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「どうして…。」
「最初から言っておいたじゃん。プロメテウスが事実を認識するまでは生かしておくって。」
「確かに私は沢山の人に異能を発現しました。
だけど私に出来るのは夢を魅せ、暗示を掛ける事だけ。
相手が望まない事はさせられない。
直接命を奪ったわけでも無い。
その人の内なる願望をビジョンとして魅せただけです。」
メイドは自分が生きるも死ぬも教会の掌の上だと力なく呟いた。
「うん、だからなに?
そーんなこと僕には全然関係ないっ!
生かしておくメリットなんてないし、むしろデメリットだらけでしょ。
君も、プロメテウスも。だめだよぉ。」
「な、」
ヴァルナーのあっけらかんとした態度にメイドの表情が引きつる。
「教会の秘密と共に海に沈め。」
ヴァルナーはメイドに近寄り耳元でそう囁くとメイドの額を人差し指で突く。
メイドが目を見開き後ろに倒れ込むと、跡形もなく粉々に砕け、瞬く間にサラサラとした砂塵へと姿を変えた。
「う〜ん、これは便利!」
ヴァルナーは無表情で立ち上がり砂塵を暫く観察してから、勢い良くドアを開けた。
「あ、ちょっと君!この部屋の掃除をよろしくねっ!」
「は、はい!畏まりました。」
廊下に出て歩いていたメイドに笑顔で声をかける。
メイドは突然声をかけられたことにキョトンとしていたが、直ぐにお辞儀をして笑顔で了承した。
「あら…、どこからこんなに砂が…?」
メイドは指定された部屋に入ると、首を傾げた。
「ヴァルナー。」
「ん?」
「プロメテウスをどうするつもり?」
「んん?言ったでしょ。全員殺すって。」
「でもプロメテウス自身は洗脳されていた訳だし…」
「生かしておけば多少はエレウシスの情報も得られる。」
ミトラとオーディンは抜け殻になってしまったプロメテウスを殺す事に難色を示していた。
「ほんとにそう思ってる?プロメテウスが洗脳されてたならなんの情報も与えられていないよ。ただの手駒。
それに洗脳されてたからなんなのさ?
許してやろうって?
僕達は標的を殺す。ただそれだけ。
目的や大義なんてない。
殺す理由なんて後付け、正当化する為のね。」
ヴァルナーはハキハキと、雄弁に語った。
「…それは。」
ミトラはちらりと視線を投げる。
恐らくそれはオーディン1世の言葉なのだろう。
隷属という洗脳より強固で強制的な異能を持つオーディンの。
「あ〜、もーいいもーいい!頭使いすぎて疲れた。今回はヴァルナーが俺の10倍賢く見えるよ。気のせい?」
やれやれと頭を振るオーディンを鼻で笑って、ヴァルナーがトランクを無理やりに閉じる。
鈍い骨の軋む音と小さい悲鳴が聞こえたがぎゅうぎゅうと上から押し込み鍵をかける。
「オーディンがバカになったんじゃない?それとも僕の隷属がとけたのかな。」
「ヴァルナーだめだよほんとのこと言っちゃ。可哀想だろ。」
「あれれ、ごめんごめん。」
「なんとでも言え、俺は一刻も早く帰って寝たい。頭がはち切れそうだ。」
オーディンはベシベシと二人を叩いて部屋を出るように急かす。
ニヤリと笑いながらトランクに座るヴァルナーを乗せたままミトラはトランクを引いて部屋を出た。




