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そして伝説の彼方へ 2

「レアアイテムのドロップ率を上げる魔法って無いんですかね?」


 悪気は無かったんです!

 ただ、そんなラッキーな事があったらいいなって思っただけなんだ。

「近い効果の魔法ならあるわ。」

 にこやかにフローラ神が仰るので。

「あ、じゃあそれ、お願いします。」

 オレもにこやかにお願いしてみた。

 繰り返す。

 悪気は無かった!

「レアモンスターとのエンカウント率が上がった気がする。」

「さ、さあ。気のせいじゃないかな?ははは。」

「モンスターの発生率も上がっているよね。」

「き、気のせい気のせい。」

「しかもトールを目掛けて来ている気がする。」

「はははー。そこは、気のせいであって欲しい!」

 ううう、ルキさんのジト目が身にしみる。

「トールさん?何やったのかな?」

 うはあ。この体勢、漫画で見たことある奴だ。

「と、お、るさん?」

 片手壁ドンが、両手壁ドンにグレードアップしました。

 秒で白状しましたとも。

「実はかくかくしかじかで、フローラ神に、」

「フローラ様?」

 わあい、神さま猫掴みにしたよ。

「このアングルもまた、いいですわ。」

 いいんですか。

「三日四日ばかり、魔獣ホイホイなフェロモンを与えただけよ。」

「え、まじか。」

 その指でハートマークつくるのやめて。

「あ、でも。オレラブなら命令きいたり、」

「食欲的な意味で盲愛されてますからきっと目線が合ったとたんに、パクリ。」

「愛の女神様じゃなかったでしたっけ?!」

「豊穣の女神でもありますわ。」

 オレを豊穣の糧にしないでくれ!

 のどかな掛け合いもここまでで。

 ぱりん、と軽い音がして。

「トールっ、銃とやらを使ってもいいわよっ。」

 結界を突き破り肉薄した魔獣をしとめたカティが、次の襲来の束の間にエリクサーを飲みながら言う。

「怪我、したのか?」

「してないわよ?」

 さらりと嘘をついて、また闘いに戻って行く。

「っ、」

「トールさん、反省は後回しにして今は皆んなの援護を。」

「そう、だな。ルキさんはこれを装備しておくんだ。」

「ボクだけ、ごめん…。」

 シャイロックさんが貢いでくれたお宝、伝説の兜と伝説の鎧と伝説のブーツを渡す。

 総て身につけたルキさんは、お辞儀をしたら工事現場の看板に描かれている人のようだった。

 黄色いヘルメットが目にしみる。

「あと、これも。」

「ごめんね、武器は持てないよ。」

「や、これは武器じゃなくて誘導灯。」

 完璧だ。

 念の為、ルキさんを鑑定しておく。

<おじぎ人コスをしている天人>

 ま、それはそれとして。

 今度は正真正銘の伝説の盾も渡しておく。

「これは、トールさんが持っていて下さい。」

「いや、ルキさんにこそ持っていて欲しいんだ。」

「でも、ボクはいざとなれば飛べますし、」

「いやいや?逃げないでオレをちゃんと守って下さいよ。」

 オレは今から防御無視で為すべき事を果たすからな。

「トールさん、一体何を?」


 はい、皆さまお待たせ致しました、トールのニコニコキッチンのお時間です。

 今日のお題は行動食。

 忙しい戦闘中でも片手でサクッと食べられる、栄養満点のスナックバーを作りたいと思います。

 一品目はステーキバケットサンド。

 スティック状に切ったステーキ肉を焼きあげたらたっぷりのサラダと共にバケットに挟み込みます。

 酸味を効かせたドレッシングをかけて、ボリューミーながらさっぱりと完食して頂けます。

 成長期の獣人に最適なフードでしょう。

 さて、お次は。

『ざしゅっ』

「と、お、る?あんた、何をやってんの?」

 えー、ドロップされたばかりの新鮮な肉塊を使った角煮を作ります。

「トールっ?」

「見て分かるだろ?料理だよ。」

 邪魔な触手をルキさんが盾で押し返す。

 その本体を今度はシグがぶった切った。

「お、丁度いいところに戻ってきたな。サンドイッチ、食べるだろ?」

「…今は、要らない。」

「なんだ、お前怪我してるじゃないか。ほれ、エリクサー。」

「……。」

 いつもは賑やかなシグが黙としたまま回復薬を飲み干す。

「…ま、今まで良くもった方ね。ルキ、もう少しだけトールを任せるわよ?」

 カティが行儀悪くサンドイッチから肉だけつまみ口に放り込む。

「ドラゴンステーキ、好物なのよねー。」

「あー。ドラ肉はそれで在庫切れなんだよ。」

「ヒルダ、その辺にいるんでしょ、出てらっしゃい。」

 カティの食い残しを何かがさらって行く。

 一歩遅れて現れたヒルダさんが、空の皿を切なそうにペロリと舐めてから何かに向かって投げつける。

 ぶわりと魔法陣が展開し、キンと世界が凍った。

 カチンと固まった魔獣を、シグがパキンと割り砕いてゆく。

「手伝おうか?」

 魔法陣に生気を奪われてしおしおのヒルダさんがかりかりと力なくエリクサーの瓶のふたを引っ掻いている。

「伏せてっ!」

 ヒルダさんの手元に屈んだ上にルキさんが駆け寄って来た。

『ばきん』

 蓋を開けるのを諦めたヒルダさんが瓶を噛み砕く。

「そんなに焦らなくても、」

 ストレージから取り出したお札をぺろと舐めて瓶のかけらに貼り付け、再びヒルダさんが投げた。

 魔法陣が間近に展開し、少しルキさんも凍った。

 みんな、ぼろぼろだな。

 服も泥だらけだ。洗濯しなきゃ。

「きゃあああっ!」

 薙ぎ払われてヒルダさんが吹っ飛んで行く。

 素晴らしい放物線だ。

「トールさんっ!今、回復薬を」

 いやいや、オレよりもルキさんこそ、あ、れ?

 声が出てこない。

 おー、エリクサー凄えな。

 胸に空いた風穴が塞がり、抜けた空気が肺に戻ってゆく。

 鈍い痛みがゆるりと消えた。

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