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そして伝説の彼方へ 1

 階層が進めば進むほど、ダンジョン内と外の時間の流れはずれて行くと聞かされた。


 オレ達はダンジョンへ潜ってから一度も外へ出ていないが、シャイロックさんは幾度もオレ達の消息を求めて冒険者ギルドへ戻っていたという。

 小金稼ぎと偵察がてらダンジョンに先行したシャイロックさんは、ギルドで知り合ったパーティと一緒に二百階あたりまで降りたそうだ。

 いつまでたっても追いついて来ないオレ達に不安になって表に出たら、冒険者ギルドで二千階層まで一気に跳躍した子連れパーティの噂を耳にして仰天したらしい。

 心配したシャイロックさんは、たまたまギルドに来ていたリヒャルトさんと文左衛門さんとで即席パーティを組んで再度ダンジョンに潜ってくれたらしい。

「何の準備もせんでこん人らに連れて行かれて千階奥深くに潜りましてな。飢え死ぬかと思いましたわ。」

「レアアイテムで儲けたやろ。もうええやん。」

「剣が食えるか、どあほ。」

 中で半月ばかり彷徨って、ほうほうの体で脱出したら季節が変わっていたという。

 次は出来るだけ支度をして再び千階の奥に戻ったが、その階層と、その出口から跳躍した二千階層の低域を二つほど巡るだけで力尽き、外に脱出するのを繰り返したという。

 段々シビアになる攻略に、エルフの里に戻ってエリクサーまで仕入れてきたという。

「外ではとっくに十年過ぎてますねん。もう駄目かと思いましたわ。」

「それは。ご心配をおかけしました。」

 心配かけたのは悪かったけど、シャイロックさん、大丈夫かな?

 心労が祟ったのか、オレにしがみついたままついにぼろぼろ泣き始めた。

「これが最後だと、今回は捜索ではなくダンジョンコアを壊すつもりでなるべく深くまで潜って来た。」

 こちらもカティを抱きしめた、否、拘束したまま、リヒャルトさん。

「どこまで潜ったんです?」

「拾った魔石を全部使って、確か一万階層だったか。」

「やばすぎて入り口の魔方陣から一歩も出れんかったけどな。」

 怖!

 シャイロックさんがトラウマになる程だったのか。気の毒に。

「こらあかんと思うて。前に拾っておった玉手箱を開けたんや。」

 玉手箱。

 あれかな、伝説の宝箱の事か。

「ダンジョンコアの破壊を願ったんですか?」

「トールのとこ行きたいって願った。」

「………ぶ、はははは!」

 ルキさんが爆笑している。

 鑑定しなくてもシャイロックさんからの好感度がカンストしているのが分かったよ!

「なんか悪いもの食べました?」

「まー、そんなもんですわ。」

 文左衛門さんが肩をすくめる。

「はー。解呪出来そうなアイテムが中々ドロップしないんだよ。リヒャルトさんも、それ、呪い系ですか?」

 残念オーラ二百倍増しで縋り付いてくるマフィア金庫番の頭を撫でてやったら細目が更に細くなった。

 べそべそ泣いていたので瞼が腫れていてまるで遮光器土偶の様な顔だ。

 一方のリヒャルトさんがまた品のない語彙を喚き散らかそうとしたので女神様に頼んで天罰をくらわして貰う。

 具体的には生クリーム増量のどら焼きを口の中に直接召喚の刑だ。

 甘い物が苦手らしいリヒャルトさんが、眉間に皺をよせてもっふもっふと平らげているのをヒルダさんが涎を垂らして見守っている。

 よし、ヒルダさんにもハバネロポテチを召喚してあげよう。

 食べ終わったリヒャルトさんが口の端にホイップクリームをつけたまま、地面に転がるヒルダさんの上着をべろんとめくった。

「これを見ろ!」

「ひゃう!」

 横隔膜のあたりを指す。

「どうせならもう少しめくってみましょう!」

「お前な、人に下品だなんだと言っておきながら。」

「ヒルダはん。その乳、わいに寄越しておこうな?」

「ごめんなさい、リヒャルトさん続けて下さい。ヒルダさんの腹がなんですか?」

 シャイロックさんがにこおと笑いながらゆらりと身体を起こした。

 オレでもヤバイって分かります。

 どこから出したのかメスを握ってるし。

 慌てて背中を撫でてやったら猫のように喉を鳴らして丸くなった。

 ヤンデレ属性は疑っていたが、もう完全に病んでるよな?この人。

「変なホクロですね。」

「魔王の下僕印ですう。」

「そうそう。闇討ちしてくるような?頭の悪い下僕が多いからー。名前書いてやってんの。あたしのだって。」

「下僕印?にしては、妙な文言が書いてありますが。」

 さわ、とルキさんがヒルダさんの腹を撫でる。

 おい、イケメン、何してるんだ。そしてヒルダさんも、何故頬を赤らめてもじもじするだけなんだ、イケメン爆ぜろ。

「あんた、読めるのか?そうなんだよ、見てくれ、この酷い呪いふが。」

 何ズボンを下ろして下半身晒そうとしているのでしょうか、リヒャルトさん。

 黒糖羊羹召喚の刑だ。

 そして、シャイロックさんはメスをしまおう。

 大丈夫、オレ、リヒャルトさんのアレには一ミリも興味関心ないからなっ!


 ともあれパーティ戦力が増強されたのでこの四千階層の攻略が可能になった。

 前衛はリヒャルトさんとシャイロックさん。

 逆鱗を生やすとオレが硬直してしまうので、だいぶ先で露払いをしてくれている。

 後衛はカティとシグで守ってくれているが、前衛の二人がほぼ掃討してしまうのでたまに逃げた手負いの魔獣が襲ってくるくらいだ。

 ヒルダさんと文左衛門さんはドロップ品拾い。

 そして。

 ルキさんが運転するキャンピングカーの中でオレは回復要員を務めている。

 ご飯を作ったり、洗濯をしたり、ご飯を作ったり、時折シャイロックさんに膝枕して充電してやったりな。トール分ってなんなんだ。

 思いがけず転生スローライフ(一部除外)を満喫した。

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