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そして伝説の彼方へ 3

 すまん。

 ルキさんが身を呈して庇ってくれて、ヒルダさんやシグたんがいつもの倍マシで闘ってくれている。

 多分、姿は見えないがシャイロックさん達も鬼神さながらの闘いっぷりの事だろう。

 カティは、うん、女神様達とよく分からない作業中だが。


 オレの行動や言動が凄まじく場にそぐわないのは、別段病んでしまったからではない。

 どうやら、じいちゃんとかーさんのスルー系ギフトが合わせて<使用>されてしまったらしい。

 おかげでどんな惨事にも平常運行出来るのだが、傍目にはストレス過多でぷっつりした様にしか見えないだろう。


 きっかけは、多分、カティの怪我だ。

 なんて事のない風にエリクサーを干して闘いに戻って行くその背中は今のオレと同様に傷一つ残っていなかったが、纏う衣服は血塗れかつ大胆にシュレッドされていて元の傷の深さを容易く想像させた。

 くらりと目眩がした。

 魔王とはいえ、今は力も封じられた幼女だ。

 そんな子に。

 あんな怪我を負わせるまで闘わせ、オレはまた無駄死ぬのか。

 いっぱいいっぱいになったその時。

<ギフト『翁の忍耐』『慈母の胆力』を使用しますか?>

 その結果。

 今なら歯医者の診察台も怖くない!

<ダメージ耐性スキルを獲得した>

 スキルが発動してからは尻尾の千切れたシグたんを見ても、あー、というぐらいの感慨しか湧かない。

 耐性といっても精神的なもので物理的にはしっかり食らうのだが、胸に大穴が開いても痛みは疼痛程度だからエリクサーを取り出して飲む事も出来る。

 間近に迫る魔獣も、怖くない。

 副作用といえば平常心すぎて、炊事洗濯が気になるくらいか。

 だって、連中ときたら魔獣狩りは出来ても茶碗一つ洗えないからな。

 ああ、でも。

 流石に料理は無謀だったか。

 毎度コンビニお握りってのも、身体に悪そうなんだが…。


「カティ、さっきから何やってんだ?」

「まほーじん描いてる。」

「女神様方は何をされているんですか?」

「まほーじんを描かせてますわ。」

 斬と、光の剣で魔獣を切り捨てる。

 びびらなければオレの腕でも何とかなるものだ。

 まあ、剣も言わずもがなの伝説級アイテムだし。

「こんな時に落書きか?」

「こんな時に料理してたあんたが言う?それに、落書きじゃない。これを発動させればこの辺りの階層十階分くらいは湧き潰し出来るわよ。お宝取り放題、うふふふふ。」

 カティも、平常通りっちゃ平常通りだな。

「お握りを召喚してもらいたかったんですが。」

「あ、トールにはこの魔法陣発動してもらうから?生命力温存しておいてねー。」

「は?」

 流石魔王。チートスルーモードのオレが思わず動揺してしまった。

「今のあたしだと全部持ってかれちゃうし。縁の深い仲だとやっぱり八将の連中なのよねー。半分くらいは道連れかなっ。」

 そ、ん、な、も、の、を!

 鼻歌交じりに描きあげるな!

 ちょっと心を鎮めるために魔獣の触手と戯れてきます。

 妙なスキルを獲得してしまうほどトラウマな触手さん達がもはや癒しって、どうよ?

 当方の戦闘力が上昇した訳ではないので、相変わらずエリクサー片手に肉を切らせて骨を断つ戦法で、「あいつ…無茶しやがって」フラグが半端ない。

 大丈夫。

 魔物に喰われた足は生え戻るんだよ。

 魔王に生贄にされたらどうなるか分からないけどな、はははっ。

 あー、お握り握っていてえ。

「トールちゃあんっ。」

 うへえ。

 ちゃん付けで呼ばれてしまった。

「あの、ですね。今の闘い見てました?オレだって、やれば出来るんですよ?その魔法陣、要らないと思いますが。」

「えー、でもお。早くしないとー?トールに餌付けされたシャイロックがー?ちょっと面白い、じゃなくて可哀想な事になっているわよっ。」

「え、視えるんですか?」

「全然。でも、側に居る筈のリヒャルトが瀕死だからねー。八将の連中は下僕印押してるから状態は分かるのよ。」

「状態どころか念話も届いている筈だ!」

 ヒルダさんも満身創痍で中々見応えのある衣装になっているな。

 一番突出している部分に布地が残っているのは解せぬが。

「はあん?聴こえたからって何よ。リヒャルトは罵詈雑言しか言ってこないし、あんたは悲鳴とお腹空いたしか聴こえてこないし。」

「もしかしてアレクセイさんとも繋がっているんですか?」

「向こうから一方的にね。大体あいつもセクハラと小言しか言わないから無視。」

 アレクセイさん、見た目麗人なのに中身おっさんだからなー。

「ま、そんなわけで。ささ、トールちゃんっ、ここになけなしの魔力を流し込むのよっ!」

 ぐいと手を引かれる先は、オレにも解る両手型の印。

 あそこに両手をつけば発動する、んだろうなあ。

「ちょっと待て。魔法陣って、発動者のエネルギーを喰らうんだよな?」

「そうよ。」

「足りなかったら縁者からも吸い上げるんだったよな?」

「そうそう。」

「で、こいつはあんただけじゃ足りなくて八将の半分くらい持っていく規模なんだよな?」

「そうそうそう。」

 オレ、は瞬殺として、これってシグたんやルキさん達も死亡フラグだろう。

 それに、きっとカティも。

 どういうつもりか知らないが、この世界でのご縁ではカティとも繋がりが深い方だと思うのだが。

「そうそうそう、普通はね。女神様達にちょっと書き換えて貰ったわ。縁者の方から優先的に引き抜いて行く風になってるから安心して発動なさい?」

「困ったものですわ。」

「魔王が発動するものとばかり。」

「魔王が下手こくとうちの新入りが堕天しそうだから手伝いましたのに。」

「えーと。つまり?」

「ごちゃごちゃ言ってないで、手をついてみれば分かるわよ。」

「ちょ、待てって!」

 ぐいと腕が抜けそうな勢いで手を引っ張られ、そういえばカティは怪力属性ついていたな、などと胡乱に思う。

 は。

 いやいや、今は平常心とか要らないぞ?死にものぐるいで抵抗すべきところだ。

 と、いったところで敵うはずもなし。


 オレの手が魔法陣の上にかざされて、ずうんと魔力が抜けてゆく。

 カティ、お前を信じて、…いいんだよな?

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