第一話
景色が次々に変わってゆく。
朝露に濡れた、開きかけの桜の蕾を眺めながら通学路を自転車で走っていると、僕は一匹のトラックと出会った。
ステレオタイプな少女漫画よろしく、トラックさんと僕のあたまがこっつんこ、したと思ったら、いつまで経っても痛みはやってこない。恐る恐る目を開ければ、そこはルーマニアだった。
ルーマニア、ルーマニアである。
と言っても、本当にルーマニアなのかはわからない。とにかくヨーロッパぽい風景が眼前に広がっていた。
どうやら丘にいるらしい。見渡す限りの緑である。しかし遠方に建造物の集合体、つまり街のようなものが見える。緊張が少しだけ緩む。ひとまずはそこを目指してみよう。
突然、スマホから大音量のアラーム。二度寝してしまってもいいようにと仕掛けた二重アラームを解除し忘れていたらしい。とりあえず周りを見渡してみると突然、
「3種のチーズ牛丼!3種のチーズ牛丼!」
と鳴き散らす、一匹の猪を仕留めた。アラームにビビって僕に襲いかかって来たのか?その小心さはまさにチー牛である。ルーマニアの猪はこんな鳴き方をするんだな...... と感心してると、どうやら猪を仕留め切ることができていなかったようで、猪の鈍く鋭い「3種のチーズ牛丼!」という唸りを聞いたと思うと次の瞬間、僕は空を仰いでいた。
猪の更なる追撃に僕はたまらず気を失ってしまった。