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そして伝説の彼方へ 5

「⁉︎」

 胸が痛い。

 比喩的表現ではない。

 ガタイの良い獣人が上に跨り胸をぐいぐい揉んでいるからだ。

 唇はイケメンにふさがれている。

 なんてこった。もういっぺん死んで来ていいかな?

「責任取って?」

 ルキさんを押しのけて意識が戻った事をアピールする。

「また貴方という人は!ああ、シグちゃん。もう蘇生はいいみたいですよ。」

「トールうう。生き返ったか。」

 ぎゅうとハグをしてくれる。

 シグたん、可愛ええ。でも肋骨が折れそうだ。

「何がどうなったんだ?カティ達は?」

「魔方陣が、ばーんって光って、カティがトールをばーんってして、ばーんってなって。」

 うん、シグたん。せめてオノマトペのバリエーションぐらいはつけようか。

「今、隣の部屋でダンジョンコア戦をしていますよ。」

「ダンジョンコア戦?魔方陣ばーんがどうしてそうなった?」

「あの時、」

 空を埋め尽くすほどの巨大な魔方陣の発動に驚いたルキさんは、更に驚愕の場面を目撃したのだという。

 両手を地面につき脱力したオレにカティがとどめを刺していた。

 なるほど、心臓の辺りが朱に染まっている。

「なのに、エリクサーを飲ませるし。かと思えば殴るは蹴るわ口付けるわで。挙句にボク達に真似をしろと。」

「あー。うん。人工呼吸と心臓マッサージな。あいつ、無茶しやがって…じゃなくて無茶されたのはオレだけど。」

「そうしているうちにこの部屋に飛ばされて。ダンジョンのドロップ品の分け前が欲しい人はコア戦に参加してますよ。シグちゃんも行ってくる?」

「おう。トールも治ったから俺様も行ってくるぜ!」

「それがいいね。あの人数だと間もなく終わるでしょうし。」

「おし!終わったら帰ろうぜっ。」

 にかっと笑ったシグが奥の間に走り込む。

 ちらっと見えた中はカオスだった。うむ、オレの出番は無いな。

 有難いことだ。

 女神様方が見当たらないので自前のバックヤードから着替えと軽食を取り出してルキさんと一服することにしよう。

 時折奥の間からわーとかぎゃーとか聴こえてくるが、気にしたら負けだ。

「ダンジョンコア戦って、ラスボス戦だよな?無限ダンジョンを攻略したのか?」

「さあ。ボクに尋ねられても。」

『そうだよ。君の発動させた魔方陣は化身とはいえ三柱を生け贄に捧げたんだ。それくらいの威力はあるさ。』

 フレンドリーダナス様!

『それやめなさいって。とりあえず神罰な。お前の食べる柿はみな渋柿。』

 地味に嫌です、許して下さい。

『本来ならこれくらいの神罰では済まないぞ。守護神が居なければ人口の半分は持って行かれてたんだぞ。』

「は?八将の半分ではなく?」

 思わず口頭で聞き返した。

『あの魔方陣の記述なら、世界人口の半分だな。でもって文明崩壊。また暗黒時代に逆戻りだ。やっぱり神罰増やしていいかな?』

 からからと笑うダナス様の声がめちゃ冷ややかで怖い。

『そもそも仮死で自分は生け贄回避って、人としてどうかと思うよ?』

「お言葉ですが、オレの一存、どころかオレは一ミリも計画していませんよ。」

『知っている。咎は六翼が担う。死界まで降った者を帰したのは月神だしな。だから君への神罰は。今後、食べるバナナは甘くない。』

「地味に嫌ですし、増えてますよね?神罰。」

『こちらも大変なんだ。君に最初の加護を与えたラウラ神と化身を消された三女神、それに生き返りを承認した月神の五柱が神力低下してしまってねえ。そこの天人くん。君、そろそろ命運尽きないかな?こっちに来ない?』

「畏れ多いことでございます。」

 あ、なんだ。ルキさんにも聴こえてたのか。

『相変わらず言質を取らせないな。フローラ神らが嘆いていたぞ。菓子で釣っても金品で釣っても受け取らぬ。精霊に色仕掛けさせてたらつまらぬ神官になり果てた。』

 誘拐犯の手口が酷いな。

『聴こえているぞ。まあいい。六翼を得たのは悪くない。金狼と三つ目も上手い具合に育てたらまとめて此方へ来い。』

「お言葉だけで畏れ多く、目眩がします。」

 ルキさん、大変だな。もー、行けたら行くとでも言っておけばいいのに。

『聴こえたぞ。席は空けてやるからな。』

「は?オレ、ですか?え?オレも頭数に入っているんですか?」

 嘘だろ?

『楽しいぞー神様は。天界は素晴らしいぞー。』

「そんな棒読みで仰られても。」

『わはははは。依代印を付けてやる。……これは。月神か。』

 何か強烈な光がオレを包みかけて、霧散する。

『七の試練って。多すぎだろう。』

 代わりに訪れたじんわりとした感覚。

 こめかみ、額、左頰、後頭部、右手の甲、腹、背中、左向う脛。

 どこも月神様に仕置かれた所だ。

「神威の紋章ですか。」

「え?何?何ごと?」

 高齢者村落で培われた、アレやソレやの代名詞がほとんどを占める文脈を理解する国語力が恨めしい。

 行間と空気が読めるスキルがろくでもないオレの末路を予感させる。

『あまりに悲惨なので神託をやろう。今すぐコアを破壊せよ。それで試練が一つ減る。』

「うへえ。ありがとうございますダナス様。取り急ぎ参戦して来ますっ。」

『急ぐといい。礼にお布施をはずめよー。』


 とはいえ冒険者でごった返した中、コアに近づく事すら出来ず。

 足元の瓦礫を投擲し、他所様にご迷惑をおかけしつつも、なんとか一投コアに当てたら。

「「「ウオーッッッ!!!」」」

「やったぞ!ダンジョン攻略だ!!!」

 歓声とともに頭上に晴天が広がる。

 無事に地上へ帰還出来たようだ。

 ぴこん。

<称号『無限ダンジョンの覇者』を獲得した

 月神の試練を一つ達成した

 神威『錬成』を得た>

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