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私には最愛の彼氏がいた。


とても努力家で、頭が良くて、英語が大好きで。

そして不器用で、ちょっとワーカーホリックで、

誰よりも私を愛してくれる、最高の彼。


しかし、私はその彼に別れを告げられた。


思い当たる節はあった。

彼は英語が幼い頃から英語が大好きで、それを生かしたいと通訳の仕事に就いた。

彼の就職が決まったときは、彼が好きな仕事をできるんだ!と思って、私も嬉しかった。

彼がどれだけ英語が好きなのは、私が一番分かっていたから。


でも、いざ彼の仕事が始まると、彼と一緒にいられる時間は殆ど無くなってしまった。


それでも、彼が自分の好きな仕事をしているっていうのが誇らしかったし、私も彼の仕事をしている姿が好きだった。

だから、何としてでも彼を支えたいと思っていた。

「寂しい?」と聞かれても、彼の足手まといになりたくなくて、「大丈夫だよ!」と笑顔を作った。


でも、その限界が来てしまったようで、ちょっとしたことでもイラついてしまうようになった。

特に

「明日帰るよ」と言っていたのに、仕事が延期になってしまって帰って来れなくなったり、

時差がキツくて起きられなかったとデートに遅刻してくるのが許せなくて、

仕方がない話なのに、思わず泣いたり喚いたりしてしまった。

本当は、笑顔でお帰りって言いたかったのに、

最近では笑顔で言えなくなってしまった。


それでも、彼は私の事を愛してくれた。

帰ってくるなり「本当にごめんね」と家に飛んできてくれたり、「お土産、いっぱい買ってきたよ」とお土産を取り出しながらその国の話をいっぱいしてくれたりしていた。


私が何回怒って、泣いて、喚いて、時には傷つけてしまう事を言ってしまっても、

彼は変わらず笑って許してくれた。


しかし、私は日が経つにつれて思うようになった。

もっと彼をきちんと支えられるような強い女性がいるはずなのに、

私みたいな我儘な人間が側にいたりしていいのだろうか、と。

彼は確かに私を愛してくれていたのに、

その時の私にはその自信がなくなっていた。


そんなある日、彼からメールが届いた。

『俺は、新しい世界が見たくなった。それに君は足手まといになる。だから、悪いけど別れよう』

という内容だった。


あぁ、遂にこの時が来てしまった、と思った。

本当は泣いて別れないで、と言いたかったけど、

彼には自分のやりたいことをやってほしかった。

幸せになって欲しかった。

だから元より、彼から言われなければ、私から別れを告げるつもりだった。


私は彼の顔も、彼の声も、彼の仕草も、彼の茶色くて少しくせっ毛の髪も、彼の仕事も、不器用な所も、ちょっとワーカーホリックすぎちゃうところも、

全部全部大好きだけれど、

何よりも好きなのは彼の笑顔だった。


だから。

私といて、いつか彼の笑顔が無くなってしまうかもしれないのなら、私は自ら別れを告げようと思っていたのだ。


そして、過ぎた真似かもしれないけれど、

彼の幸せを願わせて貰おうと思った。


直接会えば、きっと心変わりしたり、泣いてしまうだろうから、メールで言ってくれて良かった。

私はできるだけ感情がこもらないように

『わかった。今までありがとう。さようなら』

とだけ送った。


私はその日、一晩中泣き明かした。


それから少しした頃、彼と共通の友人から彼がアメリカの企業の斡旋を受け、渡米することを聞いた。

友人は旅立ちの日時と飛行機を教えてくれたが、

会いに行くのはやめた。

きっと会ってしまえば、きっと私は未練がましく泣いてしまうだろうから。

彼の足手まといになりたくなかった。

彼には気兼ねなく新しい世界へ飛びだって欲しかったから。


私は今、空を見上げて彼が乗っているかもしれない飛行機を探している。

きっと、私はもう彼に会うことはないのだろう。


それでいい。

悲しいことは何もない。

彼が自分のやりたいことをやれて、幸せになってくれさえすれば。


ただ、もしも。

もしも、最後に願いが叶うのならば-…














──逢いたかった…。







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