二十一話 切りたがり
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
カランッ、カランッ、カランッ、カランッ。
……気持ち良いな。簡単に切れるって。あれから、木材を切っては直し、切っては直して何度も試し斬りを続けていた。
うっかり、近くの岩に振り下ろしたりもしたんだが、豆腐を切っているように抵抗も無く切れてしまった。
安心感が素晴らしい(恍惚)
俺は試し斬りに夢中になっていて『視野拡大』のスキルを発動していなかったのだが、気づけば周りに魔物が寄ってきていた。
そりゃあ、声出して音も出してたからね。気付いてくださいって言ってるのと同じだもの、しょうがないね。
その魔物達は緑色の猪であった。
その数6体。はえ〜…すっごい大きい……。やばく無い?色もキモいし、今更なんだけど俺戦闘経験ありませんでした。
《 緑猪 小規模の群れを成して行動する。性格は好戦的で突進をキメるのは挨拶代わり 》
喋り方がアニメで見た図鑑っぽい感じになりましたね、教官。機械音みたいな声の加工もなんですけど、前の世界のネタを随分と周知していらっしゃるようで……。
いや、そんな事より生命の危機じゃん!!
この刀で切れば間違いなく勝てるだろうけど、突進が当たったら即死ですぞ!?
「ぶもおおおおお!!!」
群れの中で1番大きな猪が突進してきた。地面はエグれ、物凄い強そう(小並感)
俺が軽くパニックに陥り、覚悟が決まらぬ間にも、猪向かってくる。とりあえず刀身を抜き放ち、何となく構えてみる。
すると不思議な事に、気持ちは落ち着きを取り戻し突進して来た猪を躱し、交差しながら一閃ーー。
ブシャアアアアア!
頭が切り落とされた猪がそこには居た。
ボスがやられ、ほかのイノシシ達は我先にと森の奥へ逃げていく。
アイエエエ!?なんで?
何故自分がこうもスムーズに迷いなく行動出来たのかがわからない。
《 剣術(上級)を取得していますので、武器を手にしていればスキルのランクに応じた戦闘能力を得られます 》
あっ!そうか!!そういえば持ってたわ『剣術』
しかし発動とかしてなかったはずなんだが
《 剣術は常時発動型のスキルに該当されます。意識をしなくても常に発動、または条件を満たしている間は発動され続けます 》
スキルってそんな分け方があったのね。先に教えてくても良いじゃん教官殿。
《 常時発動型は魔力の消費無しで行使出来ます。任意発動型のスキルの場合は発動する際に相応の魔力を消費しますので、剣術は燃費が良いです 》
燃費が良いって言うか、何も消費してないんですが。
でもこれで俺でも接近戦で戦えることが分かったし、良しとしよう。この魔物どうすっかな…… 猪だったら食べられるだろうし血抜きして持って帰るか。
『木材加工』で仕留めた猪を木にぶら下げて血を抜いて行く。
しかしだな、魚しか捌いたこと無いんだけどどうすっかな。全く知識が無いからな、適当にやればいいかな?
《 新しいスキルを取得しました 》
えっ?何故にこのタイミング?
ステータスプレートを確認する
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名前 レイダー・ラグーン
種族 人
守護霊 存在値(小)
魔法 土、聖
スキル 墓荒らし(初級)、剣術(上級)、弓術(中級)、視野拡大(上級)、植物理解(上級)、土壌理解(上級)、天候理解(初級)、石材加工(中級)、木材加工(上級)、金属加工(中級)、調理(初級)、調合(中級)、家政婦(中級)、恐怖耐性(上級)、魔力操作(中級)、魔力譲渡(初級)魔力使用量増加(初級)、乗馬(中級)、覗き(中級)、泥棒(中級)、
解体Lv1
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あっ、『解体Lv1』て言うのが増えてる!ちょっと待て、なんでこれだけLvなんだ?
《 私が作ったからです。スキルと言っても、脳内に知識の映像を流すような物ですが。『剣術』のように体の動きに干渉するものでは無いので映像を見ながら自分で捌いてください。他のスキルと差別化をする為にこのような表記となっています 》
教官、なんでもありですね。
映像を見ながらだったので、特に何の問題もなくバラバラに解体出来てしまった。
◆
流石に猪を乗せたまま森を駆け巡るわけにはいかなかったので、一度村に戻って来た。
スキルと魔法を駆使して、拠点として使っている家の地下に食料保存庫を作り出す。
地中なら温度も低いし、しばらく大丈夫だろう。
冷蔵庫とかあれば楽なんだが無いものは仕方ないね。
再び森に出ようとしたのだが、ふと気になり、畑の方を見てみるとーー。
はえっ!?めっちゃ成長してる!?!?
植えて行った野菜達が3倍ほどに増殖していた。
丸ナスなどの木の実達も本体は大きく増長し、実は倍近くまで大きくなっている。
《 聖魔法で、浄化された土地で育てたからでしょう。汚染が無ければこれだけ成長できる程の生命力ということです 》
でしょう、って事は前例が無いのかな?教官殿にもわからない事はあるんですね。
これは……もっと考えて植えていかないと大変な事になりそうだな。
驚きつつも、再び森へと向かう。
食料は十分過ぎるくらい集まったんだし、後は水を引いてこなくちゃな。
そして、本日3回目の森へ侵入して行ったのだ。
ブクマ100件行きました!ありがとうございます!