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伝説のコッペパン 3

 夕陽に染まる小一時間ほど。

 先の喧騒が嘘のようにのどかな時が過ぎてゆく。

 オレとルキさんでドロップ肉に塩を揉み込んでいる間にシグ達にはシャワーを浴びて貰うことにした。

 マイ洗濯タライに溜めた湯にすっぽんぽんのシグが飛び込み、サーラ神が湯をふりかける。

 有り難い事に水は無料だそうな。

 更にはこの世界の魔法相当のご加護は小銭程度で与えて貰えるらしい。

 それ、先に教えて下さいよ。

「わっふ。」

 温風がシグと草原の草を撫でる。

「トールっ、俺様のパンツ!」

「早いな、頭までちゃんと洗ったか?」

「うー。」

「ちゃんと洗わないと駄目だぞ。」

 そうだ。パンツといえば。

「女神様、金目の物を拾っていましたよね?」

「御賽銭ね。」

 やっぱり拾っていたんだな。

「御賽銭で結構です。異界のブツを召喚出来ますか?今幾らくらい残高あります?」

「そうねえ。三お、消費税とか輸送費とか関税とか諸々の諸経費を差し引くと、おまえの金銭感覚では三千万円位かしら。」

 最初三億って言いかけなかったか?

 消費税とか関税って……。

「分かりやすく例えただけですわよ?」

 オレのジト目にフローラ神がにこやかに応える。

「ぼったくられているのは分かりました。ええと、シグとカティに子供服一式授けて下さい。アウトドア系のブランドで肌着から靴まで。UVカットの帽子もお願いします。」

「尻尾穴と耳穴加工はオマケしておくわ。わたくしの服も選んで良いかしら?」

「「わたくしも!」」

「豚とニーハイ無くなったらキャラ立ちしなくなりますけど。」

「並平凡に言われたくないわね。」

「この世界だと逆張りで個性的な顔立ちですけどね、ははは。」

 平たい顔族は居ないんだよ。

「あたしの着替えは?」

「ちょお!オレの上着をバスローブにしないでくれ。カティもちゃんと洗ったのか?」

「洗ったわよ?今はヒルダがすっぽんぽん。」

 そう言われて注視しない男がいるだろうか?

「何ですか?あのモザイクは。」

「視覚阻害の魔方陣。」

 薄目で見たら見えないだろうか。うーむ。

「トールって、バカよね?」

「…なんとでも罵って下さい。」

 自分でも馬鹿だなと思うもの。

 げに哀しきは男の性なり。

「サーラ様達に合う服は売っていないと思いますよ。材料を用意していただければオレが作ります。」

 裁縫スキルは無駄にあるからな。

「トール、この服柔らかいな!」

「ほんとねえ。悪くないわ。」

「お、そうか。オレの元の世界、に、似た世界の服なんだ。」

 例えファストファッションであってもこの世界のごわごわ服に較べれば天上の着心地だろう。

 ましてや着せたのは冒険者に最適な高機能服だ。

 パチゴニアってロゴは、うん、多分平行宇宙の正規品だと思う。

「さ。肉を焼くから手伝ってくれ。」

 ヒルダさんがモザイク姿のまま服が欲しいと騒いでるが馬鹿高い異世界衣装を貢ぐ気は無い。

 むしろ、もうモザイクでいいんじゃないか?

「トールさん、何だかんだヒルダさんの事を気にかけていますよね。」

「…妙に含みのある言い方やめて下さい。」

「トールさんとヒルダさんって同族ですし、お似合いだと思いますよ?」

「オレにも選ぶ権利ってあると思うんですが。」

 あるよな?勘弁してくれ。

「肉、まだ焼けないのか?」

「お、おう。今焼くから。」

 モザイクがやけにチラチラと、視界の端で瞬いていた。



 やがて日は落ち。

「こ、これ、本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。魔方陣の中には入ってこないから。」

「はみ出したらどうなるんですかっ?」

「えー?食べられちゃうんじゃない?」

 逢魔が刻を経て昼夜が入れ替わったとたんに活動を始めたのは肉食動物だった。

 いや、昼間の牛やら羊やらも全く草食では無かったけどな。

 今、魔方陣の外、鼻先二十センチ程の近距離で涎をだらだらと垂らしているのはたてがみ怒髪天衝なライオン。

 大きさは象サイズ。

 背には翼。

 尾は三又に分かれていてびしびしと鞭のような動きで結界を叩きまくっている。

「な、なんかミシミシ言ってますけど本当に大丈夫ですか?」

「あたしの描いた魔方陣を疑うの?あふ、疲れた。眠い。おやすみー。」

 昼間ずっと剣を振るっていたヒルダさんとシグは既に寝落ちている。

 カティもあっさりちゃっかりとルキさんの膝枕で寝てしまった。

「トールさんも怖いならエルフの指輪を外したらいいですよ。外、見えなくなるでしょう?」

「よけいに怖いわ!ルキさんはよく平気だな。」

「そうですね。女神様方がいらっしゃるからかな。トールさんも一緒に居てくれるしね。」

 あーうー。

 夜の帝王と百獣の王の狭間、どっちを向いても食われそうで怖いです。

 女神様達の衣装作製を口実に手元へ視線を落として一夜を明かした。

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