陰で難なく躱しーー
胴体に聖魔法を込めた一撃をお見舞いする。
ヒュンーー。
ブシャアアアアア!!!
血は出なかった。代わりに邪鹿の体から壮大な音を立て、黒い何かが大量に胡散していく。
すると、邪鹿の体が少し縮小したのだ。
?……どう言う事だ?
《 恐らく、肥大化の原因は大量の霊体に憑依されていたからだと考えられます。込められた聖魔法の量に応じた悪霊の浄化をしたので縮小したかと。現に私の霊力が上昇しました 》
なるほど、こうやって少しずつ削るしか無いのか。そうなるとーー、やはり刀身の聖魔法が消滅しているな。
チラと刀身を見やると、輝きを失い元の状態に戻っていた。
再び聖魔法を込める。
そして、再び一閃ーー。
ブシャアアアアア!!!!
また、邪鹿の体が小さくなっていく。
再び突進を躱し、切り返す。
幾度か繰り返して行った。少しずつ、邪鹿の体は小さくなっていくが……、先が見えない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
流石に魔力を使いすぎた。視力と肉体強化、聖魔法までやってるんだ。
小さくなったと言え、まだ浄化し切るには足りない。
再び邪鹿が突進を仕掛けてくるが今までと様子が違っていた。
バチチチチチッッ!!!
雷を纏った突進ーー。今までよりも早く鋭い一撃が迫りくる。
「クソッ!」
躱すには身体強化に残りの魔力を込め切らなければ足りない。
「ーーーーッ!!!!」
全ての魔力を込めても、足りなかった。
辛うじて角の接触は躱せたが、雷のダメージをもろに受けてしまう。
身体強化のおかげで、ダメージは耐えられたが……、体が……重い……。
今は何とか気力で立っているような状態、次の一撃など対処出来るはずもない。
ここまで、か。
薄く、しかしハッキリと人生で何度目かの『死』を覚悟した。
《 霊力の譲渡を開始します。魔法を行使する際の魔力の代わりに使う事が出来ます 》
ん?何だって??
教官殿、キレそうだけど今回は感謝します。
すると体中に今までとは違う何かが駆け巡るーー。
不思議な『力』の存在を実感する。大きな、強大な力を、俺は全身で噛み締めた。
凄いな……、これが霊力か。
魔力とは段違いの力を感じる。
肉体強化ーー。そして、視力強化。
これまでとは明らかに強化レベルが違うと、ハッキリと感じられる。
そして、刀身に聖魔法を込めるーー。
その輝きは先ほどと比べ物にならない程、強く、そして温かな『光』だった。
邪鹿への距離を一瞬で詰めーー。刀身を振るう。
ブシャアアアアアアアアア!!!!!!!!
最後の一撃。そう確信出来るほどの黒いナニかが邪鹿の体から止めどなく溢れ続ける。
そして、ソレが収まるとそこに残されていたのは
今まで闘っていたモノとは対照的な、白く美しい鹿だった。
◆
こいつが邪鹿の本来の姿か。
大きさも普通の鹿だし、真っ白で超綺麗……ふつくしい。
と言うかアレよね。めちゃくちゃしっかり切っちゃった筈なんだけど聖魔法纏わせてもこいつ、全然切れなかったな。
《 正確には切れていました。聖魔法を纏っていない状態では悪霊による肉体強化の影響を受けて、刃が通りませんでしたが、聖魔法を纏わせる事でそれをすり抜けて、実際、切っていました 》
あれ?そうなの?じゃあ切れてたのか。でも何でこの子無傷なの?
《 聖魔法は浄化の他に『回復』の効果があります。回復魔法の様なものです。切ったそばから回復をしていただけです 》
…………。
そっと自分に聖魔法をかけてみる。さっきは刀身にしか込めてなかったからね。
パァァァァ。
体の痛みがグングン引いてきた。なんなら超調子良くなってきた。
教官、早く教えてください、、、、