インプリンティング 3
自分なりに色々考えた。
ちょっと出かけてくるというトールを独り送り出す。
付いて来いとは言われてないからな。
言われなかったからな。
言われなかったわ。
あ、泣きそう。
「シャイロック、大丈夫か?」
「へえ、おおきに。近寄らんといて貰えます?」
心配そうにすり寄ってきた犬をヤるなら今だよな。トールおらへんし。むしり取った尻尾をあげたらトール、喜ぶやろか。
「尻尾、ええなぁ。」
「羨ましいだろう!」
ハタハタとシグが振り回す。
いつもトールをめろめろにする可愛らしい仕草だ、コロス!
「へぎゃ?!」と、ヒルダが飛んできた。
「痛い、重い、乳も羨まむかつく。」
とりあえずコレもむしり取っておくか。
再び魔王にどつかれた。
重ね重ねすんません。
「なんで、あん時姐さん独りで来なかったんや。」
「だって、万が一あんたに執着されたら鬱陶しいもん。」
「鬱陶しいてすんません。姐さん、いつまでその格好でおるんです?トールはやっぱり幼女好きなんやろか。」
それとも、幼児好き?イケメン好き?尻尾?おっぱい?翼?
何も無いやん、自分。おわた!
「シャイロックー。大丈夫か?」
「金勘定と暗殺スキルならそこそこあるんやけど。そや!姐さん、ぎょうさん金持ってますやん?」
よし。奪おう。
トールは多分、金が好きだ。
貢いだら喜ぶ。
よしよし。
暗器を取り出したところで天人からもどつかれた。
「危な!何すんねん。」
「シャイロックさんこそ何をしようとしているんです?」
「ちょっと姐さんくっころして有り金奪おうかと。」
「…そのくっころ?貴方が言わされている未来しか見えないですよ?」
「仕方ないやろ!もう金しかあらへんのやっ。翼や尻尾のある奴は黙っとき!」
「?」
疑問符の雨が痛い。
自分でも、もう何がしたいんだかようわからん。
「あのさー。お金が欲しいなら、自分で稼いで来たら?あんた、曲がりなりにも竜人でしょ?あたしに喧嘩吹っかける程戦闘能力はあるんだから、そこのダンジョン潜ったら少しは稼げるんじゃない?」
「は、」
何ということだ。
普通に稼げばいいとか。
それな。
「ちょっと出かけてくる。」
「ルキも連れてって。」
「なんでや。」
「翼が邪魔。」
さっき、返り討ちで毟った羽がふわふわ床に積もっていた。
「俺様は金狼だからな!」
すりすりと耳をルキウスになすりつけてから、シグがふんすと胸を張る。
「変な奴に絡まれないよう、匂いを付けておいたぞ。」
「あああ!トールにマーキングしておかなんだ!」
「その必要は無いと思いますけどねえ。」
「なんでや?シグはいつも撫でられとるけど、わてはハグの一つもされてへんで?」
「シャイロックさん、いつもトールさんの服を借りてるでしょう?」
「仕方ないやろ。着替え持ってへんのやもん。」
持っていても着たいけどな!トールの服。
「トールはちょっと竜人臭い。俺様とカティの匂いもたっぷり付いてるから大丈夫だ!」
魔王、やっぱりくっころす!
逆鱗生やしかけたとこで、またも天人ごときにぽかりと叩かれた。
「す、すまん。これ、やるわ。」
詫びにぺりと逆鱗を一枚剥がしてルキウスにやった。
獣人ならよほど鼻詰まりでもなければ逆鱗の匂いには気がつくだろう。
人混みに出れば案の定、気配をおしころした自分より、鱗を持ったルキウスの方がギョッと道を譲られている。
トールにも鱗を持たせようと、心に誓う。
考えごとをしながら歩いていたら、獅子獣人にぶつかった。
「ああん、てめえ、何ぶつかって、ごめんなさい。」
トールの服に、獣人の匂いが付いた。
ぷち、と何かが切れた音がしたが気のせいだろう。
足元で平謝りしているぼっこぼこの獅子も気のせいだよな。
近くの露店で一番安いマントを買い、着込んだ。
値切ったつもりは無いが、お釣りを渡してよこす。
「おおきに。」
にこおと愛想笑いを浮かべ丁寧に礼を告げたらもう一着おまけにくれた。
おお。なんと。トールとお揃いで着れる!
店主、GJ。
おまけに貰ったもんに金を払うのもどうかと思い、謝意を表敬して手に持ったままの毒付きナイフを進呈したら、丁度欲しいものだったのかがくがく震えて喜ばれた。
よかった。
「今の貴方に同行するのはサーラ神官として居た堪れないので、ここで別行動にしますが。くれぐれも、面倒は起こさないで下さいよ?」
「何もしてへんて。」
「通行人を殴り倒して、露天商にナイフを突きつけていましたが?」
「してへんて。あ、おっちゃん、そのナイフ毒塗ってあるから気いつけや。」
めっさ目をひんむかれて頷かれた。
ええなあ、ぱっちり眼。ええ人アピールぱない。
真似して目をくわと見開きにっこり笑ってみたら誰もおらんようになったのは、うん、気のせいや。




