十話
どうやら魔物たちは衝突の音に気づき
こちらへ近づいて来ているが、余りの轟音に警戒しながら来ているらしい。
(密集度が低い所を駆け抜けるしか無いか……)
俺は視野拡大のスキルを使用して
逃走ルートを把握する。
上手く走り抜ければ何とか抜けられそうだ。
(そう言えばさっき、魔力で体をコーティングしたらダメージが軽減されたな…。なら、もしかして)
足に魔力を集中する。
足に力が漲るような感覚に陥った。
(よし!これで恐らく走る速度が上がる筈だ。魔力で身体強化なんて、考えてみればありそうな話だもんな。これなら少ない魔力量でも何とかなるかもしれん。)
一気に駆け抜けた
最低限の魔力量で、最速で最短で。
真っ直ぐでも一直線でも無いけど。
スピードは有るが
音を消し去ることはできない
音に気づいた魔物達は俺の後を追いかけてくる。
(ッ!追いつかれはしないがこのまま追いかけられると流石に逃げ切れないぞ)
魔力は既に限界近い、俺の体はボロボロだ。
クソッ!魔物どもが!ナズェミテルンディス!!
痛みを無視しながら走っているが、体が動かなくなるのも時間の問題だろう。
(ヤバイ!このまま行くと川にぶち当たる)
進行方向の先には
命を刈り取らん程の勢いで流れる一本の川。
山の川らしくなく、川幅は広い…。
到底渡り切れるものではない。
(ッ!魔物に喰い殺されるぐらいなら、ワンチャン賭けた方がマシだ!!!)
俺はそのまま川に飛び込んだ。
余りの激流に口から漏れ出る酸素を止めることができない。
(流石に魔物でもこの川には飛び込んでこないか…マズい……意識が…)
体と共に、意識が水に飲み込まれていく。
意識を手放す直前に、体が水と共に落下していく感覚を味わう。
(今度は滝かよ……。1日で2回も落下なんてな。前世でも飛び降り自殺なのに、この世界でも落下して死ぬのか…)
意識が溶けていく。
だが、不思議と心に残っていたのは
死に対する恐怖感ではなく
忘れる事のない、生から解放される安堵感であった。
底辺作家なので
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