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お家に帰るまでが冒険です 2

「元に戻らないのか?」

「戻らないわよ?」

 少女は可愛らしく首をかしげてにこりと笑った。

 そりゃそうだ。

 マッチョに戻ったシグを筆頭に、リヒャルトさん、シャイロックさん、ルキさん、そしてオレ。

 皆を使っておんぶに抱っこに肩車。呆れる程一歩も歩いていない。

「トールう。俺様も疲れた。おんぶ!」

「いやいや無理だから。」

 シグたん、そんなに尻尾を振っても無理だからな?

「トールはん?」

「何ですか?シャイロックさん。」

「…疲れたな。」

「そうですね。」

「おん、………おん…。何でもあらへん!」

 疲れたと言っていた割に猛ダッシュで走って行くシャイロックさん。

「元気だなあ。」

「面白いわねー。」

「面白いですかね?」

 面白いというか、どちらかといえば残念な人だよな。

「まあ、一本道だしはぐれることも無いか。」

 それよりも。

「港に着いたら船を探さないとな。汽船かな?まさか帆船じゃないよな。」

「船?」

 リヒャルトさんが物凄く普通に復唱した。

「はあ。海を渡るのに。来るときはかあ子に乗ってきたんだよな。」

「かあ子。」

「はい。」

「苦労をかけたな。」

 ぽむ、とオレの肩を叩き慰労してくれた。

「じゃあ、港町に用はねえんだな?」

「はい?」

「アレクセイのとこへ行きゃあいいんだろ?」

「えーと?どゆこと?」

 空気の読めるオレは思わずカティの腕を掴んで問い詰めた。

「まさか。他に楽な方法があったりしたのか?」

「ないない。ないわよ?」

「バカ言え。俺を座標に転移魔法をかければいいだけの話だろう。目印にするから無限ダンジョンの側に居ろと言ったのは…。」

「そんな昔の話?まだ守っているとは思わないしー。だいたいあの時はアレクもあたしも魔法が使えなかったし?」

「つまり今なら簡単に帰れるんですね?」

「『繋げ、我黒帝と彼氷帝の間、開け、扉、十の一刻』すぐ閉まるぞ。かけ抜けろ。」

「唱えていて恥ずかしくない?」

 目の前に現れた光にカティが一言残して潜り、消える。

「アレクセイの匂いだ!」

「これで旅も終わりですか。」

 シグとルキさんも消える。

「待った。シャイロックさんが。」

「魔力が持たねえ。」

「せめて、書き置き、を?アレクセイさんっ?」

 背後で光がかき消えた。



 一言で済ませるものなら済ませたい。

 色々ありました。

 めでたしめでたし。

 むろん、現実はままならない。

 目前には美人アレクセイさん。

 解呪アイテムを巡り、カティに散々嫌がらせをされているところだ。

 とはいえ、いちいち真に受けるアレクセイさんではない。

 オレ達もカティなりの再会の喜び表現なのだと諦めて傍観中。

 そこへ。

「アレクセイ様!不審者が現れたと報せが来ましたがご無事ですかっ?!」

 はい、みなさんご一緒に。

 イケメン爆ぜろ。

 この世界にはイケメンしかいないのか?

 否。

 イケメン以外もいるが、押しの強そうなのはイケメンばかりだ。

 やっぱり、心置きなく爆ぜてくれ。

 部屋に飛び込んで来たのは白馬が似合う正統派王子様。

 抜剣したまま登場して、アレクセイさんを背に庇い立ち対峙するのは未だ幼女姿のカティである。

「え、あれ?」

 格好の不審者らしい成年男子姿のオレたちはメイドさんが淹れてくれた茶でまったり寛ぎ中。

「あんた、誰だ?」

 お。

 シグたんが、縄張り意識を発揮してアレクセイさんの横に駆け寄る。

 王子はあからさまにホッとして、マッチョ獣人のシグに剣を向けなおした。

「貴様こそ何者だ!」

「俺様はシグたんだ!」

 アレクセイさんが口元を隠して震えている。

 わかる。めたくそ可愛ええ。

「じゃなくて、アレクサンデルシグムンドだ!」

「なっ。シグムンドは私の名前だ!」

「あー。」

 アレクセイさんがいきなり王子の手を取り、ひざまづいた。

 何事だ。

「すまない。まさかシグと生きて再び逢えると思わずに、貴方を名付けてしまった。許してくれ。」

「ぐ。そ、それではこのアホ犬が金狼のシグムンド様なのですか?」

「重ね重ねすまん。もう少し立派に育っているかと思っていたんだがなあ。」

「齢十にして竜を倒しシルバータグを得て、魔族と天人を従えてアレクセイ様の為に危険なダンジョンへ向かった勇敢な金狼というのは嘘だったんですかっ?」

「あー。嘘は言っていない。全て本当だ。ただ、本人がアレなだけで。可愛いだろう?」

 下から目線で媚び媚びの笑顔。

 アレクセイさん、やるな!

「旅立ったのは百年も前の筈。魔族でもないのに、何故生きている?」

「決まっている!ご飯を食べたからだ!」

 くっ、アホ可愛い。

「ダンジョン深層階は時間の流れが遅いらしいんですよ。百年も経っているんですか?」

「ああ。こちらは現領主のシグムンド様だ。皆粗相の無い様にな。」

「そんな、他人行儀な!アレクセイ様こそ当主を名乗って頂きたいのに。」

「てことは、そいつはアレクの息子か?産んだのか?」

「産むかっ!」

 にやと笑うリヒャルトさんにアレクセイさんがインク壺を投げつける。

 わかっていましたとも。

 リヒャルトさん、避けた。

 オレ、避けた。

 ルキさん、汚れた。

 お約束ですね。

「ここの領主のご先祖もシグちゃんのようにアレクが拾って世話していたんだよ。で、いつまでその姿でいるのかな?君達は。」

 ブルーブラックの汗を滴らせながらルキさんが羽を広げた。

 威嚇ポーズらしい。

「仕方ないわね。アレクセイ、土産よっ。平身低頭して礼を言うがいいわっ。『解呪、アレクセイ』」


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